第91回 なんとなく、プレミアム

2月の最終金曜日の24日に街に出てみました。

村上春樹氏の新刊の発売日とのことでテレビや新聞が盛り上がっておりましたので、ひやかし半分で書店に行ってみたのです。
でも、売っていませんでした。
売り切れと言うわけではないようです。外地・北海道での発売日は25日ということでした。

しかし、売っていたとしても、たぶん買わないであろうことは、あらかじめわかっていました、ほかならぬ私なので。(なんだ、この言い回し)
私は村上春樹ファンではありますが、長編小説は「ノルウェーの森」以来読んでいません。(キッパリ)
でも、「村上朝日堂」とか「村上ラヂオ」とか「村上さんのところ」のような小説以外の緩い雰囲気のある文章は読んでます。
そういう文章のファンなのです、なんてことを書くと、本当の春樹ファンの不評を買うのでしょうね。

どうやら、熱烈な春樹ファンをハルキストと呼ぶそうです。(某国営放送で言ってました)
○○キストというと、アナーキストかマルキストかサユリストしか思い浮かびません。と書いたところで、私自身、昔コマキストだったことを思い出しました。

女優・吉永小百合のファンであるサユリストに対抗して、女優・栗原小巻のファンはコマキストと自称(?)していたのでした。
映画「忍ぶ川」の薄倖な志乃さん役の栗原小巻は素敵で、ファンの胸を震わせたものでした。そして「雪国の女性はね・・・」という台詞を吐いた相手役の加藤剛にジェラシーの炎を燃やしたのでした(って、当時の中学生が観る映画じゃないな)。

そんなコマキストの私の前に、プレミアムフライデーの幟を立てたお店が目に入りました。
それで、きょうがテレビや新聞で話題になっていたプレミアムフライデーだと気づいたのでした。
プレミアムフライデーは労働者の健康と景気浮揚を同時に図ろうという素晴らしい施策らしいです。
きっと立派な方が考えられたのでしょうね。(棒読み)

それにしても、月末直前の金曜日は企業にとっては忙しい日でしょうから、15時に退社はとても難しいのではないでしょうか。(と会社勤めをしていない私が心配をする話ではないのですが。)

15時に退社して、そのまま週末旅行に出かけましょうとか、15時から居酒屋で飲んでリフレッシュ(?)しましょうとか、ちょっと贅沢にデパートでショッピングしましょうとか・・・消費の後押しをする企画のようです。
でも、15時から消費行動を起こす人たちをお相手する人たちの立場はどうなのでしょう?さすがに一緒に時短をするというわけにはいかないですね。
今回は残業してでも頑張って一儲けをしよう。いずれプレミアムなボーナスをゲットしよう、と考えているのでしょうか?

「駕籠に乗る人、担ぐ人、そのまた草鞋を作る人」

こんな言葉がありますが、プレミアムフライデーは誰が、駕籠に乗る人で、誰が担ぐ人なのでしょう。政府?財界?労働者?サービス提供者?それとも・・・なんて、柄にもないことを考えているうちに疲れてしまいました。

難しいことを考えるのはやめてプレミアムフライデーの幟を掲げたお惣菜屋さんで、海老フライと牡蠣フライとヒレカツを買いました。プレミアムなフライで、プレミアムモルツでも飲むのが、私なりのプレミアムフライデーなのかな(勤め人じゃないし)。

唐突ですが、プレミアムフライデーの幟に書いてある丸い黄色いロゴマークはどこかで見たことがあります。
どこだっけ??うーーーん、と考えて、思い出しました。
そうです!マンガ「暗殺教室」の殺せんせー(ころせんせー)の顔にソックリなのです。
残業時間を抹殺しようというデザイナーの深淵な意図なのでしょうか。それとも単なるパク・・じゃなくてオマージュなのでしょうか。

巷では、「プレ金」なる言葉も出てきています。あの「ハナ金」を意識しているのでしょうか。
ハナ金は、週休二日が広まり始めた頃の懐かしい言葉です。
新たな休みとなった土曜日の前日に盛り上がろうというのが、ハナ金の始まりです。
やがてハナ金の前日も盛り上がっていいじゃん、盛り上がったまま金曜日を迎えようってことで「ハナ木(もく)」というわけの分からない言葉も出てきました。バブル崩壊前夜の出来事です(ほんとかな?)。

余談ですが、ハナ金、ハナ木と聞くと、死刑囚のパラドクスを思い出してしまいます。
死刑囚のパラドクスとは、ある死刑囚が死刑執行人から、「来週の日曜から土曜の間にあなたは死刑執行されます。ただし、執行日は事前にはわかりません」と言われます。
そこで、死刑囚は考えます。
もし来週の金曜日まで執行されなければ、土曜に執行されることが分かるので、土曜日が執行日となることはない。木曜日まで執行されないなら、金曜日が執行日とわかるので、金曜日でもない。水曜日まで執行されないなら、木曜とわかるので、木曜日でもない。同様に、水曜日でも、火曜日でも、月曜日でもないし、日曜でもない。つまり、自分が事前に分からない日はないので、死刑は執行されない、と思い込みます。
でも、死刑は予定の週に執行されました。なぜなら、どの日に執行しても、死刑囚は事前には知るすべがないからです。
(って、なんだかワケのわからない話をしてしまいましたが、どんなハナにも棘があるということです)

さて、プレ金は定着するのでしょうか?さらにプレ木は登場するのでしょうか?
そして、みんなが望む(?)バブルは到来するのでしょうか?
私はバブルが大好きです。「バブルへGO!!」は「忍ぶ川」と同じくらい好きな映画です。
また、昔のお祭りのような毎日を過ごしたいと思う今日この頃ですが、現実はプレミアムなフライを買って、家でビールを飲むのが関の山です。

そんなこんなで自宅に戻ると、アマゾンから「アマゾンダッシュボタン」が届いていました。

アマゾンダッシュボタンとはアマゾンプライム限定のサービスで、路線バスの降車ボタンのようなボタンを押すことで買い物ができる魔法のサービスです。
でも買える商品はボタン毎に一種類です。
私はウィルキンソンの炭酸水のダッシュボタンを買いました。

スマホで管理画面にアクセスして、家のwi-fiのパスワードを登録するだけで、ダッシュボタンのセットアップは完了です。

このダッシュボタンをポチッと押すだけで、ウィルキンソンの炭酸500ml×24本が注文できます。
ワンクリックどころの話ではありません。PCの起動も、サイトを開く手間もいらないのです。
いつでも、ボタン一つで注文できるのです。夢のようなボタンです。
これはまさにプレミアムです。
(アマゾンプライムなんですが、プレミアムもプライムも似たようなモノです)

ただ、非常に残念なことは、私が炭酸水の必要性をほとんど感じていないということです。

じゃあ、なんでウィルキンソン炭酸水のダッシュボタンを買ったのか?
単にプレミアムなバブル(泡)への憧れです、とだけ申し上げておきます。

※今回は文章のほとんどすべて個人の感想です。実在するプライムフライデーにはなんの恨みもありません。