第19回 バカンス大国、フランスの夏休み

パリ郊外の家から200キロ高速をひた走り、ノルマンディーに住む弟をピックアップしたら、兄弟3人、交代で運転しながらいよいよ両親の住むオレオン島へ向かいます。

オレオン島は、パリから約500キロ離れた南西部のポワトー・シャラント地方にある小さな島です。日本人にはあまり馴染みがない場所ですが、夏はヨーロッパ中からバカンス客が訪れる一大リゾート地。

名物は、牡蠣やムール貝などの海の幸やメロン、コニャックです。最近は使わなくなった牡蠣小屋をカラフルにペイントして、アーティストのアトリエとして活用し、人気を博しています。

私の両親は2人とも生粋のパリジャン、リタイア後にオレオン島に移住しました。

オレオン島は、もともと子どもの時から毎年家族でバカンスに訪れていた場所。両親が森の中に100坪ほどの更地を購入して、夏になるとそこにテントを張って3週間キャンプ生活を送っていたのです。

両親は若くに結婚して子どもが4人もいたので当然貧しかったのですが、当時まだリゾート地としてブレイクする前のオレオン島の土地はとても安かったので思い切ってキャッシュで購入。そこで毎年バカンスを過ごせば、キャンプ場代やホテル代もかからないし、子どもが騒いでも気兼ねすることもないと考えた訳です。

子どもの頃、車にありったけの荷物を詰め込み、深夜にパリを出発。後ろ座席に寝かされて、朝目覚めると島に到着している毎年お馴染みのバカンス。

シャワーはペットボトルの水を日光で温めたものを頭からかぶるだけだし、毎日自炊が当たり前、テント設営や皿洗いや洗濯のお手伝いもしなくちゃいけないけど、不便さよりも自然の中にいる開放感で楽しくて仕方なかったのを憶えています。

残念ながらキャンプしていた土地は建築禁止だったので、両親はオレオン島の街中に小さなサマーハウスと倉庫が一緒になっている物件を購入し、DIYで倉庫を人が泊まれるように改築しました。

私のDIYの師匠というかルーツと言える人は父です。父の作品を挙げたらきりがありませんが、1階建ての家を2階建てに増築したり、地下のガレージをパーティールームにしたりスケールが大きいです。

具体的なテクニック学んだというよりは「その気になれば何でも自分で作れる」ということを教えてくれた人です。今でも自分のDIYの作品を父に見せるのは少しだけ緊張します。父は「リタイア後はのんびり釣りでする、DIYは程々にする」と言っていましたが、毎月DIY代がかかり過ぎていつも母に怒られているようです。(笑)


<両親の家>

今回のバカンスでは毎日何をしていたかというと・・・
朝は早起きして一人港のカフェでコーヒーを飲む→パン屋でバゲットを買う→皆と朝ごはんを食べておしゃべり→食前酒タイム→2時間かけてお昼ご飯→お昼寝したり、読書や海に行ったり→食前酒タイム→2時間かけて夕飯→寝る

毎日このサイクルの繰り返しです。レストランにも行かないし、観光地を訪れる訳でもない、ゆるーい時間を過ごします。

唯一の例外的に行くのを楽しみにしている場所はマルシェです。

マルシェとは市場のこと。日本にも市場はありますが、フランスの市場はもっと活気があって生活に密着しています。オレオン島では毎週日曜日に100店舗以上の市場が立ちます。そこで新鮮な野菜や生牡蠣を買ったり、地元の名産品をお土産に選ぶのが大好きです。

 

フランス人はバカンスのために働き、生きていると言われています。

日本で同じように長い休みを取るのは無理な話だけど、仕事や学校のことをキレイさっぱり忘れて過ごす時間は大人にもこどもにも必要なことですよね。

「また次の休みまでがんばろう」って強く思った夏の終わりでした。