第2回 オープンソースの展示会は全然オープンじゃない!!

本題の前に、前回みなさんにお願いしたアンケート結果に少し触れたいと思います。
アンケートの結果URLはメルマガの最後に記載しておきますので、興味のある方は後程そちらを参照ください。

読者の方は情報通信業(78.26%)の技術の方が圧倒的に多く、オープンソースに関する認知度も思った以上に高い、という結果になりました。

ユーザーとして使用・・・約60%
システム構築・・・約30%
開発/カスタマイズ・・・約30%
販売・・・約30%

また、メルマガの記事として期待されているものについて、興味の度合いで、1(興味なし)から5(興味あり)まで点数つけてもらったのですが、4と5の合計で見ると、

[オープンソースで商売する時の注意点] 70%
[筆者の自己紹介] 58%
[ビジネス利用で役立つオープンソースの紹介と事例] 56%
[オープンソースのプロジェクトを公開している企業や有志団体へのインタビュー] 41%

という順で、

興味度が最も強い「5」だけで見ると、

[ビジネス利用で役立つオープンソースの紹介と事例] 52%
[オープンソースで商売する時の注意点] 44%
[オープンソースのプロジェクトを公開している企業や有志団体へのインタビュー]37%
[筆者の自己紹介] 33%

という結果でした。

個人的には、[オープンソースのプロジェクトを公開している企業や有志団体へのインタビュー]が、他でもあまりやっていない企画なので、人気あるかなとおもっていたのですが実際はそうではなかったので驚きました。

「ビジネスで役立つ」と「商売の注意点」が興味度が高く、オープンソースを趣味としてというよりもビジネスで関わろうという方が多いと思いました。

皆さまのご協力、ありがとうございました。
今後の記事づくりの参考にさせて頂きます。

さて、本題の「第2回 オープンソースの展示会は全然オープンじゃない!!」という話。

たくさんあるオープンソース系の展示会の中から、今回はオープンソースカンファレンスというものをご紹介させて頂きます。(以下、OSC)

OSCは、北は北海道から南は沖縄まで、東京、神奈川、名古屋、京都、広島・・・と、各都道府県をまたいで毎月のように開催されています。

公式サイトにて過去の来場者数が発表されていて、それによると最も来場者が多かったのは去年3月に東京、早稲田大学で開催された時で、来場者数は2100人、出展者数が84となっています。

ちなみに、2011年に東京ビックサイトで行われたJapan IT Weekの来場者数は3日間で約100,000人、出展者数 1560ですから、オープンソースカンファレンスはIT業界でおなじみの展示会に比べて、比較的規模が小さい展示会ということがわかります。

規模が小さいというだけでなく、1出展者(コミュニティ)に対する来場者の割合をみてみると、その割合が少ないという特徴があります。

OSC 約25人
ビックサイト 約64人
サンシャイン 約53人

2012年今年の岩手OSCは、出展コミュニティ数21に対して来場者100人。
実に、出展コミュニティ1に対して来場者5人という割合になります。

そんなOSCへの参加する醍醐味について、自分なりにランキングしてみました。

まず、第3位はグッズ収集です。
会場では、独自のキャラクターを作成してグッズを配布しています。

巷では、地方ごとにゆるキャラを作成して町おこしに利用するのがブームになっていますが、オープンソース業界にもこのブームが来ています。

キャラグッズの半数はかわいい動物系。
FireFoxのきつねやLinuxのペンギンのような重鎮オープンソースがこのケースに該当します。

残りの半数は新興オープンソース系で、萌え系のキャラクター。
例えば、「ドロシーちゃん」と「ビアンカちゃん」。
ドイツからの双子の留学生という設定まで用意されているこちらは、DRBDというHAクラスタリングのオープンソースの応援キャラクター。

クラスタリングだから双子という設定らしいです。
http://linux-ha.sourceforge.jp/wp/archives/954

第2位はセミナー。全て無料で参加できるし、最先端の情報や、ウェブ上や紙面では公開はできない、現地でしか聞けない情報にも出会えるので、とてもお得です。

そして何と言っても、第1位はライトニングトークでしょう。
これは、1人あたり5分のショートプレゼンテーションで、最終日の最後などに最も広い会場にて開催されます。

来場者も一番多い、OSCのメインイベントです。

セミナーは比較的真面目な話題、ライトニングトークは限られた5分間で、魂の叫びを聞けます。別にコミュニティに参加していなくても、オープンソースに関わっていなくてもエントリーできるみたいです。
短時間で複数の変人を見ることができます。

では、OSCの雰囲気はどういったものなのでしょう。
初めてカンファレンス会場に入った時にまず最初に感じるのは異様な雰囲気、アウェイ感です。

まず「出展社の配置」による妙があります。
東京で行われるOSCは開催場所が学校の校舎内なので、通常のビジネス展示会よりも学校の文化祭的な印象を強く受けます。

無料出展しているボランティアベースのコミュニティや個人の展示場所は、学校の廊下。通路の両脇に配置された細長い長机に横並びに配置され、まるでお祭りの屋台のような雰囲気です。

一方、有料スポンサー企業は教室の中に配置されます。
教室内のスポンサー企業の顔触れは、Google、マイクロソフト、Yahooをはじめとした、名前の通ったIT企業ばかりですので、挙動不審なギークばかりが集う廊下と、扉をはさんでこの教室の中と外の空気の違いに趣深さを感じます。

また、ビックサイトやサンシャインで行われるB to BのIT展示会などに行くとアンケートや名刺を収集するためにキャンペーンガールが配置されていたり、時にうっとおしいと思うぐらい呼び込みにチラシを渡されたり、展示ブースに集客するために声をかけられますが、そのようなアクティブな営業的文化は一切ありません。

かといって、「シーン・・・」としているわけではなく、出展者の方々はわりと和気藹々とお話しをされています。

出展側は、プログラマーをはじめとしたエンジニアがほとんど。
そして、それを取り囲むのは同じオープンソースのコミュニティに所属している身内です。

出展者と来場者は知り合い同士、同じコミュニティの人間だったりすることが多いので、身内同士の会話で盛り上がっている光景がところどころで見られ、アウェイ感がハンパではありません。

顔見知りじゃない人が展示ブースの前に行っても、声なんてかけてくれません。
こちらに視線もあわせません。

新規訪問者にとってさらに悪いことに、来場者が少ない展示会で出展回数を重ねていくと、違うオープンソースの出展者同士がお互い顔見知りになり、出展者、常連同士の繋がりが強化され、一見さんにはより参加しづらい雰囲気が作られていくのです。

出展コミュニティ21団体、参加者100名の合計121名だったら、そのうちの9割は出展者の元からの知り合いで、残りの1割が新参者で迷い込んでしまった人。

でもこちらから話かけて、がんばって近づけばいい人ばかりです。
ただ、空気は読んでくれません。
相手のリテラシーなんか気にせず、専門用語やそのオープンソースに携わっていなければ知らないよ!という言葉を駆使されるので、内容の半分もわからない、ということも。

このように、閉鎖的な雰囲気が自然とつくられてしまっているOSC。
ITやエンジニア、プログラミングとは無縁の方が展示会に迷い込んでしまうと、オープンソースはマニアックだという認識を与える宣伝効果が生まれ、カンファレンスをすればするほど、出展すればするほどオープンなイメージから遠ざかっていってしまうのではないかと思ってしまいます。

実際、私の周りのIT営業をしている方からは、「オープンソースのコミュニティってビジネスとは関係ないプログラマーの同好会でしょ?」という意見をよく耳にします。

OSCの開催目的が、「オープンソースを広める」ということだとしたら、閉鎖的な雰囲気の現状では、その目的にはマッチしないかもしれません。

しかし、本来は「オープンソースの今を伝える」というコンセプトなので、オープンソースとそれをとりまくコミュニティの実体が凝縮されたこの展示会に足を運び、見て感じとるのは、有意義でしょう。

技術者主体の祭典だから、技術者以外が入りづらいと感じるでしょうが、情報は最先端のものが多いのです。だからこそ、技術以外の視点を持つ方が、ビジネスの種となる情報収集のために飛び込んで行くことをオススメします。

是非機会をもうけて、オープンソースカンファレンスに足を運び、オープンソースの最先端をご自身で体験してみてください。

(あくまで個人的な感想で、誇張表現があるかもしれませんがご容赦を・・・)

冒頭のアンケート結果詳細はこちらです。↓
http://limesurvey.opensourcedemo.biz/statistics_user.php?sid=47384

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