『地雷グリコ』

時間ができる年末の楽しみはミステリーを読むことや数独などのパズルを解くこと。脳みそを自由に動かして楽しむこととは、案外仕事のないこの時期にしかできなかったりする。
今年も『このミステリーがすごい!』や「週刊文春ミステリーベスト10」など、今年出たミステリー作品のランキングが発表されているので、その中から選んで読むのもいいものだが、上記のようなランキングの対象とはならない、11月末に出版されたばかりの『地雷グリコ』が実に秀逸だった。

主人公の女子高生、射守矢真兎(いもりや・まと)がクラスの命運をかけて生徒会に勝負を挑むーーと書いただけではなんだかまったくわからないだろう。真兎が所属する1年四組は、学園祭でカレー屋を開こうとしている。匂いが強いためにカレー店は屋上でしか開けないのだが、その屋上は、文化祭に出店する各団体が狙う超人気スポットで、毎年、この場所を争って希望団体が参加するトーナメントが行われるのだ。勝負事に強い真兎は、選手に抜擢されて勝ち上がり、クラスのカレー屋の模擬店開催を賭けて、決勝で二年連続優勝を誇る三年生椚迅人(くぬぎ・はやと)と対決する、というのが第一話である。

勝敗を決めるのはオリジナルのゲームなのだが、これが見事だ。表題にもなっている「地雷グリコ」は、じゃんけんをしてグーが出たら「グ・リ・コ」と言いながら、3段階段をのぼる、おなじみの「グリコ」をベースに、事前にそれぞれが三ヵ所「地雷」を仕掛けることができ、相手が地雷を踏んだら10段下がるというルールが加えられたもの。

階段数は全部で46段。「46段に対し、グリコで3段、チヨコレートで6段、地雷を踏んだらマイナス10段、勝つにはどこに地雷を置くか?」と、読み手のあたまもぐるぐる回り出すはずだ。私の年末の楽しみであるミステリーとパズルを見事に兼ねていて2倍楽しめる。

他にも「坊主衰弱」(百人一首を使った神経衰弱)や「だるまさんがかぞえた」(ルールはぜひ本書を読んでみて!)などのゲームに真兎が挑む5篇が収められる。読み終わったらお正月休みに家族や友達と本書に登場したゲームをしたくなるはずだ。
『地雷グリコ』青崎有吾著 KADOKAWA