第1回 ひとりでお店を作る

【パスカルさんのご紹介】

家具を自作したり、ウッドデッキを自分で施工したりと日本でも注目のDIY。
今回よりスタートする、フランス出身、日本在住のパスカルさんのDIYは、ちょっとした日曜大工の域を超えてます。

日本の職人が感心するようなDIYを、ひとりで全部やっちゃいます。

そんなパスカルさんのフランス仕込みの本格的なDIYコラムを、隔月でお届けします。

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23年前、フランス海軍を辞めた私は、次の人生を探して世界中を貧乏旅行中でした。

そんなとき、旅行先のカリブの海辺のバーで知り合ったフランス人に、「日本でパン屋をやらないか?」と、いきなり誘われたのです。

それまで日本には行ったことがありませんでしたが、芸者の本を読んだことがあり、不思議の国ニッポンに運命的なものを感じた私は来日を決意。

まさかこんなに日本に長く暮らすことになるとは思いませんでした。

人生とは何があるかわからないからおもしろいものです。

アフリカ、アジア、ヨーロッパ、どこに住んでも私が一番大切にしているのは、居心地のよい場所に住む、ということです。

それは、高級なマンションに住むとか高い家具を買うということではなく、6畳一間でも、工夫して自分のお気に入りの空間にするということ。
ゴージャスなことは一部のリッチな人におまかせします(笑)

フランス人の私の父は、家の階段、テラス、机、あらゆるものを手作りしていました。

簡単に物を買い与えてはくれなくても、工夫しておもちゃを手作りしてくれるような人でした。

そして、私も自然と手伝いながら大工仕事を覚えていったのです。

私の家庭が特殊なのではなく、フランスはDIY大国です。
たとえ賃貸住宅でも、壁紙を張替えたり、部屋をオリジナルにすることはごく自然なことですし、中古住宅を自分でリフォームする人も多いのです。

私にとってDIYは、自分の人生をより良く、楽しく生きるための道具と言えます。

さて、ご縁あってこのメルマガでDIYのコラムを始めるにあたり、第一弾は何を書こうか悩みましたが、まずは20年のDIY歴の中で最も大規模で気合の入った工事についてお話したいと思います。

1996年夏、パン職人だった私は独立開業しようと考えていました。

たまたま知り合いのラーメン屋さんが閉店することになり、物件を見に行くことに。

そこは、住宅地の中の10坪の広さのお店でした。

通常パン屋は最低でも13坪は必要と言われていますが、まあ何とかなるでしょう。

家賃の安さと大家さんの「好きに直してよい」という言葉が決め手となり、開業を決意。

パン屋を開業するにはオーブン、ミキサーなど高額な機械が必要です。
全て中古品でまかなったとしても内装代はほとんど残りません。

でも自分の店なのだから、豪華でなくともこだわった内装にしたい。
ということで、2ヶ月の工事期間を設けて、自分ひとりでお店を作る決意をしたのです。

しかし、それまで自宅の工事の経験はあっても、商売としてのお店の内装工事の経験などもちろんありません。

契約した日から日割りで家賃は発生しているし、自宅と違い失敗は許されません。不安な気持ちが押し寄せてきます。

とは言っても、頭で考えるよりまず行動!というタイプの性格なので、プレッシャーを押しのけ工事をスタートします。

まず最初にやらなければならないのは、ラーメン屋さんの内装を撤去することでした。

写真は当時のラーメン店の厨房の様子です。

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この後、今回の工事最大の困難が待っているのです。

つづく

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