第3回 衝撃のインド編~後編

日本は毎日サウナのような暑さだが、私がインドを訪れた4月の終わりも同じような気候だった。インドは5月になると40℃を超えると聞いて、ギリギリ4月中にすべりこんだのだ。今回はインド後編。ジャイプール、バラナシ、コルカタの3都市を巡ったが、印象に残ったそれぞれの街のインド人ガイドについて書きたい。

ジャイプールのガイドの名前は忘れてしまった。英語ツアーのつもりだったが、カタコトの日本語を話せてラッキー!と思った。が、最初に向かったハワーマハル(風の宮殿と呼ばれるピンクの宮殿)に着いた時、違和感を感じた。一緒に降りて、説明や写真撮影をしてくれると思いきや、ガイドはリキシャを降りる素振りがない。「ガイド」といっても色々あるんだ、と理解した。その後もアンベール城、水の宮殿などに連れて行ってもらったが、同じスタイルだった。
ただ、ジャイプールの名所を回れれば良いなと思っていた私達のニーズにはマッチしていた。

そして途中で気づいたが、ガイドはイスラム教徒でその日はラマダン最終日。私達が観光している間、リキシャで休憩していたのは、断食でパワーが出ないというのもあるようだ。レストランもラマダン中は休業していたりする。宗教が身近にあるのだと感じた瞬間だった。

ちなみにジャイプールの史跡はどこも素晴らしかった。ハワーマハル目当てだったが、アンベール城の彫刻が繊細で美しかった。今回の旅でインド人から繊細さを感じることはまずなかったが、これだけのものを作り上げられるということはまだまだ知らない一面がある気がして更に興味が湧いた。

バラナシではインド人のさんちゃんにガイドを依頼した。奥様が日本人でさんちゃん自身も広島に8年住んでいたこともあり、日本語が流暢だった。ちょうど奥様は日本に帰省中でさんちゃん単独の案内だった。
日の出前からガンジス川の岸辺を歩き、ボートに乗り、対岸に渡り、ラッシーやチャイを飲み、バラナシをくまなく案内してくれた。途中立ち寄ったチャイ屋でさんちゃんは、ガイドの仕事そっちのけで友達とクリケット観戦で盛り上がっていた(笑)。


さんちゃんのガイドはバラナシの定番と地元おすすめの両方を紹介してくれてとてもバランスが良かった。遠隔で日本から奥様がサポートしてくれて、日本人のような細やかなサービスも感じられた。

バラナシはインドに行くならぜひ訪れることをおすすめしたい。やはりガンジス川は素晴らしい。いつまでも眺めていられる。沐浴してお祈りする人の姿はどこか神秘的で、その横では水泳の練習をしている子どもがいたり、洗濯をする人もいる。そしてその近くで日々火葬がされている。様々な人の日常があり、生と死がこんなに隣合う場所は世界でも珍しいと思う。正直汚い川というイメージしかなかったが、ガンジス川はやはり聖地で実に神秘的なのだ。

そして、インドで訪れた最後の街、コルカタ。イギリス統治時代の首都ということと関西弁を喋るインド人ガイドのサトシに会ってみたかった。サトシはコルカタのバックパッカー街であるサダルストリート育ちで、ポストカードを売りながら旅人との会話の中で日本語を覚えたそう。
サトシはコルカタでこれはぜひ見てほしい、食べてほしいというものをたくさん案内してくれた。生鮮市場やお祈り用の花市場、コルカタにも流れるガンジス川、マザーテレサハウスなどを訪れた。ローカルバスに乗ったり、屋台も多数案内してくれてインドの名物も一通り食べることができた。新車の安全祈願の儀式にも遭遇し、インド人の車に必ずお守りや置物が置いてある理由もここで初めて知ることができた。サトシのガイドは地元民の日常を垣間見るスタイルで、これもとても面白かった。印象的なのはサトシ自身がインドらしい光景を目にするたびに写真を撮っていたことだ。もちろん宣伝用でもあるが、彼のインド愛が感じられた。
コルカタの街はバスや黄色いタクシーが走っていたりして、これまでのインドの街とは違って近代的な風景だった。サトシのおかげでディープな街歩きを堪能できた。

当初、私は「日本のおもてなし基準」でガイドしてくれることを勝手に期待してしまっていたが、ここはインドだ。

ツアーの最中に「ちょっと待ってて」と言い残し、お祈りをしにいったり、飼い犬の散歩をしたり。私が使用していた100均の財布を欲しがって物々交換したこともあった。日本の常識で考えてしまうと目が点なことばかりだったがどれもインドらしさを感じられておもしろかった。

10日間のインド滞在は刺激的な毎日だった。日本はいい国だ!素晴らしい!とたくさんのインド人に言われたが、私からするとインド人はすごい!日本とは全く違い生きることに貪欲というのかエネルギーを感じた。このカオスな日常で生きていけるというのは周りに寛容、もしくは周りを気にしないということなのだと思う。日本人の私からすると見習いたい一面だ。今回は北部しか行けなかったので改めて南部の方も是非訪れてみたい。あの喧騒も離れると少し懐かしく感じるし、インドに意外とハマりそうだ。