第17回 オフィスを引っ越したらオープンソースの開発会社とご近所になった。~XOOPS cube開発者へのインタビュー~

この9月に、事務所を茗荷谷から秋葉原に移転しました。

すると、「ご近所になりますね」とか、「私の会社ももうすぐ秋葉原に移転するんですよ」という反応をたくさんいただきました。

そんな中で、オープンソースの「XOOPS Cube」(ズープスキューブ)のコミュニティを通じて何度かお会いしていた、「XOOPS Cube」主要開発メンバー氷川 霧霞さんの会社もたまたま同じ週にご近所で支社をオープン。

私の事務所から徒歩5-6分のご近所だったので、オフィスに遊びにきてくれました。

せっかくなので「XOOPS Cube」や、オープンソースのビジネスについてインタビューしてみましょう!

「XOOPS Cube」に関しては、メルマガのバックナンバー

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で、名前は何度か登場しているオープンソースなのですが、改めて説明します。

・ウェブサイト上から直接そのサイトの記事の投稿や編集が可能な「CMS」というジャンルのオープンソース。

・他のCMSにはWordPress、Drupal、Joomla!、Concrete5などがある。

・2005年から人気が下落気味。
全世界では2005年、日本では2008年まで最も人気のあるCMSだったが、それ以降はのwordpressに追い抜かれている。

・日本人によって最も活発に開発が行われている。

・ブログサイト構築目的をベースとしたものではなく、ポータルサイト構築目的をベースとしたものであり、例えば掲示板、SNS、ECサイトなど多目的なモジュールが用意されている。

と、このような特徴があります。

それでは、氷川さんにインタビューしてみます。

内:「XOOPS Cube」で構築したポータルサイトの実績を教えてください。

氷川さん:公開OKなものでは、当社で運営している「夢野球」という野球チームを持っている人が無料で使用できるサービスがあります。

スコアの管理、選手紹介、スケジュールなどが共有でき、すでに400チーム以上にご利用いただいています。

「夢野球」
http://welcome.89dream.jp/

内:なぜXOOPS Cubeは2005年以降人気が下降したと思いますか?

氷川さん:2005年まで、開発はアメリカの「XOOPS」コミュニティ主体で行われていました。

アメリカでコミット権を持っているメンバーがXOOPS財団を設立してから、集められた資金の用途の不透明性や、日本からの要望が反映されないなどの理由で、日本では現在の「XOOPS Cube」の元となるJP版へプロジェクトがフォーク(分岐)したそうです。

一般ユーザーにとっては、”XOOPS”というキーワードで検索しても情報が更新されていない本家のXOOPSがヒットし、プロジェクトが停滞しているように見えたんですね。

それで、だんだんユーザーが減っていったのではないかということのようです。
(現在はXOOPS本家の開発も再開しています)

また、日本国内でもXOOPSの派生プロジェクトは多数あり、ユーザーにとっては選択肢が多いから良いということよりも、どれを使ったらよいかわからないというのもありそうです。
(今は日本ではXOOPS Cubeがメインプロジェクトのようですが)

内:なるほど。
たとえそのプロダクトが便利でコードが素晴らしくても、コミュニティの運営がうまくいかないことが原因で、埋もれたり消えていってしまうプロジェクトは山のようにあるんだろうなと思います。

それはオープンソースのプロジェクトに限らず会社も一緒ですね。

氷川さん:そうですね。コミュニティの分裂などによりユーザーが混乱し、最盛期に比べて人気度が低下してしまったという経緯はあります。

しかし、現在「XOOPS Cube」の日本の開発コミュニティ活動は地道に続いていて、プロダクトとしては用途や方法によってはかなり良い点を持っていると思います。

特に、条件付き検索機能(値段がいくら、イベントの日時がいつ、地域はどこ)や、会員登録機能が必要なサイト構築には力を発揮します。

以上、簡単にXOOPS cubeについて伺ってみました。

実は、私の会社でも、要件に応じて年に4~5案件はXOOPS Cubeのカスタマイズや構築を手がけているんです。

氷川さんの所属する株式会社ザクロさんも「XOOPS Cube」のカスタマイズや構築を得意としているようですが、「XOOPS Cubeで構築」ということをあまり全面に出していないようです。

これまで対応した案件の成功からのリピートや、ユーザーからの紹介により事業を拡大し、東京進出に至っているわけです。

最後に、「XOOP Cubeが実は便利だということが広まると、競合も増えちゃうし、あまり広めない方がいいですか?」との問いには、

「XOOPS Cubeの開発者はみんな仲間だと思ってますから、開発者が増えることによってまたXOOPS Cubeが活発になるとうれしいですよ。」と氷川さん。

競合が増えるのを嫌ってクローズドに活動するよりも、オープンに活動し、コミュニティの広がりによる活性化を求めるスタンス。

この考えはオープンソースに関わって活動している人の特徴で、オープンソースへ関わるスタンスとして正統派。

そこには、一社で閉じられた利益追求でなく、会社の枠を超えた広がりによる利益追及の美学や信念が付随しているのです。

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