第4回 「サービスサイエンスとの出会い」

暑い暑い今年の夏は、全国のパパクワッチ達にとって、別の意味でもとても熱い夏でした。そう、みなさん”採集”に”ブリード”に大忙しでしたね!!

ところでクワッチを趣味とする人には、実は3つのタイプがあるのをご存知でしょうか?

1つ目は、採集を趣味とする人であり、魚の世界で言えば釣り人です。

続いて2つ目は、繁殖(ブリード)を趣味にする人で、魚の世界で言うと熱帯魚や金魚の飼育でしょうか。私はまさにこのブリーダーです。

そして3つ目は、採集と繁殖を趣味とする人でハイブリッド。

オオクワッチの世界でこの領域を実現できる人はそうはいない。
それだけ、オオクワッチの採集は難しく、ブリードに時間が掛るものなのです。

さて、前回のコラムでオオクワッチブリードサービスのペルソナを考えることによって、「お客様の考えていることや行動が予想できるようになった」というお話をしました。

実はココがこのコラムのポイントで、サービスサイエンスの醍醐味の1つである事前期待のマネジメントに関係してくるのです。

では、そのサービスサイエンスとは何か?を語る前に、サービスサイエンスと出会ったいきさつについてお話したいと思います。

私は、もともと某ICTベンダーで通信機器関係の仕事をしておりました。

通信は、規制緩和や制度変更の度に社会的変革をもたらしてきました。

ちょうど、1997年頃にナンバーディスプレイが開始されたのを覚えていらっしゃるでしょうか?着信した際の相手の電話番号を電話機に表示するNTTさんの電話の付加サービスです。

このサービス、プライバシー問題などいろいろと話題を呼びましたが、企業や個人にとって大きな変革をもたらしました。

何が変革のポイントかと言うと、発信者番号通知を受け取ることで顧客DBを検索して画面にポップアップ表示する仕組みが構築できることでした。

世に言うCTI(ComputerTelephonyIntegration)のことで、私の会社ではこの仕組みのビジネスモデル特許を取得していました。

ある日のこと。

「柴崎君、明日からCTIのビジネスの立ち上げをやってちょうだい。」

といきなり上司に言われました。

元来、新しいソリューションやビジネスの立ち上げを任されるケースが多かったのですが、その当時も2,3年のことだろうと、軽い気持ちで

「また、立ち上げですか!」

と引き受けたのでした。

当時は、その後の私の人生に大きく影響するとは全く知る由もありませんでした。

このCTIという技術を使ったソリューションは、具体的なビジネスの世界ではコールセンターと関係が深いものでした。

業種で例えるなら、銀行のテレフォンバンキングや通販業の受注センターなどが先駆けで、他の業種・業態への広がりを体感することにより、ビジネスの立ち上げに夢中になっていきました。

やがて、再び新しい言葉に出会いました。

CRM(CustomerRelationshipManagement)です。

一般的に”顧客関係性管理”と呼ばれますが、コールセンターなどの”カスタマーサービス”や”セールスフォースオートメーション”、”マーケティングオートメーション”等から構成される経営コンセプトです。

当時日本では、未だ目新しく一般に知られていませんでしたが、顧客志向のマーケティングの台頭もあり、広まるのは時間の問題でした。

こちらもやはりコールセンターを中心とするカスタマーサービスの事例が中心でしたが、他のベンダーに先駆け、CRMソリューションとしてビジネスの立ち上げを行いました。

とかくCRMは欧米の概念と考えられがちでしたが、日本では江戸時代から大福帳などで見られるように個人にフォーカスした経営が実践されて来ました。

“お客様の趣味嗜好を考えて、過去の履歴をもとに最適な対応を図る”

という考え方は日本人には大変馴染みやすい考え方だったのです。

そして、この”CRM”が”サービスサイエンス”に発展していくことになります。

私はCRM分野の第一人者が自分のオフィスの隣のビルにいることを知ります。

当時オムロンフィールドエンジニアリング(OFE)の常務として企業改革に手腕を発揮されていた諏訪良武氏です。

諏訪さんは、オムロンの保守サービス会社であるOFEの改革をコールセンターを中心に実施され、カスタマー・セントリックなビジネスを実践されていました。

そのコールセンターを起点とした企業改革は業界でも有名になり、数々のアワードで表彰されていました。

まだ若かった私は、他社ユーザにも関わらず、意を決してOFEさんの受付を訪ねました。

諏訪さんには快く面談に応じてもらえましたが、ITベンダーである私の名刺を見て、商品の売り込みと勘違いされ、当惑されていました(笑)

しかし、間もなく同じCRMをテーマにビジネスに取り組む者同士ということですぐに打ち解け、交流がはじまりました。

そして月日は流れ、2009年の1月に、諏訪さんは一冊の本を上梓されました。
CRMを実践してきた諏訪さんが出した、サービスサイエンスの本です。

 

092011顧客はサービスを買っている―顧客満足向上の鍵を握る事前期待のマネジメント
諏訪 良武 (著), 北城 恪太郎 (監修) ダイヤモンド社

サービスサイエンスは、2005年に米国IBMが提唱したことが始まりですが、OFEでの顧客サービス改革をもとに独自のアプローチで体系立てたものでした。

日本IBMの最高顧問である北城さんが監修されただけのこともあり、今となってはこの分野のバイブルとも言える本となっています。諏訪さんによると第6刷目になったとのことで静かなブームとなっています。

私は、この本でサービスサイエンスの本質を理解するようになるにつれ、この理論を検証してみたくなりました。

そう、自分の趣味である”オオクワッチのブリードサービス”の提供を通して。

(つづく)

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