第5回 「サービスを分類する」

例年9月から10月の初秋は、ブリーダー泣かせのシーズンです。というのもオオクワッチの赤ちゃんたちを育てている菌糸ビンからキノコが発生するからです。

オオクワッチの飼育が、ここまで普及して誰もが大きな成虫を羽化できるようになった背景に菌糸ビンの発明があります。

もともと、キノコの栽培用に開発された800cc~1400ccの植菌された木くずのビンへオオクワッチの赤ちゃんを投入したところ、大きな成虫が羽化したことからこの飼育方法が確立されました。

キノコは、温度変化や光に対して敏感に反応します。初秋の今の時期は、朝晩の温度変化も激しく、一晩であっという間に大きな傘をさかせてしまします。

たとえば、こんな感じ。

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”わー!なんだこりゃ!!”

はじめて見た時はそんな感じでした。でも、ちょっと幻想的ですよね。

キノコが発生するとなぜいけないかというと、オオクワッチの赤ちゃんのベットでありミルクでもある菌床が痛みやすくなるから。

そんなワケでパパクワッチは、まめに温度変化を観察すると共にキノコの発生を発見したらすぐに”キノコ狩り”をしなければなりません(笑)。

余談ですが、このキノコ、実は食べられます。オオヒラタケの仲間ということでバターソテーなどにして食べるとエリンギのようでとっても美味しいとのうわさ。

でも、パパクワッチの家ではママのお許しが出ていないのでまだご賞味しておりません(笑)。

さて、今回からサービスサイエンスについてオオクワッチのブリードサービスを題材に紹介していきたいと思います。

そもそもサービスサイエンスは、2005年に米国IBM社から提唱されはじめました。

現在では、科学工学的アプローチに加え、社会科学的・人間科学的アプローチが行われ、個人を対象とするものから企業を対象とするものまで広範囲に及びます。

その研究対象も”サービス・マーケティング”、”サービス・エンジニアリング”、”サービス・マネジメント”など多岐にわたります。

僕がオオクワッチのブリードサービスで実践しているサービスサイエンスは、CRM(顧客関係性管理)に端を発した諏訪式サービスサイエンス。

前回のコラムで紹介した
顧客はサービスを買っている―顧客満足向上の鍵を握る事前期待のマネジメント
諏訪 良武 (著), 北城 恪太郎 (監修) ダイヤモンド社

上記をテキストに、見よう見まねでオオクワッチのブリードサービスを検証したものです。

サービスサイエンスの第一歩は、自然科学に習ってサービスを”科学”することから始まります。具体的には、

1.サービスを分類する
2.サービスを分解する
3.サービスをモデル化する

といったステップを踏んでいきます。

今回のコラムでは、『1.サービスを分類する』ことから始めたいと思います。

なぜ、まず最初に該当サービスを分類するのかというと、サービスの全体像を見える化することで現在のサービスの過不足が一目瞭然になるからです。

オオクワッチのビジネスに関わる業界を3つのサービスに分類してみると

A.モノ提供サービス
B.情報提供サービス
C.体験提供サービス

に分類できます。

 

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※画像をクリックするとPDFファイルが開きます。

 

A.のモノ提供サービスはオオクワッチの個体自身の売買に加え、飼育に必要な用品の販売、専門書籍の販売などが含まれます。従来は、ペットショップがこの領域のサービスを提供してきました。

次にB.情報提供サービスです。これはオオクワッチの飼育に関する情報や採集に関する情報提供が中心です。僕のホームページでは、主に飼育に関する情報を中心に紹介しています。

最近では、外来種の移入に合わせて研究機関等でDNA鑑定も行われるようになってきています。

最後のサービスはC.体験提供サービスです。これはクワッチとのふれあいを提供するものであり、採集ツアーやクワガタ相撲などが実際のサービスとして提供されています。

それぞれのサービスを跨るサービスも提供されています。
例えばつかみ取り大会では、採集の疑似体験を通して最終的には個体の販売を提供するサービスと考えることができます。

また、3つのサービスを同時に提供する究極のサービスとして、飼育ルーム(ブリーダーの部屋)を公開した個体の販売や情報交換、飼育指導するようなオープンハウスの形態が考えられます。

これは、パパクワッチの定年後の楽しみです(笑)

一部のショップやブリーダの方は、このような形態で3つのサービスを同時に提供し始めています。

実はこのような意味のある軸をもとにサービスを分類することで新たなサービスのアイデアや不足するサービスが浮かび上がってきます。

読者のみなさんが関わっているサービスも、この3つのサービスで分類してみてください。いろいろ検証を進めると、3つのサービスエリアが重なる部分で付加価値を発揮しているサービスが多いことに気づきます。

つまり、この3つのサービスを全て取り込んでいるサービスは、サービスとしてのレベルが高い企業やお店ということになります。

次回は、2番目のステップである『2.サービスを分解する』に移りたいと思います。

(つづく)

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