第2回 「パパクワッチの誕生(オオクワガタブリードサービスのスタート)」

7月も中旬を過ぎてクワッチとカブちゃんのシーズンもいよいよ到来という感じ。
日本全国各地から採集報告が聞かれるようになってきました(^^)。パパクワッチもこの時期は羽化した成虫の取り出しや産卵セットなどで大忙しです。

さて、コラムの本題に話を戻しましょう。

八景島でのオオクワッチとの衝撃の出会いを機に僕は、完全にクワッチの世界にのめり込み始めた。

その昔、大阪の河内で里山を駆け巡っていた少年の唯一のクワッチに関する情報収集手段は、学研の図鑑ぐらいなもの。それが、インターネットが普及した世界にタイムスリップすることで今まで知らなかったクワッチに関するあらゆる情報がタダで(当たり前か!)入手できるようになったのだ。

東京では、西の玉川上水や多摩川の河川敷で子供の頃のあこがれのヒラタが採れるらしいとか、クワッチの成虫の飼育には昆虫ゼリーなる人間様が食べるような飼育用品が開発されている!など。

しかし、何といっても小学校の時代に達成できなかった夢を実現できることが判った時の興奮は今でも忘れない。それは、ちょっとしたコツを覚えればクワッチの累代飼育が実現できるという事実だった。

累代飼育とは、成虫の♂と♀をペアリング(交尾)させて、産卵させる。
その後、孵化した幼虫を専用の餌の入ったビンで飼育し、蛹化~羽化させるサイクルを何世代にも渡って回すことだ。

小学生の時には、情報不足からカブちゃんでさえ、満足に飼育にできなかった少年が、30年の時間を経てその”奥義”を知ることになったのだ。

毎晩、眠い目をこすりながら、個人の方が運営するいくつかのサイトや昆虫ショップの専門サイトで勉強させていただく日々が過ぎていった。そして、僕にもできるかもしれないと判ると俄然やる気が出てきた。

普通種と呼ばれるノコギリクワガタやコクワガタの飼育に加えて、あの図鑑のイラストでしか会ったことのなかったオオクワッチを飼育するチャンスをある方のご厚意で種親を譲っていただき実現できることになったのだ。

201303そしていつしか密かに自宅の一室に大きなメタルラックを組み上げてオオクワッチの飼育ビン(菌糸ビンというクヌギのチップにきのこを植菌させたもの)をずらりと並べるようにまでなってしまっていた。

 

 

 

「あら、パパクワッチ、またカブ部屋なの?」

「ママ、カブ部屋と言うと怒るよ。かぶちゃんとクワちゃんは違うんだって」

なんて会話があったかどうかは、定かでないが、”クワ部屋”で過ごす時間が圧倒的に増えていった。

あっという間に月日が過ぎ、クワッチ飼育を始めて2年目の夏を迎えるころだった。インターネットや専門誌(なんと東京中野にむし社という出版社がある)での情報では飽き足らず、自分で詳しいホームページを作りたくなった。

クワッチやカブちゃんのホームページは、その時点で様々なものがあったが利用者の視点でこれは!というホームページがなかった。まず、デザインがクールじゃない(笑)。

そして初心者にとって欲しい情報、例えば飼育のステージを紹介したホームページが意外と少なかった。

知り合いのWebデザイナーの方にご協力いただきながらビギナーであった私が学んできた情報を全て整理するようなカタチでホームページを作成した。

http://www.dorcusnavi.jp/index.html

飼育ステージに関する情報を解説することは、言ってみれば製造業で言う製造工程の見える化であり、今では飼育初心者の方のバイブル的なホームページとなっている。

そして飼育情報だけでなく、産地や血統など利用者が欲しいと思われる情報は、極力掲載するようにしてみた。

自宅での飼育数が増えるに従い、余品(種親として残す個体以外の個体)をオークションで販売するようになった。言って見れば通販サイトのようなものだ。

さらに2007年からは、僕のホームページのお客様により親近感を持ってもらうために日々のブリード状況を紹介する目的でブログによる情報発信も始めた。

http://dorcusnavi.blog103.fc2.com/

そもそも本業では、CRM(顧客関係性管理)なるものに携わっていた僕は、CRMの世界で言うマルチ・チャネルのコンタクトセンターを自分で運営してみたいという願望を持っていた。

マルチ・チャネルのコンタクトセンターとは、電話でのコールセンターだけでなく、ホームページなどのWebサイトや直接対応の履歴を一元管理し、どのチャネルからアクセスがあっても均一でワン・ツウ・ワンの対応を図ろうと言うものだ。

電話のコールセンターは、僕の携帯電話というわけで、気がつくとマルチ・チャネルのコンタクトセンターに必要な環境は全て揃っていることがわかった。
必要とあれば対面でお客様と個体のお取り引きすることもあった。

僕は、このオオクワッチのブリードに関する情報提供と飼育した個体のオークションでの販売の仕組みを”オオクワガタのブリードサービス”と呼ぶことした。

なぜ、サービスという言葉をつけたかと言うと、単なるモノの交換だけでなく、情報という付加価値をつけて僕が大切に育てたオオクワッチを買ってくださったお客様(クワ友)とお付き合いしたいと考えたからだ。

そしてオオクワッチを通して知り合ったクワ友とのコミュニケーションが家庭の日常会話でも頻繁に出るようになってきた。

「パパの友達は、クワガタで知り合った友達しかいないの?」

なんてことを言われたこともあるが、このオオクワッチのブリードサービスの醍醐味は利用者であるクワ友とのコミュニケーションなのだ。

次回は、この”オオクワガタのブリードサービス”を利用する人がどんな人なのか利用者のペルソナを元に紐解いてみたいと思う。

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