D’angelo and the Vanguard 『Betray My Heart』(D’angelo) 14RCA

恐らくは、今世紀を代表するコンポーザーとなるであろう、ディアンジェロ。
ヒップホップがポップミュージックを破壊しつくしてきたこの30年の過程に於いて、緩やかな下降期故の、退廃と甘美をクールにマージしてきました。

初期には、リズムやサウンドメイクに、同時代トレンドへの目配せを踏襲していましたが、20年間に3作という圧倒的な寡作の過程で、強固なオリジナリティーを獲得。

普遍の天才の常ともいうべく、フリーに提示しているのは、自我の脆弱性。
脆弱だからこそ、人の琴線を惹起する、という王道。

白人ロッカーの男性的自堕落とは違い、黒人の脆弱性は、女性的な官能を帯びます。
マーヴィンゲイ、プリンスの正統な後継者の意匠をリアルタイムで享受できる喜びは、まだまだ味わえそうです。