皆さま、あけましておめでとうございます。本年もどうぞよろしくお願いいたします。

さて、年末年始といえば、例年、その年に買ったものの読まずに置いておいたいわゆる「積ん読」だけだった本を読む時間となることが多い。そのなかで面白かったものののうちのひとつが、昨年8月に出版された『Learn Better 頭の使い方が変わり、学びが深まる6つのステップ』(アーリック・ボーザー著、月谷真紀訳)という本だった。

著者は、小学校の頃、授業についていけず、試験はできず、成績はさんざんだったという。すでに幼稚園で周囲に追いつけずに同じ学年を2度やり、小学校では心理テストをいくつも受けさせられ、中学校では毎週数時間、特別支援学級にも通った。いわゆる学習困難児童だったのだ。

成長した著者は現在、米国先端政策研究所のシニアフェロー。ニューヨーク・タイムズ紙やワシントン・ポスト紙などに寄稿している他、あのビル&メリンダ・ゲイツ財団のアドバイザーも務めているという、非常に優秀な人物である。まさに著者こそが、「優秀な人物」が才能でなく、「どう学ぶか」によって生まれる好例といえるだろう。

となると、著者自身が、いかに学習困難から抜けただし、有能な人物になったのか、という経験が書かれている本かと思われるかもしれないが、そうではない。著者の体験をまじえつつも、最新の研究から明らかになった、エビデンスのある、効果的な学習法をしっかりと論じているのである。つまり誰にでも役に立つ、最新の知見に基づく効果的な学び方が書かれているのである。

当たり前のことだが、ものごとを学ぶに学び方を知る必要がある、しかし学校では勉強しなさいと言うばかりで、どう勉強すればもっとも効果的かという「勉強するスキル」は教えてくれない(「ノートに何度も書きなさい」といったスキルを教えてくれることはあるだろうが、それは効果的であるかは疑わしく、すなわちスキルになっていない作業である可能性は高い)。本書では学ぶ上での大前提である「効果のあるスキル」を教えてくれるわけだ。

表題にもある通り、本書では、その方法を6つのステップにわけて詳しく解説する。例えば最初は「価値を見出す」。人は学ぶ価値がないと思えば学ばない。当たり前のことだ。逆にもし無意識にでもその学びが自分の生活や人生と関連付けて考えることができるようになると、一気に学習効率が上がるという。例えば、統計学を学ぶとき、最初に統計学と自分の生活の関連性について短いエッセイを書いてもらうと、勉強のモチベーションも成績も上がるという。

ただ統計学に価値があると、教師が強く言うのでは効果がない。勉強する意味は自分で見つける必要があるのだ。上記の場合では、エッセイを書くうちに、自分で統計学の価値に気づく。そういった作業が大切なのである。

次のステップは目標の設定。特に初期には適切な目標と目的の設定が重要だという。そして次がようやくスキルの習得と研鑽、ということになる。まず学ぶ意味に気づき、適切な目標と目的を設定しなければ、技術の習得ははかどらないのだ。

さらに知識やスキルをもとに、自ら発展させるプロセス、さらにさまざまな手順を関連付けるプロセス、そして何度も振り返って再考するというプロセスと続く。知識の見直しや学習したことをもう一度批判的に考えてみたりすることで、はじめて学ぶということは完成するといえるのかもしれない。

先ほど、この本には「最新の知見に基づく効果的な学び方が書かれている」と書いたが、説明として少し正しくないかもしれない。6つのステップについて、それぞれ1章割いて論じてあるのだが、書かれているのは、ただ勉強ができるようになるための、浅薄な学びのテクニックではないからだ。本書は、やり方やスキルをエビデンスとともに紹介しつつ、結局は、「人が学ぶとはどういうことか」という深いテーマを論じているのである。

本書を読みながら、深く考え、あれこれ試行錯誤しつつ、さまざまに思考するという体験をした。それこそが「learn better」=よりよく学ぶということなのだろう。

『Learn Better――頭の使い方が変わり、学びが深まる6つのステップ』 英治出版/2000円