今回取り上げるのは、ロバート・ロプレスティの『休日はコーヒーショップで謎解きを』。書くにあたり、参考までにこの本のAmazonのレビューをちょっと覗いて見たら、少し残念なことになっていた。

でもそれには理由がある。

昨年に出た同じ著者の連作短編『日曜の午後はミステリ作家とお茶を』は、ミステリ作家シャンクスを主人公に、ユーモアあふれる軽妙なやりとりが楽しい連作ミステリだった。そして翌年に刊行されたのが本書なのだが、よく似たタイトルによく似た装丁で、「続編が出た!」と思って買った読者も多かったようなのだ。前作の主人公シャンクスは出てこず、作風もずいぶん違う。期待を裏切られた読者がAmazonレビューの星の数を減らした、というわけだ。

しかし、ちゃんと読めば、実に面白い。それぞれに味わいの違う、質の高い端正な短編が収められている。

冒頭「ローズヴィルのピザショップ」は、ビジネスから引退したというイタリア系アメリカ人ヴィンスが、片田舎にあるが味は確かなピザ・レストランを訪ねるところから始まる。ピザの味を気に入ったヴィンスがこの店の常連になってから、店とその常連たちに少しずつ変化が訪れる。マフィアかもしれない、という疑念を持ちつつ、ヴィンスを受け入れる町の人々と店主夫婦。しかし店はヴィンスをめぐって事件に巻き込まれる……。穏やかだが閉塞感もただようアメリカの田舎町の雰囲気が漂う作品だが、実は町の描写はない。最初から最後まで、店内の描写だけでこの地の人々が生きる世界を書き切ってしまう著者の力量に感服する。

「孤児列車」で大都市から農村部に児童養護施設の子どもたちが運ばれた史実から物語を紡いだという「列車の通り道」や、死刑囚や殺人犯にファンが付き、ときに結婚したりする現象に着目した「共犯」、人種暴動を扱った「消防士を撃つ」では、史実や事実から、見事なミステリ短編を作り上げている。これらの短編からも、アメリカのさまざまな土地の風土が行間から感じられ、アメリカの小説ならではの雰囲気がたまらない。

各短編のあとには、「著者よりひとこと」という著者による簡単な解説が収められているが、そこには事実からフィクションを作り上げていく著者の手法についても言及されている。なるほど、この作品はこんな事実に著者が着眼してゆえに生まれたのかーー。文章を書きたいという人にとっても示唆に富む内容だろう。

収められた9篇の作品のうち、特に秀逸だと感じたのは「2人の男、一挺の銃だ」。銃を持って立てこもった男が、人質にした男に、互いに憎み合う3人の男の物語を書けと命じる。なんとも不思議なストーリーだが、それがやがて結末と見事にリンクして思わず唸る。こちらも舞台は男が閉じこもった一部屋だけ。著者の技量が光る秀作だ。

さて、ここまで書いたところでふたたびAmazonレビューを見直すと、星5つのレビューが加わっていた。そうか、この作品の良さをちゃんとわかってくれる読者もいるんだ、とホッとしたが、こちらレビュアーは、今作は気に入ったが、前作イマイチだったようだ。うーん、主人公シャンクスが活躍する前作も面白いのに……。

だが、こんなふうにさまざまな評価が出るのは、ロバート・ロプレスティがさまざまなタイプの短編を自在に書ける作家だということだろう。一冊で多様な短編を楽しめる本書。まさにタイトルどおり、休日にカフェで読むのに最適な、短編ミステリを味わう喜びに溢れた一冊である。

『休日はコーヒーショップで謎解きを』(創元推理文庫/1080円+税)