Carol King 「So Far Away」(King)710de
キャロルキング一世一代の傑作アルバム『Tapestry』。
演奏の質感はザラザラしていて、乾いています。キャロルの声質もハスキーでドライ。
しかし、友愛を歌った歌詞や歌声の本質は、優しく温かく、素朴なポジティブさを強く孕んでいます。
良く練りこまれたメロディーからも真っ直ぐな優しさと強さが伝わってきます。
優しさや温かさ、正しさは、ややもするとベタベタとした鬱陶しさを感じさせるものですが、そういった本質の表面を、乾いたシンプルなサウンドメイキングで纏い、風通し良くしたところが、このアルバムの成功ポイントなのでしょう。
白眉は「So Far Away」。
決して流麗ではないピアノやバンドの演奏は地味で素朴ですが、滋味にあふれた深みがあります。一聴ぶっきらぼうにさえ聴こえるヴォーカルは、悲しさや優しさをしっとりと表現したメロディーを誠実に辿ります。