John Coltrane 『Acknowledgement』 (Coltrane) 1965Impulse!

北米大陸にて勃興したジャズは、第二次大戦後、急速に先鋭化し、ビバップを嚆矢としてモダンジャズの隆盛を産んだ。モダンジャズは、約20年弱の間、様々な進化を遂げた後、急速に衰えた。その没落は、ロックのブレイクと期を一にしている。

ジャズとロックは、正反対な気質を持っているといえる。狂騒的なロックとクールなジャズ。
米国黒人が主導したジャズと英国白人が主導したロック。スノッブなほど知的なジャズと、下世話にセクシャルなロック。

コルトレーンは、モダンジャズの時代の全域において活躍し続けた、最も重要なサックスプレイヤーだが、その晩年に世に問うたのが、アルバム「A Love Supreme」だった。

ここには、大衆への迎合は全く存在しない。空気など読んでいないのだ。マーケティング志向によるお約束テンプレートを纏いがちなロックとは正反対の屹立した姿勢がここにある。

あくまで硬質に、精緻に、コルトレーンの出したい音だけが、過不足なく鳴っている。リスナーの事情など知ったことではなく、多分この音を出さないと死んでしまう局面に瀕しているのだろう。

もしかしたら、1960年代こそが、人類文明の頂点であり、緩やかな衰亡はもはや50年も経過してしまったのかもしれない。