第5回 教科書でみた景色~エジプト編

日本はちょうどシルバーウィーク。毎年お盆は休まずにこの時期に少しずらして休みをもらい海外旅行をしていたのが懐かしい。

さて、今回はエジプト編。エジプトは10日間でアレクサンドリア、カイロ、ギザ、アスワン、ルクソール、アブ・シンベルと北から南まであらゆる街を巡り、ナイル川クルーズにも乗り、エジプトでやりたいことを詰め込んだ旅だ。

古代エジプトの史跡は言うまでもなくどれも素晴らしかった。小学生の時、歴史の教科書で学んだ光景を実際に観ることができて本当に感動の連続だった。今回はエジプト考古学にも詳しいエジプト人のツアーガイドDalyが英語でガイドをしてくれた。歴史用語は英語だとわからないことも正直多かったが、説明を聞いてから見学するとより当時の人に思いを馳せる事ができ、ガイドの価値を痛感した旅だった。

数多くの史跡を見学してやはり一番印象に残ったのはギザにあるピラミッドだ。いい表現が全く思い浮かばないが、本当にその大きさに圧倒された。

せっかくだからと、ピラミッドの内部(クフ王の棺が納められている王の間)も見学したが、これは想像以上に過酷だった。まず列に並んでいる時、戻ってくる人がみんな滝のような汗をかいて出てくるので、正直引き返したくなった。。が時すでに遅し。この場所を発見した人によって作られた道のようだが、とにかく狭い。154cmの私が常にはしごを登っていくような格好でなるべく体を平にしながら歩いていくのだ。しかも同じ道を下りてくる人もいて、蒸し暑く、空気が薄い。おすすめしているのかしていないのか、もはやよくわからなくなってきたが、閉所恐怖症ではない方はぜひ入ることをおすすめする。この場所を発見した人に思いを馳せるとその熱い想いに感動できる。(上り始めると感動するヒマはなくなるが…)ちなみに中に入ると狭い道の交通整理をする人はいなく譲り合い精神で成り立っているのも興味深かった。みんなで暑さと空気の薄さと闘っている一体感。入らないと味わえない経験である。

さて、史跡は感動の連続のエジプトだが、チップ文化は驚きの連続だった。チップといえば良いサービスを受けた時、感動したり感謝を表現するものという理解なのだが、エジプトではややそのニュアンスが異なる。それは「バクシーシ(喜捨)」という習慣で裕福な人が貧しい人に施しを与えることらしい。本来のバクシーシとは異なるのかもしれないが、エジプトではあらゆる場面でチップという名のバクシーシを求められた。

例えば史跡を訪れると写真を撮ってあげるよ、と声をかけてくる人が多数いる。ピラミッドに限らずありとあらゆる史跡にいる。とある史跡では監視員に見える人が立ち入り禁止エリアに観光客を招き入れて写真を撮ってあげると声をかけていた。それが親切かと思いきやそんな訳はなくチップをねだられるのがエジプトである。どこの国でもよくあるといえばあるのだが、要求される頻度が多いのと、その声掛けを断るのも若干疲れてくるのである。そもそも監視員がそれやっていいの?と思ってしまうのも正直な所だ。

私達も馬車に5分10分乗った時、降りる前に写真を撮るよと言われ嫌な予感はしたが、案の定チップを要求された。渋々チップを渡してみたが、「え、こんだけ?」って顔をされた。。ガイドのDalyに相談したところどうやら相場より少なかったらしいが、私自身がチップ文化に慣れていないということもあり、正直、チップは少しもったいなく感じた。途中ナイル川クルーズで部屋のベッドメイキングのチップを置いたらタオルで飾り付けがされ、忘れると何もないということもあった。チップに応じてサービスが変わるようだ。滞在後半には私達もこの習慣をある意味楽しめるようになってきたが、慣れるまではモヤッとする。が、これも旅の醍醐味とも言える。難しいものだ。
※ちなみにガイドのDalyからはチップは要求されず、終始とても真摯な人だったので当然ではあるが、人による。

エジプトと言えば古代文明の印象が強いが、訪れてみるとイスラム教の国という印象を強く受けた。女性は肌を隠していない人はほぼおらず、そもそもあまり街中で見かけることが少ないが、最終日に立ち寄った公園では女性と子どもでピクニックする人を多く見かけた。働き手は男性が中心になっているようだ。古代文明ではクレオパトラが支配していた時代もあるのになんだか不思議な気持ちになった。そして同じ女性として日本で生まれた私は色々な面で恵まれているんだなと言うことにも改めて気づくことができたと思う。もしこの先エジプトを訪れる機会があったときには、ぜひ古代文明だけではなく、現代のエジプトの視点でも街を散策してみることをおすすめしたい。