第12回 オープンソースを扱うにあたり「ライセンス」以外で気に留めるべきこと
オープンソースというと、GPLをはじめとしたそのソフトウェアやソースのライセンスが特徴的であるため、あまりに自由に使ってしまい、ライセンス以外の権利や義務について考えが及ばないことでリスクが生じることがあります。
今回のテーマは、オープンソースを使うにあたって、GPLライセンス以外で留意すべき権利関係についてです。
■商標
商標に関する正確な定義は商標法に記載されていますが、身近なところで平たく言うと、オープンソースで使われているプロジェクトや製品の「名前」、「ロゴ」などが挙げられます。
この「名前」や「ロゴ」の使用は、当然そのオープンソースの「ライセンス」とは全く別で定義されるものです。
つまり、ソースを公開していて自由につかっていいよというライセンスでも「名前」や「ロゴ」を使う場合には別で定義されているルールに従わなければいけませんよ、ということです。
そして、ここで使用している「オープンソース」という単語も、実は「Open Source Group Japan」によって、商標として登録(第4553488号)されています。
そして、この商標を管理している団体によって、以下のような制限がされています。
”オープンソース/Open Sourceに関する商品やサービスを販売するなどの際、 オープンソース/Open Sourceが登録商標であることを示す必要は一切ありません。
また、オープンソース/Open Sourceという言葉の利用に関して、我々が利用料を徴収したり、他に何らかの制限を加えるといったことは一切行いません。
Open Source Group Japanでは、 オープンソース/Open Source商標を誰もが自由に使うことを認めます。
ただし、我々はOSIの定める「オープンソースの定義」に沿う形で オープンソースという言葉が利用されることを希望しています。”
引用元: http://www.opensource.gr.jp/osg/trademark.html
かなりゆるい制限なので、権利を意識することなく気軽に「オープンソース」と書くことができるんですね。
(現在は、Sourceforge.JPを運営しているOSDN株式会社が商標の権利者になっています。)
では、他のプロジェクトの場合はどうかというと、例えばウェブサーバーのApacheの場合は以下URLにロゴ使用のガイドラインが記載されています。
http://www.apache.org/foundation/marks/
ガイドラインに従えば許可を得ずとも利用が可能なケースもありますし、必ず許可を得なければいけないケースもあります。
従って、この商標を使用して、ガイドラインを守っている会社のウェブサイトには以下のように、商品の出所を表示する記載がきちんとされています。
「Apache、Tomcat、Apache James、Luceneは、Apache Software Foundationの登録商標または商標です。」
「Apache Hadoop、Apache Subversion、Hadoop、HDFS、HBase、Hive、Mahout、Pigは、Apache Software Foundationの米国およびその他の国における登録商標または商標です。」
提案書やウェブサイトにも必要に応じて商標の記載をし、コンプライアンスを守るしっかりした会社であることをアピールしましょう。
■受託開発時の請負契約や著作権
例えばオープンソースプロダクトの一機能をモジュールという形で受託開発した場合、受託開発したプログラムを顧客に断りもなく請負側がGPLで公開しようとして揉めたという話を実際に聞いたことがあります。
この場合どちらの言い分が正しいのかという話になると、法律の専門家の領域になるのでここでは言及できませんが、オープンソースではない開発と同様に、
1.開発物に対してGPLが及ぶ実装/構成かどうか
2.開発したソフトウェアの著作権の所在
上記を契約時に明確にすることが依頼する側、される側双方にとって理想でしょう。
■特許
「利用を図り産業の発達に寄与する」という目的がオープンソースと特許では似ているのかもしれません。
しかし、”権利を持っている人間だけが行使できる”特許と、”権利を解放しているオープンソース”では、そのための実現手段はある意味対極とも言えます。
使用するオープンソースや自分が開発したものをオープンソースで公開する場合、第三者の特許を侵害していないか、事前にしっかり確認することが理想です。
しかし、我々のような中小ソフトウェア会社にとっては難しいのが現実です。
2013年3月28日、グーグルが、保有している特許の一部をオープンソースで利用されている限り、ユーザー、配布者、開発者を提訴しないという制約を「Open Patent Non-Assertion Pledge(オープン特許非係争誓約)」として発表しています。
米IBM等も同様の誓約を行っているようで、今後この動きによって企業はオープンソースに対して特許の提訴をすると非難されたり、社会的イメージ低下を恐れたりといった理由から、容易に侵害を主張しにくくなるという牽制効果が生まれるのではないかと思っています。
以上、オープンソースを扱うにあたり「ライセンス」以外で気に留めるべきことでした。
お客様との会話の中で、開発以外の知識の引き出しにして頂ければと思います。
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