内山田洋とクールファイブ 「そして、神戸」(千家和也/浜圭介)72RCA

「こおおおおううべええー」曲が始まっていきなり、こう歌われます。
唐突に何の説明もなく「神戸」。

そしてこう続きます「神戸、泣いてどうなるのか」素晴らしい出だしです。不謹慎かもしれませんが、「がんばろう、神戸」の1万倍、言葉の「パワー」があります。

そしてこう続きます。「捨てられた我身がみじめになるだけ」後半ではこんなフレーズも。「誰かうまい嘘のつける相手捜すのよ」ズバリ「愚かな女」です。

しかし、男声で歌われることによってどうしようもない惨めさをかろうじてまのがれ、声と楽曲のパワーを増幅させています。

「愚か」さから生まれる湿りきった力。「愚か」さを隠さない潔さ。
「愚か」さを正面から蔑む残酷さ。
21世紀人が忘れてしまっている、ストレートな「陰湿さ」を思い出させてくれます。

そして、前川清。湿度の高い情念のこもった声を、不器用に叫び、震わせる。過剰な情念、過剰な叫び、過剰な震え。決してテクニックで小手先に逃げない「愚か」さです。