第14回 息子の就活 ~ニッポンとフランスの就活事情~

息子が4月から社会人になりました。

私はフランス人で息子は日本人とフランス人のハーフです。子供の頃は天真爛漫で学校の話や悩み事を良く話してくれましたが、高校生になったくらいからあまり話さなくなって、大学からは生活時間もすれ違いになり、さみしさを感じていました。

日本のホームドラマでも父と息子の関係は微妙なことが多いので、どの家庭も似たようなものかも知れませんが…

息子が就活を始めたのが去年の6月。私は就活どころか日本企業でサラリーマンをした経験もないので大したアドバイスはできません。だから就活には一切口を出さないけど、興味があるから色々聞かせてほしい。と息子に伝えました。

フランスの就活事情はどうかといいますと、新卒採用枠がほとんどありません。素晴らしい学歴があっても経験がないと条件の良い仕事に就けないので、卒業後、無給の研修で経験を積みながら、就活する人が多いです。

日本は4月に新入社員が大量に入社するのを知り、とても驚きました。
日本企業は人を一から育てるという考え方なんですね。
フランスの若者は可哀想!

息子によると、今はスマホでエントリーできるので、とにかく沢山の会社にエントリーするのだとか。企業側は、学校名は問わないといいながらも一流大学以外の学生は何故か説明会が満席で予約が取れない「学歴フィルター」なる摩訶不思議な暗黙のルールの存在や、わざと意地悪な質問ばかりする「圧迫面接」で面接官と口論になった話など、なかなかドラマチックです。

息子は一流大学の学生ではないし、勉強は最低限しかやりません。資格もないし、無駄に顔が濃いけど英語も話せない。
第2外国語のフランス語にいたっては、親がフランス人という最強のアドバンテージがあるのに落第ギリギリ。

何故か歴史学専攻で営業希望という意味不明さ。正直、どこにも受からないだろうと思っていましたが、意外にもあっさりと第二希望の会社に内定をもらってきます。

息子は面接が大好きで全く緊張しないというのです。確かに子供の頃からやたら友達が多く人懐こい性格でした。

自分の長所や夢を延々と語れるそうです。何というナルシスト?
私の知らなかった一面です。

就活では面接が重要視され、「コミュニケーション能力」が不可欠なのだとか。職種にもよりますが、フランス人なら協調性か能力なら必ず後者を取ります。日本はチームワークを大切に仕事をしているから、求められるものも違うのでしょうか。

もう1つポイントが高かったのがアルバイト経験だそうです。
彼が大学生になってからは、私の主義でお小遣いはゼロでした。居酒屋ではバイトリーダー、単発で引っ越しのバイトをしたり良く働きました。モデルみたいなことをして髪の毛をタダで切ってもらったり服を安く買ったり節約も学んだようです。

フランスには学生が週末や夜など都合の良い時間だけ働けるバイトはほとんどありません。

法科大学院に通う姪っ子が夏休みのバイト探しで20通以上履歴書を送ってやっとソーセージ工場での仕事を得たくらい厳しいのです。
バイト事情では日本は本当に恵まれています。しかもアルバイト経験まで評価してもらえるなんてありがたい話です。

日本とフランスを比べてみると、若者には日本の方が仕事を得るチャンスが多そうです。ただ残業時間の多さや入社後の離職率の高さを考えると日本のサラリーマンは大変ですね。フランスは有給消化率世界一の国ですから(笑)

自分の息子が社会に出て行く時、どこの国でも親は誇らしい気持ちと心配な気持ちになると思います。

私は息子に勉強は教えられなかったけど、人生は自分で切り拓くものだとか、DIYを通じてモノを大切に扱う精神は教えられたと思うので、新しい世界で役立ててもらえたら嬉しい限りです。