第12回 実録「試験にでるえいたんご」

去る7月下旬のこと。
なんの因果かある試験を受けることになった。

合格率は25%程度、4人中3人落ちるという無慈悲な試験である。
しかもこの試験の予備知識はほとんどない。
なぜ受けるのかという必然性すらない。
「試験を舐めんな」と言われても、成り行き上こうなってしまったので、しょうがない。
とかくに人の世は住みにくいのである。

とはいえ、まずは形だけでも(?)試験勉強をしなければいけない。
試験勉強はウン十年ぶりのことで、売れ残りのリンゴくらい呆けが進行しているのに、それを言い訳にするわけにも行かず、とりあえず参考書を購入することにする。

書店に行くと、当然のことながら、無数の本が並び、今週のベストセラーや今月のグラビアアイドルがにこやかに招く。

「試験なんか止めて、どう?」てな感じで招いている。

何が「どう?」なのかわからないが、試験勉強を妨げるのに十分なパワーである。

ひとしきり、立ち読みをして、独り総白痴状態になっていると、偶然にも書店の有線に松本ちえこの「恋人試験」が流れてきた。

「零点なんかじゃ許さない、100点取る人大嫌い、知っているのにわざと間違える65点の人が好き♪」(作詞:伊藤アキラ)

なるほど、0点も100点もだめなのか・・・試験とは奥が深い・・・。

※試験の極意その1

「0点は論外だが、100点も駄目。ほどほどの得点がいい」
・・・つまり、試験勉強に根をつめるな、ということです(ほんと?)。

いろいろある参考書の中で「はじめて受ける○○試験」が目にとまる。
2回目に受ける時には使えないみたいだが、今回は「はじめて」なのでこれにする。

参考書を買ったら一安心。(な、わけはないのだが・・・)

で、時は流れて、気がつくと10月12日。
試験まであと1週間を切っている。
参考書を枕にしての睡眠学習の効果はまだ出ていない。

仕方がないので、枕カバーをはずして参考書を開いてみる。
日本語で書かれているはずなのに、まったく意味がわからない。
文字がゲシュタルト崩壊し、頭がウニ化する。。。。

思考が停止すると昔の受験勉強のことを思い出す。

暗記が苦手だったなぁ。
赤尾の豆単は”abandon”で終了、「試験にでる英単語」(しけ単、でる単)は”intellect”で終了。

それでも、なにかの付録についていた英単語連想暗記ではいくつか覚えた(今も覚えている)。

「ウォー、戦争だ」・・・war=戦争
「わー、虫だ」・・・worm=虫
「港だよ、はぁ、婆さん」・・・harbor=港、「はぁ婆さん」って無理矢理だ。
「異常な景気で、危のう丸損(あぶのうまるぞん)するとこだった」
・・・abnormal=異常な、「危のう丸損」って論外だ。

三角関数の覚え方も「sinけんに cosれば tanと出る」(真剣に擦ればタンと出る)なんていうのがあったけど、これがなんの役に立つのかはわからない・・・。

それでも、がんばって参考書を読み続けて、ようやく3分の1くらい読み進んだところで、10月18日、試験当日となる。

試験場にはたくさんの受験者がいて、みんな頭が良さそうに見える。

※試験の法則その1
「他人が皆秀才に見える」・・・でも、絶対そんなことはない

試験官が来て、試験の説明を感情のない声で棒読みし、試験用紙を配る。
開始時間となって、試験が始まる。
問題を開く。

「ぉ・・・」「umh・・・」という声にならない詠嘆が不特定多数からでる。

まさに「試験にでる詠嘆語」・・・。

開始10分経過・・・
試験官が受験票を確認しながら試験場内を歩いている。
受験票の写真は3ヶ月以内のものを貼らなければいけないらしいが、3年前の免許更新時のものを貼った自分はドキドキである。
替え玉受験と思われたらどうしよう?

※試験の法則その2
「試験官は受験者の顔なんか見ていない」

60分経過・・・

マークシートの塗りつぶしはしっかりとしないと正解でもコンピュータに弾かれるらしい。きちんと枠の中に収まるように、丁寧に塗りつぶす。
はみ出たら消しゴムで消して、塗り直す。
1問塗るのに5分くらいかかっている。
でも、慌ててはいけない。

※試験の極意その2
「とにかく慌てない。落ち着いて問題にむかえば自ずと答えが浮かんでくる」
・・・といいのだが・・・

100分経過・・・
とにかくわからない問題ばかりである。
でも、落ち着かなくては。汗と涙で問題文が見えなくなってきた・・・

そうだ!

※試験の極意その3
「わからないときは出題者の意図を考えてみる」
・・・たいていの出題者は受験者を落とすことしか考えていない
・・・ので、潔く落ちてみる。

120分経過・・・
耐えきれずに、手をあげて試験官に合図し、試験会場を出る。

※試験の極意その4
「悪あがきはしない」・・・臥薪嘗胆、捲土重来、七転八起、・・・七転八倒。

試験会場を出て、ほっと一息。ふと、さっきわからなかった問題の答えがひらめく!

※試験の法則その3
「悪あがきをすればよかった・・・と思う」

※試験の法則その4
「もっと勉強すればできたのに。次回までにしっかり勉強がんばるぞ!」
・・・とはいえ絶対やらないな、ぎりぎりまで・・・

翌10月19日。
これを書きながら、すでに試験は遠い過去となっている・・・

※試験の極意その5
「気分転換、切り替えが重要」・・・終わった試験の答え合わせはしない(?!)

※試験の法則その5
「勉強するぞ!という昨日の決意はすでに薄れている」・・・以下、この流れの繰り返し。これじゃだめじゃん。

教訓「極意と法則の違いは何かということより、地道な努力が重要です」
(明らかに面白みに欠けますが、今回は体を張った教訓なのです・・・涙)

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