第9回 大容量ファイルを相手に送る仕組みをOSSで構築

前回、ファイルを共有したり同期するDropBoxのようなストレージシステムについて書かせて頂きましたが、今回は引き続き大容量のファイルをやりとりするためのオープンソースをご紹介したいと思います。

容量の大きいファイルを相手に渡したいけれど、メールの添付だとメールサーバーで容量制限されているため送れない。

そんなときに便利な「ファイル転送」システムです。

利用シーンとしては、メールでは送れない大きな容量のファイルをブラウザ経由でアップロードし、送りたい相手のメールアドレスと自分のメールアドレスを入力すると、相手にこのファイルのダウンロード用URLが書いてあるメールが送信されるという仕組み。

この手のシステムは、無料サービスとしても様々な企業から提供されてます。

※例
filestorage
WebFile
おくりん坊
データ便
宅ふぁいる便

それぞれのサービスの違いとして、

・無料アップロードできるファイルのサイズ(100MB~500MB)
・ファイルがダウンロードできる期間(3日~7日)
・ダウンロード時にパスワードを設定できるかどうか
・ダウンロード回数

などがあります。

これらのサービスは無料で使える一方で、有料の上位機能版である、いわゆるフリーミアムモデルと呼ばれるものがあります。

また、ファイルのアップロード/ダウンロード時に、アクセスするページやメール自体に広告が記載されており、有料版での売上収入や広告収入を得るというビジネスモデルにもなっています。

さらに、サービス提供によって会社自体の知名度向上効果も期待できます。

表示される広告はほとんどがチラシ等のネット印刷サービスです。
これは、イラストレータ等で作成したサイズの大きい広告入稿データをやりとりするデザイナーと依頼主との間でデータの送受信が行われることが多いため広告のターゲットとなっているのでしょう。

とても便利なサービスではありますが、自社と関係ないドメイン上やサーバー上に重要データを置くことが許されないセキュリティポリシーを持つ企業では利用できなかったり、送られた相手側に、この会社は機密データの取り扱いポリシーが守られていないのではという不信感を持たれてしまう、というリスクが考えられます。

たしかに利用規約をよく見てみると、どのようなことが起きても一切責任は負いませんよと、いったことが書いてあります。

ファイルサイズの制限や広告表示は、有料版を利用することで回避できるものもあります。

しかし、自社で利用しているサーバーのリソースが余っているのであれば、自社で用意してしまったほうが、コスト、自由度、見栄えなど、あらゆる面で優れているでしょう。

そこで、上記のようなサービスをオープンソースで構築できてしまう「OpenUpload」というものをご紹介します。

2010年11月以降新しいリリースがないのは、開発が停滞しているわけではなくほぼ完成形だから!と思わせるぐらい完成度は高く、管理者機能として以下の機能を実装しています。

・日本語を含む7か国の多言語対応
・アップロードするファイルの種類(mimetypes)の限定
・アップロードしたファイルへアクセスする際のパスワード設定の有無
・キャプチャによるボット対策
・アップロードするファイルサイズの制限設定
・有効期限設定
・圧縮設定

これに加えて、IPアドレスによるアクセス制御や、誰がいつ、どのようなアクションを行ったか、という監査ログ機能までついているのです。

今回はセキュリティ上の理由で管理者側の機能は公開できませんが、ファイルをアップロードし送信先メールを指定すると以下のメールが送信されますので是非お試しください。

下記URLから実際にサーバーへアクセスして、ファイルのダウンロードが可能です。

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あなた宛にファイルがアップロードされたので、通知されています。

説明:コメント:ギークフィードミャンマー視察レポート(見本)

パスワード: demo

ユーザメッセージ:
資料請求頂きありがとうございます。 レポートの見本をお送りいたします。

下記リンクからファイルをダウンロードできます。
http://openupload.opensourcedemo.biz/?action=d&id=BUbU0EBuAj

———–

実は、同様の目的で企業向けファイル送信サービスがパッケージとして市販されていて、その価格はライセンス費用200万~、導入費用50万~という価格設定となっています。

これだけの市場価値があるものなので、もちろん自社でも利用しております。

オープンソースプロジェクトは様々なものが氾濫し、完成度の高いもの、全く動作しないもの、更新が全くないもの、有名なもの、無名なものがまさに玉石混淆です。

そんな中から利用価値の高いものを探し出した時の喜びは、次々とインストールと試用を繰り返す苦労より大きい!!と感じるのであります。

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