第93回 ふりむけば香港

先日、初めて香港に行ってきました。

何か目的があったわけではなく、なんとなく成り行きで知り合いの会社の旅行に紛れ込んだのでした。

例によって、全く予備知識もなく現地に向かったわけですが、「地球の歩き方」だけは持参しておりました(もちろん持っているだけで開くことはありません。ただの荷物です。もっと言うと帰りの機内の反省用資料です)。

初めての「香港」ですが、なんとなく馴染みもあったりするのです。
というのも、我々(?)中年のおじさんは香港と言えば、「100万ドルの夜景」「ジャッキー・チェン」「マカオでカジノ」を連想するからです。(「ジャッキー・チェン」と「ブルース・リー」は迷うところですが)

まずは「100万ドルの夜景」。昭和生まれの人にとって、香港と言えば、このフレーズです。「世界の三大夜景の一つ」とも記憶しています(他の二つは知りません。ススキノと中洲だったかな・・・)。

とにかく「香港=夜景」がいつのまにか刷り込まれているわけですが、それがどこから見た夜景なのかまでは知りません。

以前、香港の空港は市街地にあって、飛行機は高層ビルの隙間を機体をひねりながら、時には翼をビルにかすめながら着陸したという話なのですが、どうやら、その夜間着陸の寸前に見える夜景が「100万ドルの夜景」と言われたみたいです。
というのも機上で見る夜景は、命と引き換え、すなわち生命保険の賠償金100万ドルと等しかったということらしいです(嘘です)。

100万ドルの夜景って、今のレートだと1億1千万円ほどでしょうか。そう考えると安いかもしれませんね。

あ、ドルはUSドルではなく、香港ドルだとしたら、1千6百万円くらいなんで、もっと安くなっちゃいますね。。。

百万長者も景気変動のせいで億万長者になったわけで、夜景の評価額も見直す必要がありそうです。
(で、結局、3泊4日の香港の旅では、雨続きで夜景を見る余裕はありませんでした。雨期ですからね)

「ジャッキー・チェン」というと、アジア屈指のアクションスター、映画「ポリス・ストーリー/香港国際警察」や「ラッシュアワー」などでお馴染みなわけですが、我々(?)中年のおじさんにとっては「酔拳 ドランクモンキー」なわけです。

呑めば呑むほど強くなる拳法、酔拳は我々(?)酔っ払いの夢の格闘技術です。
千鳥足で夜道を歩いていてもオヤジ狩り(死語?)を恐れる心配はないですからね。
酔拳を己のものとするため、どれだけ杯をかさねたことでしょう。
結果は、拳法は身に付かず、筋肉も鋼のように硬くなることもなく、肝臓だけが硬くなりかけたのでした・・・(トホホ)。

香港の高級住宅地にあるジャッキー・チェンの家を遠目に見ながら、香港ビール(Carlsbergでしたが)を呑んだのでした。

ここで今回の旅行内容を簡単に説明しましょう。

1日目は移動のみでした。

2日目は団体観光で、大型バスで香港市内を巡り、途中でフェリーを使って九龍から香港島に渡ったり、徒歩より遅い二階建電車に乗ったり、ジャッキー・チェンのアクションでお馴染みの二階建バスを眺めたり、宝石を売られそうになったり、枕を買わされそうになったり、結局パンダクッキーを買わされたり、おもちゃ屋さんでハンドスピナーを値切り損なったり、長い線香のあるお寺に行ったり、点心料理といいつつ炒飯を食べたり、青島ビールを呑んだり、白酒を呑んだり、日本から持参の「いいちこ」を呑んだり、とまさに香港の猥雑さを満喫したのでした。

そんな団体旅行にありがちな移動ばかり観光で役に立ったのは「地球の歩き方」ではなく、ポケモンGOだったのでした。
香港のあらゆる場所に点在するポケストップをチェックして、その名称を見るだけで名所案内の代わりになるのです。(今度香港に行かれる方は是非お試しください!!って強くお勧めするものでもないですが。。。あ、香港では「サニーゴ」というポケモンをゲットしました。日本では沖縄でゲットできるかどうかというレアな奴らしいです)

 

 

 

 

 

 

3日目は自由行動。ここで我々(?)中年のおじさんのキーワード「マカオでカジノ」の登場です。

おじさんの頭の中では「香港・マカオの旅」と香港とセットになっているマカオですから、香港に隣接しているのだと勝手に思っていたところ、なんとマカオは高速艇で1時間ちょいという離れた場所にあるではありませんか!

ここで初めて「地球の歩き方 香港」を開いて、中扉の香港地図にはマカオが記載されていないことに気づくのでした・・・。
マカオは香港から見ると「外国」なのでした。

と言うわけで海の向こうのマカオに行くために、船乗り場でまず「出国」の手続きです(もちろんパスポートは必須)。

高速艇は小さいながらも俊敏な奴で、船の先頭部分を激しく上下しながら、突き進みます。二日酔いの我が身を修行の場に引き込みます。二日酔拳は修行ではなく、修羅なのでした。。。

さて、マカオに到着すると「入国」です。異邦人がさらに異邦の地に上陸です。
マカオに着いても、そこはカジノではありませんでした。
アメリカのラスベガスのように空港待合室や荷物引き取り所にスロットがあるのかとイメージしていたのですが、大違いなのです。

とりあえず、船乗り場から外に出ると、血走った目をした人たちが列を作って足早に移動しています。この人たちについていけば、カジノに行けそうな気がしたので、黙って付いていくことにしました。

すると、すぐに大型バス乗り場が現れて、そこには各カジノホテルの専用バスが並んでいました。たぶん、それに乗ると問答無用でそのホテルに缶詰にされて、カジノ漬けになるのでしょう。

「希望のバス・・・エスポワール」という言葉が脳裏をよぎります。

どのバスに乗っていいのか、わかりません。
豪華な大型バスもあれば、普通のバスもあります。車体には金や深紅の文字でホテルの名前が書かれています。
一瞬迷った挙げ句、金色のライオンの絵が描かれた「MGM」のバスに乗り込みました。

「希望のバス・・・」

バスは煌びやかな巨大ホテルが林立する中を夢と希望を乗せて颯爽と走ります。
10分ほどでMGMホテルに到着しました。
バスを降りるとホテルの女性が出迎えてくれます。
「カジノはどこですか?」と聞くと、黙ってホテルのエントランスを指さしました。
「なに当たり前のことを聞いているんだ、この日本人は」と思ったことでしょう。

ホテルに入るとそこはカジノでした。ラスベガスで見た風景となんの変哲もありません。
唯一違いは、無数に並ぶスロットの画面に漢字が見えることくらいです。

早速、漢字表示のスロットの一台に100香港ドルを投入しました。
画面やボタンの説明も漢字なので、なんとなくわかったようなわからないような中途半端な気分で、「開始」ボタンを押してみました。
液晶の英数字やパンダや竹の絵が回りましたが、何も揃いません。
そのまま続けて、3回ハズレ。
4度目の「開始」ボタンを押したところ、スロットは回りません。
?と、よくよく見ると掛け金は1回あたり30香港ドルだったようです。文字通り秒殺されました。
マカオ恐るべし。

でも、その時点では、まだ恐れよりも希望が勝っていました。
「手荒い挨拶を受けたけれど、こちらは世界を股に掛けたギャンブラーだ。負けるわけがない」と雰囲気に呑まれないように、勝手な思い込みで気持ちを昂ぶらせて、相性の良さそうなスロットを求めて奥へと進みました。
そして、マカオのカジノの深みへと・・・。

・・・・・・

帰りの高速艇に乗るためにホテル前に横付けされたバスに乗ろうとしたら、バスの乗車口でホテルの女性が何か言ってます。
どうやら、ホテル利用の証を見せろと言っているようです。
ホテル利用を証明できなければ、バスに乗るのは有料のようです。
もはやバス代も残っていない・・・手許にあるのは帰りの高速艇の切符だけ・・・。

「絶望のバス・・・」

4日目の朝5時、ホテルのモーニングコールで起こされました。
6時にロビーに集合です。
4日目のイベントは帰国のみです。

3泊4日といいつつ、実質2日の香港・マカオの旅でした。
空港までのバスの中で、サンドイッチとバナナとゆで卵と初めての香港を噛みしめていました。
そして、後半ちょっと寂しい展開になったけれど、近いうちにまた香港に来よう、と心に誓ったのでした。

そう、忘れ物を取り戻すために。

(マカオ行きの船に乗るために。・・・いや、香港経由しないで、最初からマカオに行こう・・・)