第132回 年賀状のジレンマ

昨年の暮れのこと。

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一.毎年のことながら、師走は慌ただしい

11月下旬あたりから、師走の序章のようにクリスマス音楽が鳴り出し、それに呼応するように年末ジャンボ宝くじが売り出され、さらにハロウィンといっしょに黒船でやってきたブラックフライデーが大衆を煽る。
その勢いで12月に突入するとフルスロットル全開で師走が走り出す(なんか言葉が無茶苦茶だ)。
積年の恨みと鬱憤を晴らすかのように街には人が溢れ出し、インバウンドもリバウンドして、年忘れ恒例の忘年会も飲み放題。

良い子のいる家庭では12月1日からアドベントカレンダーで忙しい。
アドベントカレンダーは1日からクリスマスまでのカレンダーで、日付の部分が扉付きの箱になっていて、毎日、扉を開くとお菓子やオーナメントなどが出てくる趣向だ。
良い子はその一日一個のお菓子では我慢できずに、一度に一週間分も開けてしまったりする(悪い子だ)。
オトナにも、宝飾品やワインのハーフボトルが出てくるアドベントカレンダーもあるので忙しい。
オトナだって、一日ワインのハーフボトル一本では我慢できない(悪いオトナだ)。

おせちアドベントカレンダーなんて変わり種もあるらしい。
毎日扉を開くと、黒豆や数の子なんかが出てきて、大晦日にはすべてがうまく重箱に収まって、おせち料理が完成するらしい。
って、もうこれはクリスマスに関係ないです・・・。

とにかく師走は慌ただしい。ふと気がつくとあっと言う間に年の瀬だ。
そして、あと数日で新年を迎えてしまうのに年賀状の準備ができていない。
毎年、余裕を持ってやろうと思ってるのに、師走のせいで何もできないのだ(準備できない理由になってないです・・・)。

二.2024年はタツ年だ

年賀状には干支がつきものだ(憑きものではない)。
2024年は十二支のうちで唯一架空の動物、タツ年だ。
干支の漢字は「辰」が一般的だが、年賀状では「竜」や「龍」もよく見かける。
「辰」と「竜」と「龍」、どれが正解なのか。

国語辞典的には「辰」が正解らしい。
「辰」の項では、以下のように説明されている。
「十二支の第5。動物では竜に当てる。時刻では午前8時、または午前7時から9時の間。方角では東南東。」
「竜」は「想像上の動物」という記載があるが、干支関連の説明はない。
そして、「龍」は国語辞典の見出し語にないし、記載もない。

個人的な感覚で言うなら、「龍」が一番強そうだ。
右のつくりの部分が、ゴジラの背中のゴツゴツした突起みたいで、今にも光を放って、口から放射熱線を発射しそうだ。
「竜」は古代の巨大爬虫類を連想させる(恐竜・・・)。
「辰」は柔な感じだ(唇に似てるからか・・・)。

って、こんなどうでもいいことを考えているから、年賀状の準備が進まないのだ。
しかし、年賀状の準備が進まない理由は他にもあるのだ。

三.年賀状のジレンマ

毎年、年賀状は不思議な動きをする。
例えば、ある年、自分が年賀状を出した相手からの年賀状が元旦に来ない。
元旦に届いた年賀状の相手には、自分が送っていない。

その翌年、前年出しそびれていて元旦に届いた相手に年賀状を送ると、その相手からの年賀状が元旦には来ない。
そして、前年の元旦に届かなかった相手から年賀状が届くので、慌てて元旦に年賀状を手配する羽目になる。

また、その翌年は・・・とスレ違いは延々と続き、地味に毎年対応に悩むこととなる。

さらに近年は「年賀状じまい」という動きが広がりつつある。
自分が年賀状を送った相手から年賀状が届いてホッとするのも束の間、その文面には「これで年賀状による年始のご挨拶を最後にさせていただきます」とあるのだ。
これはまずい。
こちらは、すでに無防備に「あけおめ。ことよろ」なんて年賀状を送付済みだ。

来年はこの相手から年賀状が来ないことが確定済みなのに、自分は送るべきなのか、それともこちらは最後の挨拶もしないで黙って止めてしまってもいいのか。
大いに悩むことになる。

理想としては、事前に相手の「年賀状じまい」の可能性を察知して、自分も「年賀状じまい」の文面を書くことができればいいのだ。
それで、自分も相手も同時に「年賀状じまい」ができたときはいいが、こちらの「年賀状じまい」に対して相手から普通に年賀状が来たときは、なんとなくバツが悪い。

このモヤッとした状況をまとめると、こういうことだ。

1.自分「年賀状」、相手「年賀状じまい」・・・自分の負け
2.自分「年賀状じまい」、相手「年賀状」・・・自分の負け
3.自分「年賀状じまい」、相手「年賀状じまい」・・・引き分け
4.自分「年賀状」、相手「年賀状」・・・引き分け

つまり、この年賀状ゲーム(?)には、勝ちはない。
勝ちはないが、負けたくはない。
引き分けを目指して相手の動きを探るしかないのだ。
と言いつつ、よくよく考えてみると、この問題は永年、年賀状のみで繋がっている相手との間でしか発生しないのだ。
つまり、相手の動きは年賀状でしか探りようがない。

相手の動きを想像している(負け試合にならないようにしている)うちに年賀状の準備はどんどん遅れていく。

さらに予想外のことに、この年賀状ゲームにひとり勝ちしていたと思われていた郵便関係者が、このゲームに水を差すかのように郵便料金値上げという策を打ち出してきた。
実は彼らも(コスト増で)負け続けていたのだろうか。
2024年の半ばには、はがきが63円から85円に35%もアップするようだ。

はがきの値上げは残念だが、これにより年賀状ゲームの動向が見極めやすくなるかもしれない。
(もっともらしいこと書いてるけど、「年賀状ゲーム」って、何なんだ?)

四.大晦日のドップラー効果

最近は除夜の鐘の音に対して、騒音の苦情がくるらしく、中止を余儀なくされる寺社仏閣があるらしい。
慌ただしい師走から落ち着いた新年への橋渡しとなる大晦日の様子も変わらざるを得ないようだ。

あるITメーカーがサイレンサー付き除夜の鐘を開発したという噂を聞いた。
鐘を突いても音はしないが、Bluetoothのイヤホンに対応しているらしい。
さらにノイズキャンセル機能搭載のイヤホンなら、雑音なしのピュアな除夜の鐘で煩悩を吹き飛ばせるらしい。
といったデタラメな妄想(煩悩)をふくらませているうちに、2024年を迎えてしまいました。

もちろん、年賀状はいまだに準備中です。
今年もよろしくお願いいたします。

※「大晦日のドップラー効果」についての説明はまた今度・・・(なんのこっちゃ)