David Bowie 『’Tis a Pity She’s a Whore』(Bowie) 16Sony
老獪なポジティブ。形容矛盾のようですが、そうとしかいいようがない。
死期を悟った上での作品とは全く思えません。内部から迸る欲求を、絶妙な制御のもと、蠱惑的な音像へとドライブさせているわけですが、制御やドライブの革新性は、確実に時代をリードしています。
まるで、「この圧倒的な革新性で5年間は俺がトップを走る」といった意気込み、凄みさえ感じさせます。
常にスタイルを変え続け、変化することが存在理由ともなっていたボウイは、成熟を拒否せざるを得なかったとも言えます。
鮮やかな変貌への意匠も枯渇し、渋い成熟を売りにも出来ず、低迷期が長く続きました。
創作的にも、肉体的にも衰え、死期が確定した後、怖ろしいほどのレベルの遺作を作ってしまったわけです。
そうか、もう変化し続ける必要がなくなったから、出し切っちゃったんですね。
それにしても、最後の最後にこのポジティブネス。
惜別の哀感などは全くなく、荒々しく、胸倉を掴んできます。