第15回 「トラにまつわるエトセトラ」

ご存じかもしれませんが、今年は寅年です。
冬季オリンピックもあれば、参議院選挙もあります。
きっと他にもいろいろイベントや出来事があるはずです(興味のある方はPCの前に座って想像してみてください)。

それにしてもトラというだけで気分が昂揚しますね。
ネズミやウシよりもかなりいい感じです(いい感じ度、当社比2倍・・・これはあくまでも個人の感想です)。

この押さえきれない昂揚感はなぜでしょうか?

そこには三つの理由があります。

1.トラは強いから
2.トラは大切だから
3.トラはシマシマだから
4.エトセトラ

(三つじゃないのか、という批判はごく自然に右から左へトランスファーします)

もっと詳しく説明致しましょう。

1.トラは強い
タイガーマスクこと伊達直人(「伊達な音」と誤変換・・・なんだか粋な音楽、みたいな)は「ちびっ子ハウス」という孤児院出身。
虎のように強くなりたいと「虎の穴」の地獄の特訓を経て、悪役レスラーとなるのですが、「ちびっ子ハウス」の窮状を知り、支援をします。

これを世の人々は「虎の穴に入らずんば孤児院を支援せず」転じて「虎穴に入らずんば孤児を得ず」と長く語り継ぐのでした。(もちろんウソです。と書かないと思わぬトラブルにまきこまれたりします)

豆知識その1・・・「虎の穴」のシンボルは、背中に翼の生えた巨大な虎です。ここから強いと言う意味の「虎に翼」という諺が生まれました。「鬼に金棒」「妻に包丁」と同義です。

「虎の威を借る狐」という諺。トラが強いが故に狡猾な狐がその威光を利用するのですね。でも、よく考えるとこの諺のトラはお人好し(お虎好し?)で、おつむが弱いですね。簡単に狐に利用されてますから。

この狐は、ビジネス界に喩えると大きな会社を利用してうまく立ち回る中小企業ってところでしょうか(唐突ですね)。

2.トラは大切
貯金を「虎の子」と言いますね。虎児とも言います。虎穴はさしずめ銀行か、コンビニでしょうか。
まさに「虎穴に入らずんば虎児を得ず」(自分で言うのも何ですが「虎穴」が好きですね・・・)

とらやの羊羹は庶民にはなかなか口にできない高価な羊羹です。
小腹が空いたからお茶といっしょにいただきましょう、なんて訳にはいきません。

家庭訪問に来た先生に出したり、お見合いの席で「このあとは若い二人でゆっくりと」なんて時に、さりげなく座卓の上に置かれるものです(どっちの場面も実際に見たことはありませんが)。

それだけ大切なものだけに、緊張のあまり百貨店のお菓子売り場の「とらや」の額を、つい「やらと」と逆に読んでしまうことがあります。
そして艶めかしい気持ちになってしまいます。

なにしろ「やらと」です。
この言葉からなんの脈絡もなく九州の女性を思い浮かべて昂揚する私はヘンでしょうか?

豆知識その2・・・映画「男はつらいよ」の柴又のお団子屋「とらや」は40作目から「くるまや」に変わっています。羊羹を売っていなかったからでしょうか?(たぶん違いますね。気になる方はウィキペディアで調べてみてください)

3.トラはシマシマ
ずんずんずんずんずんずんずんずんぴんぽんぱぽん♪~~これだけで盛り上がりますね。

お馴染みの「ピンポンパン体操」(阿久悠作詞)です(若い人はなんのことやらわからないですね)。
そしてこの続きの歌詞がまたすごい。

トラのプロレスラーはシマシマパンツ♪
(たぶんタイガーマスクのことですね)

はいてもはいてもすぐとれる♪
(パンツがとれる!これは「力士のまわしが落ちる」「女優がフルハイビジョンでアップになる」と同義です。気分昂揚120%です)

この歌を聴くと、がんばらなくちゃ!って思うわけですね。

あの黒と黄色のトラのシマシマから、下手なバリカンでガタガタに刈られた頭を「虎刈り」と呼ぶようになりました。
最近は「虎刈り」を見かけることはありませんね。

と、思っていたら、紅白歌合戦にいました。
大人数の舞踏グループのボーカルの人の頭が残念なことになっていました。

せっかくの晴れ舞台なのに、本人は慚愧に耐えないことでしょう。
まさにトラジディ、悲劇です。

4.エトセトラ
お正月にテレビをみていたら、「おぎやはぎ」という二人組の漫才コンビがトラのつく興奮するものは何か?というネタをやっていました。
こんな内容でした。

「トラのつく言葉の中では、トランポリンが人を夢中にさせるけど、トランプには敵わない。トランプはいろんな遊び方ができて、人は熱中するあまり時間の概念すら忘れてしまう。。。。でも、その場に突然、トランポリンが届けられたらどうするか?やはりトランポリンに気持ちが移ってしまう・・・云々」(こう書いてみると、格別面白くもないですね。私的には非常に面白かったのですが・・・たぶん文章力の問題です)

トラがつく興奮するものは他にもたくさんあります。
たくさんありすぎるので、駆け足で行きましょう。(なにしろ虎は一日に千里を駆けるといいます。あれ、千里を駆けるのは、悪事だったっけ?)

まずは旅行、トラベルですね。トリップのほうがもっと興奮するという説もありますが、トラがつきませんし、手が後ろにまわる危険がありますので論外です。

トランジスタ・グラマー!(死語ですね)

トラバーユもわくわくしますね。「とらばーゆ」という名の雑誌のイメージから転職という意味が定着していますが、もともとの意味は「仕事」、それも「苦役、重労働」というニュアンスで使われるフランス語です。

ニコニコしながらトラバーユするなんて言ってる場合じゃないです。

バブル期には転職するたびに、収入が増えるという今思えばおとぎ話のようなこともありましたが、現在は転職のたびに収入が減り、気がつけばワラ一本持って途方に暮れるという時代です。

まさに「わらしべ貧乏」と隣合わせのトラバーユはわくわくです。

題名にトラのつくお話もいろいろあります。「虎よ、虎よ!」(アルフレッド・ベスター著)、「虎の牙」(モーリス・ルブラン著)、「虎の眼」(ウィルバー・スミス著)・・・。いろいろと言いながら三つしか思い浮かびませんでした。

トラがつかなくても、トラが出てくるお話。
「ちびくろサンボ」。トラは最後にバターになってしまいます。
(iPhoneアプリの「トラバター」はこの話にインスパイアされたのでしょう)

「山月記」(中島敦著)には頭はいいけど自負心が強く意固地な性格のため人食い虎に変身してしまう中途半端な男が出てきます。(性格が悪くて、虎になるなんて、トラに失礼です。高校の現代国語の教科書に載っていたという記憶がありますが、当時の文部省は何を考えて載せたのでしょう。道徳教育になると思ったのかしら?どうせなら「名人伝」のほうが良かったのに。)

豆知識その3・・・真珠湾攻撃をめぐる日米の動きを描いた映画
「トラ・トラ・トラ」の日本版には渥美清がカメオ出演しているそうです。
「トラ・トラ・トラ・寅」とトラを四つ揃えたかったらしい
(「おかしな男 渥美清」小林信彦著)。

エトセトラ、エトセトラ・・・

なんだか論旨が無茶苦茶になってきました(もともと筋道があったのか?)。

日本のトラディショナルな習慣の魅力を表現することにトライしようとしたのですが、思わぬトラップにはまって、トラブル続きの文章となってしまいました。タイガーい(大概)の人にはなんのことやらさっぱりわからないでしょうが、トラに関わるグッズ(いわゆるタイガー・グッズ)を羅列することによりトラは人々を興奮させるという真理を見事に証明するというのは「捕らぬ狸の皮算用」となってしまいました。

美人編集者に「トラスト・ミー」と言い続けてきましたが、もうこれで(猛虎れで)すっかり信用をなくし、トラウマになりそうです。ぐれて酒を飲んで虎になるしかないですね・・・。

「天災は忘れた頃にやってくる」と言ったのは寺田寅彦先生ですが、こうして「天才は忘れられていくのです・・・」
(誰が?ヘンな妄想に囚われている・・・)

結論:なんだかんだ言いながら、実は来年のウサギちゃんのほうに興奮したりします。中年ですから。(2010年、1回目からすみません)

※さて、この雑文に「トラ、虎、寅、etc.」はいくつあったでしょう?

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