第85回 真冬のビアガーデン

受験シーズン真っ盛りです。

あ、「真っ盛り」はおかしいですね?桜や桃の花じゃないですからね。
受験生の中で余裕綽々という人はなかなかいないでしょうし、そのご家族の方も本人以上に緊張と不安でいっぱいのところを「真っ盛り」では、失礼な話です。

思えばウン十年前に私も受験生だったことがあります。
まだ、センター試験も共通一次試験もないころで、国公立大学も私立大学も入試は一発勝負の時代です。
頭脳よりも精神力や体力、そして運が試される時代だったように思います。

私も運だけは自信がありましたので、それだけを頼りに能力以上の大学に願書を提出したのでした。

受験勉強よりもラジオの深夜放送の選局と夜食のインスタントラーメンの銘柄に頭を悩ませた日々が過ぎ、いよいよ受験間近となった日、一つ心配ごとが出てきました。

雪深い田舎に住んでいたので、受験当日に大雪が降ると受験会場に間に合わないのではという心配です。

受験会場までは汽車(文字通り蒸気機関車です)で行く予定でしたが、大雪で運休する懸念があるのです。

運には自信がありましたが、私の運よりもパワーの強い雪男がいないとも限りません。(北国では、一般に悪天候ももたらす人を雨男ではなく、雪男と呼んでいます・・・嘘です)

そこで受験の前日に会場近くに宿泊することにしました。
たまたま高校に受験生向けの宿泊案内がいくつか来ていたので、あまり深く考えずに、札幌市内の合格弁当(!)付きで料金の安いホテルを予約しました。

そのホテルの名は「ビジネスホテルハイランド」。

そして、受験前日。友人達は名のある有名ホテルに宿泊する中、私ひとりそのホテルへと向かうのでした。

合格弁当が付いて、料金も安いのに、なぜか人気のないホテルハイランド。

なぜだろう?
すると、友人の一人が意味深なことを言いました。

「場所がね。そして、ホテルの名前が。。」

「名前が?」と私。

「うん、その・・名前がハイランドだろ?おまえ、大学に入らんど。」
えっ、ダジャレ!?それだけで?

ええ、もちろん、それだけではありませんでした。
ホテルハイランドの場所はススキノのディープな場所にあったのです。

明るいうちにチェックインしたので、気がつきませんでしたが、夕闇が訪れると一変して、鮮やかなネオンの明かりがホテルの窓に飛び込んでくるので
す。

赤や青や黄色がストロボフラッシュのように明滅する様は、テレビのポ○ットモ○スターのようでした(って、その頃やってないし)。

さらに、賑やかの嬌声も聞こえてきます。とても一夜漬けができる状況ではありません(って、高校の期末試験じゃないし)。

翌朝、寝不足のまま受験会場に向かった私は、会場となる大学の正門の前でアイスバーンに足を取られ、思い切り滑って転んだのでした。。。おまけに手提げ鞄に入っていた合格弁当が雪の中に落ちるという体たらく。

滑る。落ちる。という受験三大禁句のうちの二つに受験当日の朝に見舞われてしまったのでした。

そして、最大の悲劇は、お昼に開いた合格弁当の中身が、薄いハムとチーズのパサパサのサンドイッチだったことで、空腹を全く満たすことができず、午後の試験はお腹を空かせたまま、ついにお手上げとなったのでした。。。。

といった昔話を「真冬のビアガーデン」会場で思い出したのでした。(例によって、唐突に本題?に突入です)

ここは札幌京王プ○ザホテルのステージのある大きな会場です。
毎年2月の下旬にこの場所で「真冬のビアガーデン」というイベントが開催されていて、ここで生ビールをいただくのが慣例となっています。

夏が大通公園のビアガーデンならば、冬は京王プ○ザのビアガーデン。
札幌のビール好きならば、誰でも知っている話なのです。
なのに、毎年、会場には妙齢の女性がたくさんおります。
ビアガーデンに女性が多いのは珍しいことではありませんが、真冬のビアガーデンはビールを飲むだけでなく、ステージ上でフラダンスが披露されるのです。

北海道内のフラダンス教室の会員さんたちの発表の場でもあるようなのです。
それでお仲間の女性が多いようです。

真冬に腰みのを着けた女性のフラダンスを見ながら、生ビールを飲むというのは、真夏には味わえない至福の時間であります(けっして腰みのが目的ではありませんっ!!純粋に素晴らしいフラを鑑賞しながら常夏のハワイの雰
囲気に浸っているだけなのですっ!!!って、なぜに必死?)

今回はアラフィフかアラカンか不明なおじさん三人で飲んでます。
ビールはアサヒとサッポロ、銘柄はスーパードライとスーパードライの黒、クラシックとエビスの黒の4種。
それを交互に、時には勝手にハーフ&ハーフにしながら、楽しむのです。

つまみは枝豆、卵焼き、ピザ、スパム入りポテトサラダなどなど。
さらに生ビール1杯飲むごとにビンゴカードが1枚もらえます。
会場全体のビンゴ大会もお楽しみのイベントなのです。

フラダンスを十分に堪能したおじさん三人の手許にはビンゴカードが30枚ほど残りました。
一人10枚です。(一人10杯?)

まずはカード中央のフリーを開けます。
ステージ上で大きなディスプレイに映し出されたビンゴマシンが英数字を表示し、それが読み上げられます。
1枚づつ、その有無を確認します。10枚もあると、結構大変です。
しかも結構酔ってます。

「えーと、Jの55、Jの55。。。おい、Jなんてないぞ!」

ま、酔っ払いですから。。。

ビンゴの数字が5コほど読み上げられたところで、酔っ払いおじさん三人もお手上げとなったのでした。。。。

真冬のビアガーデンが終わって、ホテルから出ると、雪が降っていました。

酔ってるので、滑って転びそうでしたが、なんとか耐えました。

あの受験の朝、滑っても転ぶのを耐えることができれば、その後の人生が変わっていたかもしれない・・・・なんてことは全く考えることもなく、陽気に帰路についたのでした。

ちなみに、ホテルハイランドの今はというと、はっきりしたことはわかりません。

数年前に閉館したという噂を聞きましたが、もともとそんなホテルはなかったという人もいます。

人の噂も八十八夜(ちょっと違うかも)。

もうすぐ春ですね。桜が待ち遠しいです。

201603f