第7回 人生の第二部

ずっと先だと思っていた、人生の第二部がいきなりやって来たらどうしますか?

去年の3月、20年近く経営してきたパン屋を病気で閉めることになりました。
健康には自信があり、風邪で仕事を休んだこともありませんでした。
病気の話は好きではないので詳しくは書きませんが、激務のパン屋仕事にドクターストップがかかり閉店を決意したのです。

人生何が起こるかわからないものです。

パン屋を開店する時も閉店する時も、決めたら即行動です。
馴染みのお客さんや大家さんの意向もあり、パン屋を誰かにそのまま引き継いで欲しかったのですがなかなか上手くいきません。

フランスでは、個人店舗でも、オーナーが引退する時はお店の設備や権利を売却して退職金とするのが一般的です。
日本も居抜き店舗はありますが、家族以外でお店を引き継ぐのは難しいのが実情です。

自ら工事して作った内装だし、古いけれど設備もあるのだから、無料でも引き継いでくれる人がいればよかったのですが、結局見つからずお店をスケルトンにして引き渡すことになりました。

お店を作るのは楽しい作業ですが、閉めるのはツライ。
さすがに撤去工事は全てプロにおまかせしました。

しばらくは治療に専念しましたが、体調が戻ってくると人生の第二部に何をするか考えなくてはなりません。

まず考えたのは、自宅でできる商売です。この先何が起こるかわからないし、お店を借りたり工事したり、初期費用がかかるのは勘弁です。

自宅なら家賃ゼロだし、リスク無し!と簡単に考えていたのですが、話が具体的に進むと必ず問題にぶつかります。

例えばカフェをやるなら、保健所の許可を取るためにお客さん用のトイレや厨房を作る義務があります。

いっそのこと、二階にキッチン作って生活スペースにして、一階をカフェにする大胆な案もありましたが、水場を二階に作るって大変ですよね?いきなり生活スペースが半分になるのもツライ。カフェ案は却下。

協議の末、自宅の敷地内に小屋を作り、クッキーを焼いて卸売りと直売もするという案に落ち着き、計画がスタートします。

小屋作りなら任せろ!と言ってみたものの、よくよく考えると小屋作りの経験は庭の小さな物置小屋だけです。

今回は、クッキー作りに巨大な業務用オーブンを入れる予定があるので基礎は頑丈にする必要があるし、電気や水道も通さなくてはなりません。

20160602

オーブンの重さは1トン。木枠に生コンを流しこんで基礎を作ります。

20160601

普段は孤軍奮闘ですが、この作業には助っ人外国人を投入。近所に住むフランス人の友達にヘルプをお願いしておきました。

量的に馴染みのセメント屋さんに生コンをミキサー車で運んでもらうのが正解ですが、助っ人外国人の予定に合わせたらセメント屋さんは定休日。
仕方なく 袋のセメントをミキサーで手作りします。

ところが見積もった量では全然足りない!やはりプロに生コンを頼めばよかったと後悔しても後の祭。

結局、準備していた量の3倍、ミキサーは5回も多く回す大誤算。

セメント仕事は始めたら固まっちゃうからノンストップです。朝から休憩もできずに8時間ひたすら働き、いつもの軽口もだんだん出なくなり…50過ぎのフランス人二人は、セメントまみれボロボロになりました。

 

最難関の基礎工事の次は、角材で骨組みを作ります。
図面はなくても自分のイメージを形にしていく、この工程は大好きなのでサクサク進みます。

生まれ変わったら大工さんになりたいくらい。

20160604

オーブンが高かった分、窓や流し台はリサイクル品を利用して節約しました。

大苦戦した基礎はそのままコンクリート床になっているので、水を流して掃除できるのが便利です。

最後に、ドアを作ります。

日本では既成のドアを買うと、とんでもなく高い!しかも可愛くないので何度か作ったことがあります。

木の皮をわざと残したりして、山小屋風の味があるドアに仕上がりました。
取っ手はフランスから送ってもらったアイアンのアンティークです。

20160603

20年前にパン屋を作った時と同じくクッキー小屋もあえて未完成にして、これから少しずつ手を加えていこうと思っています。

こんなことを書くとに怒られそうですが、正直な話パンとかクッキー作りより、お店作りの方が好きなので、楽しみはとっておきたいんです。