第68回 「シリコンバレー訪問記 その3~全世界に拡がるコワーキングスペース「WeWork」~」
シェアリングエコノミーといえば、日本でもUBERやAirbnbが代表企業として有名ですが、オフィスを個人やスタートアップに貸し出すWeWorkをご存知でしょうか?
《オープンなWeWorkの貸しオフィス》
「WeWork」は、起業家たちに貸しオフィスを時間単位で提供しているニューヨークのスタートアップ企業です。アメリカ(ニューヨーク、サンフランシスコなど19都市)、オーストラリア(シドニー)、カナダ(モントリオール)、中国(北京、上海)、ドイツ(ベルリン)、フランス(パリ)、イギリス(ロンドン)、香港、イスラエル(3都市)、大韓民国(ソウル)、メキシコ(メキシコシティ)、オランダ(アムステルダム)といった全世界で展開中です。残念ながら日本には未だありません。
今回の訪米で、初めてサンフランシスコにあるWeWorkにお邪魔することができました。
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《左:Raspberry Piも会員 中央:電話会議ブース 右:イノベーション必需品》
■オフィス版シェアリングエコノミー企業
「Uberが車を、Airbnbがアパートを必要とするように、うちはオフィススペースを必要としています」とWeWorkの共同創設者のアダム・ノイマン氏。
WeWorkの面白いところは、彼らのテナントに入居する様々な業種のベンチャー企業にリアルとバーチャルの共創のキッカケとなる”場(ba)”を提供しているところ。
会員になると、毎週開かれるパーティーやイベントで人脈を拡げることができます。
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《左:様々なイベント 中央:優しいスタッフ 右:MSとのコラボ》
会員企業が自分たちのアイデアを売り込む「デモ・デイ」も頻繁に開催され、ベンチャー企業同士のネットワーキングや外部のWeWorkとの連携企業からアドバイスをもらえます。
さらに、WeWork Commonsと呼ばれる独自のSNSを立ち上げています。
このサービスはビジネスに特化したSNSで、主に事業を起こしたばかりの人々に的を絞っているのが特徴です。
会員には、各地に展開するオフィスの予約機能や、各種サービスの割引、ローカルイべントの紹介などの特典を提供しています。
■あのMicrosoftがWeWorkと提携
昨年の秋には、MicrosoftとWeWorkが提携を発表しました。
一見するとこのメッセージは、WeWorkの利用者がMicrosoft の商品(たとえばMS Office)を利用できるようにする契約かと想像していましたが、既にそのパートナーシップは締結されており、今回はMicrosoftの300人のグローバルセールス並びにマーケティングチームが、マンハッタンにある全てのWeWorkのオフィス、コミュニティ、そしてサービスを利用できるようになるというものらしい。パートナーシップの名称は、「City as a Campus」。
この新しいパートナーシップの一環として、MicrosoftがWeWorkコミュニティ内で新しい製品やサービスをテストすることも含まれている模様。
■実証実験(PoC)の新しいやり方
デジタルテクノロジーは、さまざまな変革をもたらします。
コマツのコムトラックスを代表するような「社会・産業のデジタル化」では、ICTは、情シスに加えて現場の事業部門で活用する時代を示唆します。
「顧客との関係のデジタル化」は、デジタルマーケティングに代表される顧客との新たな関係性がデジタルテクノロジーで可能となります。
そして「組織運営・働き方」では、単にモバイルで社外からアクセスといったレベルではなく、社内はもちろん社外のパートナーとの社内外混成チーム間の情報共有が要となります。
Microsoftの300人のグローバルセールス並びにマーケティングチームが、WeWorkのオフィス、コミュニティ、そしてサービスを利用することは同社の壮大な「組織運営・働き方」の実験とみることもできます。
さらに自らをモルモットに新しいクラウド商品を実証実験(Proof of Concept)しようとしているのかもしれません。
(つづく)