はっぴぃえんど在籍時代に発表された1stソロアルバム「大瀧詠一」は1972年に発売されていますが、私は1995年に発売されたボーナストラックがたっぷり入った再発CDを長く聴いていました。今回2012年版リマスターを遅ればせながら買ってみたのですが、凄まじくクリアな音質で、この名盤の素晴らしさを、初めて本当に理解したような気がします。

『指切り』 は、サザンソウルのマスター、アルグリーンのサウンドを想定したようですが、確かに松本隆のドラミングは、重くひきづるようなコクの深いリズムを叩き出し、細野晴臣は、ステイプルシンガーズばりの、真っ黒なベースラインをうねうねと、のた打ち回らせます。はっぴぃえんどのリズムセクションが、70年代ソウルの最もディープな部分を完璧に自分のものとしていたことがわかります。

しかし、さすが日本のロックの創生を標榜する大瀧氏。単なるかっこいいブラックミュージックに仕上げることなどしません。

最大のアクセントは吉田美奈子のピアノとフルートとコーラス。まだ十代だった美奈子嬢は、もちろんブラックミュージックの深淵を会得しつつ、フェミニンな繊細さをトッピングしています。しかし、このスパイスは決して可愛らしくキュートなものでなく、いわば日本の童謡のように、霊的な化外と浮世の境界を漂っているかのようなのです。

そして、その全ての上に鎮座する。大瀧御大。御大といっても当時まだ24歳。はっぴぃえんど時代のロック的なシャウトでもなく、ロンバケ時代の甘いクルーナーでもなく、恐ろしい程剥き身な声は、哀しみを湛えた獣のようにセクシャルな、まず他では聴いたことのないような声です。

稀代のヴォーカリストとしての大瀧御大。マストです。

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