第103回 週刊誌記者が明かす「記事を書くコツ」、「起承転結」という最強のテンプレート
いかなるジャンルの雑誌(とりわけ、週刊誌)であっても、記事の真価は「書き出し」にこそある。書き出しひとつで、読まれるか読まれないかが決まってしまうことも少なくない。
ちょっと適当なたとえが見つからないのだが、たとえば「メガバンクが抱える不良債権爆弾」という記事を書くとしてみよう。
「✕✕銀行には、世間には知られていない秘密がある。巨額の不良債権問題だ」
「宇都宮から電車で30分。人里離れた山中に無人の大規模マンションがある」
どちらが、読み進めてみたいと思いますか?
「およそマンションなど売れもしない場所なのに、✕✕銀行はなぜお金を貸したのだろうか。しかも、こんな事例がまだまだ山のようにあるのだ」と続けた方が読者の好奇心をあおるのだということは、一般論としてお分かりいただけるのではないか。
「書き出し」は、雑誌記事にとっていわば「テンプレート」(定型書式)のひとつである。そして、雑誌記事の最強のテンプレートは「起承転結」と言い切っていい。
起承転結がしっかりしていて、強い書き出しで始まる。それだけで、間違いのない記事が間違いなく書ける。
ちなみに、新聞の場合はちょっと違っていて、よく知られている「5W1H」がテンプレートに相当する。「いつ、どこで、だれが、なにを、なぜ、どのように」ってやつですな。
もっとも、新聞記者にとって5W1Hは「最強」というより「必須」のテンプレートであって、これがなければ商売にならない。雑誌記者の「起承転結」は必須というわけでもないから、身についていないことも多い。
週刊誌の記者時代、記事を書くにあたっては、まずテーマを設定する。なにを、読者に伝えたいのか。メッセージを明確にしなければならない。
それから「起承転結」を練る。どういう流れで書けば、伝えたいメッセージをより効率的に届けることができるのかを考え抜く。
起承転結が固まったら、取材メモから「起」「承」「転」「結」それぞれに書くべきネタをひとつずつ落とし込んでいく。
ノートに「起」「承」「転」「結」と書いて、取材メモから「これは」というネタをそれぞれの欄に書いて整理していくわけだ。
ここまで準備したら、原稿を書き始める。構成をしっかりつくってあるから、原稿を書いている時間のほうが、準備に費やすそれよりも短くて済む。
副編集長として記者を指導していた頃には、いの一番にこれを教えるのだが、どうも聞く耳がないようで、なかなかちゃんと書けるものではない。
「テーマと起承転結を練らずに記事を書くのは、土台のない家を建てるようなものだよ」と言えば分かってくれると思っていたのだが、分からないものですかね?(苦笑)
「商売のコツ」というものは、大きく2つあると常々考えている。「誰にでもできるけど、やり方を知っても誰もやろうとしない」もしくは「誰にでもできるけど、誰もやり方を知らない」というものだ。
営業マンの話を聞くと、よく「1ヶ月で1000人と名刺交換した」みたいなエピソードが出てくる。ばらまいた数だけ売り上げが上がるわけでもなかろうが、「誰にでもできるけど、やり方を知っても誰もやろうとしない」のである。
1ヶ月で1000人と名刺交換するより、起承転結を考えるほうがはるかに簡単だと思うのだが、「誰にでもできるけど、やり方を知っても誰もやろうとしない」ものであるらしい。
もちろん、どんな記者の頭の中にも「起承転結」はおぼろげにはある。なければ、さすがに記事なんか書けない。
しかし、なにしろ「おぼろげ」であるから、それをはっきり焦点を合わせてよく見えるようにするために、考えて整理する必要がある。
それをやらないから、記事を書いてる途中にあっちこっちにとっちらかって、まとまりのないもの、つまらないものになってしまう。
「でもさ、このコラムだって、書き出しはつまらないし、起承転結のまとまりもついてないよね?」
そうお考えの読者諸氏も大勢いらっしゃるだろう。
それは、まったくその通りであって、そもそも書き出しとか起承転結なんか考えずに書くから、こういうことになる。
なぜ、書き出しとか起承転結を考えないのかと問われれば、その前提となる「テーマ」や「メッセージ」がないということに尽きる。
週刊誌時代の折々の思い出を独り勝手にこぼしているだけなので、読者に伝えるべき「何か」がそもあるわけではないのだ。
こんなコラムに毎度お付き合いいただいて、読者のみなさまには足を向けて寝られない。と、わりに本気でそう思っている。でも、だれが、どこにお住まいなのかも分からないので、立って寝るしかありませんね。

