第2回 「骨折り損」の研究
年の瀬を迎え、なにかと慌ただしいこの時期、徹夜して仕上げた調査レポートが依頼主の気まぐれで不要となってしまった。
無駄骨を折ってしまった。。。「骨折り損の草臥れ儲け」という言葉も脳裏をよぎる。
・・・ん?骨折り損?
「骨折り損」とは、普段よく使う言葉ではあるが、一体どれくらいの「損」なのだろうか?
それは計測可能なもので、定量化することができるのだろうか?
わからないことは調べるに限る。
早速、調査を開始した。
まず、広辞苑第5版によると「骨折り損」とは「努力をしたことが無駄になること」とある。
・・・辞書はいつもきれいごとしか言わない(←どんな偏見なんだ)。
ま、言葉の意味はいいとして、実際に骨を折るとどれくらい「損」なのだろう?
たまたま偶然、ごく最近、私の知っている知人が鎖骨を骨折した(←重ね言葉!正しくは、「たまたま最近知人が鎖骨を折った」ですね)
その知人(仮にIとする)に骨折でどれだけ損をしたのか、インタビューを試みた。
以下、知人のIへのインタビューの抜粋。
私「どの骨を折ったのですか?」
I「サコツ」
私「右ですか?左ですか?」
I「サコツと言ったら、左だろう」
私「?」(サコツは左骨?右ならウコツ?・・・この人ヘンだ)
気を取り直して
私「骨折してるようにみえないんですけど・・」
I「サコツは石膏で固めるわけにいかないんで、サポーターのようなギブスをしてるだけだから。外見じゃわからないんだよねぇ。誰からも同情されなくて残念だよ・・・」
私「!」(いい歳して同情されたいのかよ。・・・やっぱりこの人ヘンだ)
気を確かにして
私「骨折してどんな損をしましたか?」
I「自転車で転んだときに、ライトが壊れた。ドンキホーテで1,480円で買ったLEDライト」
私「自転車で転倒して、骨折したのですか?」
I「うん。その時いっしょにヨドバシカメラで2,980円で買った万歩計も壊れた」
私「?」(自転車に乗るのに、万歩計?・・・あると言えばあるか・・・)
気持ちを鼓舞して
私「ほかにはどんな損がありましたか?」
I「自動車の運転ができないので、歩く機会が増えて、靴底が減った。
整形外科の治療費が1ヶ月で約4万円、薬代が6千円。
必要以上にレントゲンを浴びた上に、ひとりで風呂に入れず、服も着られないし、靴下も履けない。
パンツだけはなんとか片手で履けたので、警察の世話にならずに済んだけど(えっ、どういうこと?)、
顔を洗うにも右手しか使えないので、右の手のひらが大きくなったし(そんなことないだろう)、
日課の立ち食い蕎麦屋も、ドンブリをつかめないので、行けなくなったし(ドンブリ持たなきゃいいのに)、
早く治したいから、牛乳を一日5L飲んだら、お腹を壊すし(子供か!)、
カルシウムの錠剤やアーモンドフィッシュにも金がかかるし(大人か!)、
とにかく、あらゆることが不便で、損してる。」
私「もう算定できないくらいの損なんですね?」
I「そう、プライスレス」(こんなとき使う言葉じゃないと思うが)
私「それにしても、どこでそんなに激しく転んだんですか?」
I「それが・・・・・よく覚えてないんだよね。・・・酔っぱらってたんで・・・」
私「えっ!!!」絶句
知人のIの失った信用・・・プライスレス。
なおも話しを続けるIを前に、こんな調査を始めた自分に募る「骨折り損」感(違うか!)。
この無駄なインタビューで、私の時間を、惜しみなくIは奪う・・・。
教訓「痴人のIには気をつけろ!」(なんのこっちゃ)