印刷

CTIの導入で、電話応対を“定型業務”から“価値あるサービスの提供”へ転換

インダストリー、エネルギー、ヘルスケアの3つの事業を柱に、世界各国のグループ企業で展開するグローバル企業、シーメンス。

シーメンスグループの一員、シーメンスヒヤリングインスツルメンツ株式会社様は、ヘルスケア事業部門で取り扱う数多くの医療機器の中で、補聴器の研究開発、販売を専門に取り組んでいます。

国内メーカーの補聴器は地味で目立たないものが主流ですが、同社の取り扱う商品には目立たないタイプはもちろん、補聴器をつけるのが楽しくなるような明るくスタイリッシュなデザインのものもあり、海外メーカーならではの特徴で他社との差別化を図られています。

カスタマーセンター設立の経緯

高齢化社会の到来やインターネット普及によるブランドイメージの浸透に伴い、同社の商品需要が高まっています。そこで同社では、顧客サービスの一環として、満足度の高い電話応対のための組織改変を行いました。

従来、全国主要都市にある7拠点でそれぞれお客様や販売パートナーからのお問い合わせ、受注といった電話に対応していました。

修理、導入前のご相談、ご注文など、内容によって電話番号が違うということもあり、はじめて電話を頂くお客様は、どこに電話をすればいいのかわからない、電話をしても注文の内容によって担当者が違うため、お客様を電話口で待たせてしまうという問題が生じはじめました。また、拠点それぞれでサービスレベルに相違が起きるという問題も否めませんでした。

そこで、これらの問題を解決すべく、お問い合わせや受注の電話窓口を本社集中型にすることになったのです。

カスタマーセンター始動

そして、2009年4月、カスタマーサービス部 部長 宮田様を中心とした新たなスタッフで構成されたカスタマーセンターが本社のある神奈川県でスタートしました。

同社では、受注業務には全社共通の基幹システムを使い、これまでも効率的な業務を行ってきました。

今回のカスタマーセンター設立に際しては、受注基幹システムはそのまま利用しつつ、電話受付の効率化を図ることのできるCTIシステムの導入を検討。そして、同社の使用する電話交換機と電話機に対応したBIG顧客管理Pro CTIをご導入頂きました。

カスタマーセンターの設立に伴い、システムの検討を開始したのが2月末、検討および準備期間わずか1ヶ月での稼働となりました。

ヒット率70%

お客様の情報はカスタマーセンター設立時に基幹システムから取り込み、事前に準備。これにより、導入からわずか2ヶ月で約60-70%のヒット率(電話着信時にお客様名を表示する割合)を達成しています。新規でお問い合わせいただくお客様や、データベースに登録されていない新しい電話番号は随時追加し、更なるデータの充実を図られています。

受注効率の向上と付加価値サービスの提供

電話を頂くお客様は、エンドユーザーか販売店がメイン。電話の内容は、お問い合わせや修理、メンテナンスなど多岐に渡りますが、注文も大きな目的のひとつです。

注文は、既製品と、お客様の耳に合わせて作るオーダーの2パターンがあり、特にオーダーについては、詳細な情報が必要となります。

カスタマーセンターによる受注業務の集中化以前は、電話でオーダー内容の詳細をやりとりしていましたが、聞き取りミスが生じたり、一回の通話時間が長くなるといった問題がありました。そこで、今回採用したBIG顧客管理Proの持つフォーム印刷機能を活用し、それらの問題を解決しました。

電話では、可能な限りお客様の氏名等を確認するのみとし、BIG顧客管理Proで詳細情報を記入できる専用注文書にお客様の住所などを印刷して、すぐに郵送。これまで電話で受けていた注文を、書面で注文頂くよう変更したのです。

「これまでは定型業務であった電話での受注方法を変更することで、一通話あたりの時間を短縮できれば、空いた時間でスタッフにはお客様からのご質問やご相談にじっくり耳を傾けることができます。

カスタマーセンターは、電話での業務を行う場所ですが、単なる定型業務ではなく、もっと価値のあるサービスを提供できる場にしたいと考えました。」と、宮田部長は語ります。

BIG顧客管理Pro CTIの印刷フォーム機能を活用

「専用注文書の他にも、スタッフが受けたお問い合わせ内容、クレーム内容などを報告するフォームも作成しました。内容を記入してすぐに印刷し、報告するよう指示しています。この報告書で関連部署に依頼をしたり、お問い合わせが完結していない場合は違った面からフォローしたりできるようになりました。
印刷フォームを担当者レベルで自由にレイアウトできる印刷機能が優れていると思います。」と、システム導入後の感想を述べられています。

BIG顧客管理Pro導入時にひとつだけ作成した印刷フォームは、一度カスタマーセンターの担当者にレクチャーしたのみ。あとはすべて自社で作成頂いたようで、導入から2ヶ月経過した訪問時にはフォーム登録数は20にも増えていました。

通話ログ分析

カスタマーセンター設立と同時に電話機の入れ替えもあり、最初は多少混乱もあったようですが、「ようやくスタッフも業務に慣れ、徐々に落ち着いてきました。そして、次に何をすべきか、次の課題が見えてきました。」と、現在の状況について話します。

日々の業務にも少しずつ余裕が生まれたこともあり、宮田部長はこれまで蓄積してきた通話ログの分析にも着手されました。

ベルが鳴ってからオペレータが電話に出るまでの時間を分析した結果、一番多いのが平均3-4秒、概ね1コール~2コールで応答できていたものの、それ以上かかっているケースも少なからずありました。

そこで、現在は、応答まで16秒以上かかっているコールをなくすことから取り組み始められたそうです。

「今はまだ、業務知識の均質化や向上が課題の段階ではありますが、今後も定期的に通話ログや応対履歴の検証を繰り返し、カスタマーセンターのスタッフとしてふさわしい応対方法なども教育してゆきたいと思っています。」(宮田部長)

今後の課題

カスタマーサービス部 部長 宮田様

カスタマーセンターがスタートして2ヶ月。
スタッフの研修を行うまでの余裕が出てきた現在、今後の課題は業務ごとに使い分けているシステムの棲み分けだそうです。

シーメンスグループでは、同じ事業ドメインごとに世界共通のCRMシステムが稼動しています。
本来はCRMの役割を果たすべきCTIとは別に、CRMシステムが存在しているわけです。

「現在、カスタマーセンターでは、CTI、世界共通のCRM、受注業務の基幹システムと3つのシステムを使い分けています。
ひとつの画面を見れば全てわかるというのが理想ですが、これが現状です。今後は、どのシステムにどこまでの情報を入れるのか、どうメンテナンスしていったらいいのかが大きな課題です。」と宮田部長。

メーカーを問わず、業務ごとに適したシステムを使い分けるということは、最近では当たり前となっています。個のシステムの最適化だけでなく、他社のシステムやサービスとの親和性を高め、業務全体を改善させること。それが、システム開発を行う我々にとっての課題のようです。