菅義偉首相の長男による接待疑惑がNTTに飛び火し、沢田純・NTT社長が参考人として国会に呼ばれる事態にまで発展した。

沢田社長は、内閣広報官(元総務審議官)の山田真貴子氏、谷脇康彦・総務審議官(3月16日に辞職)と会食していたそうで、さすがにこれは意外ではあった。

というのも、総務審議官は事務次官級ポストであり、金融業界になぞらえれば、三菱UFJ銀行の頭取が金融庁長官を接待するようなもので、今となってはまったくあり得ない話である。

そもそも、国家公務員倫理法・倫理規程は、1990年代の大蔵省接待汚職事件がきっかけになって制定されたもので、火元の金融業界ではいまだに接待は絶対のご法度なのですね。通信業界はユルユルだ。

ちなみに、NTTの持ち株会社化(NTT傘下にNTT東日本、NTT西日本、NTTドコモ、NTTデータをぶら下げるグループ再編)が決まったのは、1996年か97年のことだったかな。

1992~98年までは、NTT再編問題を追いかけ、98年以降は専ら金融危機を取材していた。ざっくばらんに言えば、こちらが「呑ませ喰わせ」していたので、それぞれの業界の接待事情は熟知している。

国家公務員倫理法・倫理規程が施行されたのは、2000年。その頃は、すでに金融業界を担当していたが、知り合いは通信業界の方が多かった。という頃合いである。通信業界といえば、NTTと郵政省(現・総務省)が両横綱だ。

国家公務員倫理規程を境にして、夕方になるとあっちこっちの郵政省幹部から電話がかかってきたことを憶えている。

「今晩、どう?」

接待を封じられてしまったので、ご馳走してくれる対手が見つからないのである。(今はどうか知らないけど)マスコミは倫理規定の対象外だったので、じゃんじゃんお座敷がかかる。お相手は、こちらで選び放題。という、ゴールドラッシュのような時期だった。

その頃、すでにNTTは郵政省を接待していたのかなぁ、と今考えている。96~97年までは皆無であったことは間違いない。先述したように、NTT再編問題を巡って、郵政省とNTTは角を突き合わせる関係だった。形式的なものであっても、盃を交わすことはなかっただろう。しかし、2000年となると、自信はない。

郵政省の官僚にご馳走になったことは、記憶にある限り1回しかない。ご馳走したことは、おそらく百万回くらいはあるだろう。

NTTについては、いささか事情は異なる。こちらが10回勘定を持てば、感覚的には2~3回はご馳走になったろう。

「へええ」と感心したのだが、谷脇さんが接待されたのは、麻布十番の会員制レストランであったという。この店は、NTTの関連会社が経営していて、すでに90年代当時からあった。あっちこっちのNTT幹部にゴチになったものだ(麻布十番と、もう1つ南青山にもあった。こっちは、まだあるのかなぁ?)

麻布十番の店には、当時のNTT社長だった児島仁さんもよく出入りしていて(当然、接待である)、そこで倒れて救急車で病院に運び込まれたことがある。ということを、広報部がひた隠しにしていたことも知っている。

繰り返しになるが、児島さんの接待相手は郵政省ではなかっただろう。いちばん多かったのは永田町、すなわち国会議員だったと推察される。

土光臨調の答申を受けて、時の中曽根康弘首相が推進した電電公社の民営化以来、NTTと政界は切っても切れない仲になった(電電公社当時も、そうだったわけだが)。

そんでもって、NTT再編問題を巡っては、再編を仕掛ける郵政省、組織防衛に徹するNTTが入り乱れて政財界工作に走った。有力政治家、名だたる財界人の中で、おおよそ巻き込まれなかった者は皆無だったと言っていい。

NTT民営化以前も、通信行政は郵政省の所管だったわけだが、実質的には電電公社が仕切っていた。今のエネルギー行政とよく似ていますね。経済産業省が所管していても、回しているのは東京電力という。福島原発問題でこっちの実情もかなり変わってはいるのだろうけれど、文春は電力会社と経産省の接待問題も追いかけるといいと思う(すでに追いかけてるだろう、きっと)

したがって、郵政省にとって、NTTは歴史的に「目の上のたんこぶ」だった。それが民営化によって、監督する側される側にハッキリと分かれたものだから、積年の宿怨が一気に噴き出した。何が何でもNTTを分割し、切り刻み、弱体化させようとした背景には、そういうメンタリティも色濃く横たわっている。

個人的なことを言えば、NTT再編問題のおかげで、当事者であるNTT・郵政省のみならず、自然当然に政財界の知り合いが増えていった。20~30代の働き盛りでもあり、本当に有り難いことだったと思う。

NTTには「秘書室」があって、ここが政界工作の実行部隊だった(余談だが、総会屋対策の実行部隊は「総務部」で、こっちはこっちでメルマガ1本書けるくらいの話がある。いずれまた)。

秘書室長とか総務部長と話していると、よく有力政治家の秘書から電話がかかってくる。興味がないふりをして、それとなく聞き耳を立てていると、政治家の子弟や支持者関係の「就職相談」なのである。

有り体に言えば、「NTTに就職させろ」という圧力だ。これをすべて受けてしまえば、NTTの新入社員は全員コネ(縁故)になってしまう。なので、それを柔らかく断わるのも、秘書室長や総務部長の器量ということになる。

建前は「縁故お断わり」だが、どうしても断われない対手も、もちろんいる。名前は挙げないが、有力政治家の子弟が入社した例を2つ、3つは知っている。

というわけで、話をググッと乱暴に戻すが、NTTにご馳走になった麻布十番のレストランである。このお題、ここからが面白くなるのだが、続きは次回に。90年代当時の金融業界、大蔵省・日本銀行接待にまで遡ります。書いてるこっちが楽しみです(笑)