第77回 第三の・・・

先日、このコラムを読んでいただいている方に偶然お目にかかりました。
その方曰く「よくあんなしょうもないことばかり書いていられますね。しかも中途半端なネタばかり。。。」
そんなに褒められても困ると照れながらも、誤りは訂正しなければいけないので、
「ネタではありません。真実です!」(私の中では)と言っておきました。
その方は不満そうでしたが、にっこり笑いながら、右手の交差点を斜めに渡っていきました。
その後のことはわかりませんが、その方はいい人でした。

で、ネタのない人がよく使う手は、最近身の回りに起きたちょっとしたことを随筆日記風に書いて、ちょっとした教訓じみた落ちをつけるという形式と聞きます。

私は純粋に最近、身の回りに起きたちょっとしたことを日記風に書いてみたいと思います。けっしてネタがないわけでも、ネタなわけでもありません(なんかめんどくさい言い回しになりましたが)。

3月1日
知り合いに不幸があって、友人とタクシーで斎場に向かう途中のこと。
友人曰く「お前、最近、頭皮が透けて見えるようになったな」
私「お前こそスケスケだぞ」
友人「俺はリ○ップを使ってるから大丈夫。もう、うぶ毛が子供毛くらいまで
成長してきてるし」
私「俺だって、柑○楼で、抜け毛が当社比10分の1まで減ったぞ」
友人「それにしてもその頭皮はひどい。毛が逃避してる。ふふふ」
私「なにが可笑しい!?じゃあ、これをかぶるよ」と、私は内ポケットからア
○ランスを取り出した。
友人「なんだその黒いのは?」
私がそれを頭に載せてみると「ニャー」と鳴いた。
それは黒い子猫だった・・・。

という、意味不明な夢から目覚めると外はもう明るかった。
3月はこうして始まったのでした。

3月2日
3月なので、「3」のつくことをしようと思ったけれど、何も思い浮かばなかったので、HDDレコーダーに撮りためてあったビデオを観ることにした。

モノクロの古い映画だ。ロンドンのビッグベンが映し出され、軽快なギターのような音楽が流れ出した。

聞いたことのある音楽だ。俳優の名前が表示される、ジョゼフ・コットン、ヴァリ、オーソン・ウェルズ・・・脚本グレアム・グリーン、監督キャロル・リード・・・タイトルが出た。「TheThirdMan」

物語の舞台は第二次世界大戦後のウィーン。
ジョゼフ・コットン演ずるマーチンスがハリー・ライムを訪ねて汽車から降りたところで、レコーダーのLEDランプが赤く点滅し出した。

その後、場面が変わって、マーチンスが階段をのぼるところで、レコーダーが「シュワッチッ!!」という変な音を発して止まった。壊れたのか?
始まりからちょうど3分のところだ。

変だなと思いつつ、ビデオはやめて、本を読むことにする。
遠藤周作の「ぐうたら人間学」と吉行淳之介の「軽薄のすすめ」と安岡章太郎の「犬をえらばば」の3冊を並べて、どれにしようか迷っていたら、お腹が空いてきた。

カップヌードルのトムヤンクンヌードルを取り出す。
お湯を沸かしている間、手持ち無沙汰なので、冷蔵庫からビールを出す。
「麦とホップ」、「金麦」、「クリアアサヒ」の3本を並べて、これまたどのビールにしようか迷ってみるが、厳密にはどれも「ビール」ではないことに気づく。

と、ここでお湯が沸いたので、トムヤンクンヌードルにお湯を注いで、タイマーをセットする。

1分・・・2分・・・3分立ったところで、タイマーがアホな音で鳴る。「世界のナベアツ」タイマーは3の倍数の時だけ、この音で鳴るのだ。
あ、世界のナベアツは今は桂三度だった・・・。

3月3日
ひな祭りなので、近所の和菓子屋さんへ行く。
桜餅を買うのだ。

店内には「うれしいひな祭り」の音楽が流れている、ということはなく静かな佇まいだ。

「桜餅はありますか?」と聞くと、和菓子を売ってウン十年という感じのとても若いとは言えない品のある女性店員が黙って奥のショーケースを指さした。

どうやら怪しい風体の中年男とは話さない主義なのか?
それとも、私の滑舌の悪い日本語が、英語に聞こえ、「さくらもち」の部分しか聞き取れず、敵性語は話さないと決めているため、黙って身振りで示したのか?

あるいは、この女性店員は昨夜の雪に交じって飛来した寄生獣に乗っ取られてしまっているのか?そうだとすると、隙を見せると、襲われる危険がある。
ほかに客が誰もいない和菓子屋で私の緊張感はいきなりマックスに達する。
寄生獣にやられる前に、桜餅を買って帰らねばならない。
ショーウインドウの中に桜餅が2種類並んでいる。ひとつは薄桃色のおこわ状の餅に桜の葉が巻いてある。もうひとつは白いおこわ状の餅に桜の葉が巻いてある。

どう違うのか?
女性店員に違いを聞くわけにはいかない。隙を見せるわけにはいかないのだ。
汗。
極度の緊張の中、命がけの注文をする。
「赤イ桜餅、白イ桜餅、1個ヅツ、クダサイ」なぜかカタコトだ。
「はい。白は味噌餡ですが、いいどすか?」なんと女性店員が喋った!!
驚いた私は「あと、うぐいす餅2個と梅どら焼き1個とゴマの串団子を2本ください」と追加注文をした。

無事、お勘定を済ませ、品物を受け取ると、女性店員は「おおきに」と送り出してくれた。
ああ、彼女は京都弁しか喋れないんだ。
妙に納得したので、帰宅して、白桜餅を食べることにした。
味噌餡ならば、先日知り合いにもらった京都土産の七味「舞妓はん、ひぃ~ひぃ~」が合うかもしれない。

白酒に見立てたにごり酒を片手に、辛い桜餅を食べる中年男(もはや初老か)。

少し白酒めされたか♪ きょうはたのしいひな祭り♪

ああ、でも、こんなことをしている場合ではない。イリジンの「中年探偵団」の締め切りが間近なのだった・・・。

教訓:白酒の飲み過ぎは仕事の妨げどす(なんのこっちゃ)

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