第7回 「三酔人軽薄問答」

今月の初めは大型連休でしたね。

未曾有(*)の不況にもかかわらず、海外旅行も国内旅行も盛んだったようでうらやましい限りです。
(*なんて読むんでしたっけ。。。漢検準1級の問題です)

私はというと、時間はあるけどカネはない状況はいつもと変わりませんので大半は自宅警備に勤しんでおりました。
とはいえ、爽やかな五月ですから、一日中部屋に籠もっているわけにもいかず、同じ境遇(*)の二人の友人と呑みにでかけました。
(*時間があるけどカネはないということです)

昼間なので居酒屋というわけにもいかず、天気がいいのを幸いに、スーパーで缶ビールとおつまみを買い込んで、近くの公園で呑むことにしたのです。

ちょっとした花見感覚ですね。

公園には、レジャーシートを敷いてお弁当を広げている家族連れやキャッチボールをしている親子、黙々とランニングする男性やペタンクをする若者集団などなどいろんな人たちが思い思いに休日を過ごしてました。

その中で突然酒盛りを始める中年三人組はちょっとだけ(?)迷惑な存在です。

乾杯をして、ひとしきりどうでもいい話題で盛り上がったあと、さらにどうでもいいことを言い出すのは酔っぱらいの常です。

「酒を飲んで人に迷惑をかけるのはよくないな」と三人の中で一番酒の強い友人(以下、「強い」の<ツ>)が言うと

「酒で人に迷惑をかけるヤツは一生禁酒の刑」と三人の中で一番酒に弱い友人(以下、「弱い」の<ヨ>)が受けます。

『おまえら二人が一番迷惑かけてるだろう』と心の中でつぶやくのは少々お酒を飲める私(以下、少々の<シ>)。

で、突然、昔のことを思い出しました。

ウン十年前のこと、私たち三人は同じ寮にいたのですが、ある日の深夜、<ツ>と<ヨ>が酔っぱらって帰ってくると、なにを思ったのか
寝ている私の部屋の前に現れ、ドアをガンガン叩きだしました。

「開けろ!!」
「起きろ!なに鍵かけて寝てるんだよ!」

と大騒ぎです。
鍵をしないで寝ていると、よく酔っぱらいが闖入してくるので、用心のために鍵をかけているのです。

「よーし、そっちがその気なら、こっちにも考えがある」どちらかがそう言うと、ドアを離れていきました。
多少、不安を覚えつつも静寂が戻ってきたので、またウトウトしかけると、

ぱたぱたと足音がして、またもや
「起きろ!開けろ!あと3秒以内に起きないと大変なことになるぞ」と<ツ>と<ヨ>。

そして3秒も経たないうちに、ジャバジャバと音がして、ドアとPタイルの床のわずかな隙間から水が浸入してきました!!
「う゛ぁっ!」と私は声にならない声をあげ、あわてて起きると近くにあったタオルで水を堰き止め、そのまま押し返しました。

「おっ!こいつ抵抗してるぞ」と<ツ>の声がします。
「モップ持ってくる」と<ヨ>が応じ、やめる気配は更々ありません。

・・・このあと延々と続く白い壁を挟んだ水軍の応酬。

この無意味な痴力を尽くした戦いは、後に「白壁の戦い」と呼ばれることになるのですが、翌朝、寮母さんに怒られたことは言うまでもありません。

いい歳して中学生並です。
ほんとに今思い出しても恥ずかしい。

その迷惑極まりない二人が目の前で、酔っぱらい特有の噛み合わない議論を白熱させています。

<ヨ>が「死んだ人が帰ってこないのは天国がいいところだからなんだよ」
といつもの持論を展開しています。
それに答えて<ツ>が「この前、占い師に見てもらったら、俺の前世は未来
人らしいんだ」
『前世が未来人?』

<ヨ>「未来の天国はどうなってるんだ?やっぱり酒もうまいし、ネエちゃんもきれいなのか?」
<シ>『それは古い唄の文句だろ』
<ツ>「天国に行けるなら悪魔に魂を売ってもいいね」
<シ>『何だ?その「健康になれるなら死んでもいい」的な意味のなさは』

<ヨ>「悪魔は酔っぱらった魂は高く買わないと思うな。ネットオークションで売ってみろよ?」
<ツ>「オークションと言えば、「森伊蔵」が3500円で買えそうだ。でもお前らには呑まさん。もったいないから」
<シ>『ケチ。そんなことじゃきっと落札できないぞ』

なおも無意味な酔っぱらいトークは炸裂し続ける・・・

そんなこんなで気がつくと夕闇迫り、ポケット壜の焼酎を手にしている三人。

<ツ>「酒呑むと体が火照ってくるね。服脱ぐかな・・・」
<ヨ>「酒呑むとロレツがまわららくらるれ・・・あれ?」
<シ>「頼むから公園で全裸になったり、講演で酩酊したりするのはやめてくれよ!」と言ったつもりの本人も気がつくと、服を脱ぎすてロレツが回っていない・・・そしてその日の会話の大部分は覚えちゃいないのです・・・(なんのこっちゃ)

教訓「お酒は大人になってから。」(大人が何歳からかはわかりません・・・)

Image069