「Slave to Love」Bryan Ferry (Ferry) 85EG

ブライアンフェリーの存在感は、かなり独特で、ミュージシャンらしい直線的な激情がほとんどなく、幾重にもわかれては、またつながる複雑な線を描く微細な感情の襞を、巧みにコントロールしながら、音像に焼き付けているように思います。

その佇まいはロックミュージシャンというより、ヨーロッパの名優のような、貴族的な堕落と風雅を体現しているかのようです。

「Slave to Love」はそんなフェリーの美意識によって、黒人の産み出したリズムが、たゆたうような植民地主義に収奪されたかのような、非人間的な残酷さを、優雅に描き出した、到達点といえるでしょう。