第65回 【報告】ビールをつくる

唐突ですが、みなさんはビールはお好きですか?
私は大好きです。

あの泡や苦み、ゴキュゴキュと一気に飲んだ時のノド越しを想像するだけで、指先の震えが止まります。(依存症か?)

ときどき、ビールが嫌いな人は、「泡や苦みを求めているなら、エスプレッソを飲めば?」などと、とぼけたことを言います。(言わないか。。。)私はその人に問いたい。「エスプレッソでノド越しのスッキリ感が味わえますか?」と。(ノド、火傷するし)

また、ある人は「あなたがビールと言って飲んでるのは、「麦と○ップ」ですよね?それはビールじゃなくて、「第三のビール」ですよ」と余計なことを言います。

さらにその人は調子に乗って続けます。「発泡酒や第三のビールは、ビールじゃないから悪酔いするし、二日酔いしやすいよね」と。

私はその人に言いたい。「ふざけるな!ビール会社の企業努力を知っているのか!」と。(実にところ、私自身はビール会社の企業努力にそれほど詳しくはないのですが・・・)

ビールの価格の約三分の一は酒税で、酒税は原料に占める麦芽比率によって変わるため(麦芽比率が25%未満の発泡酒の酒税は、麦芽比率50%以上のビールの約半分)、麦芽比率が少なければ安い「ビール」(酒税上はビールとは呼べないが)が販売できる。

そこで、麦芽比率が少なくても、いろいろな工夫とたゆまぬ努力で美味しく仕上げたのが、発泡酒であり、第三のビールなのです。麦芽比率が違うだけで名称は違うけれど、「ビール」はビールなのです。

海外では、国によって違いますが、泡の出る飲み物は、みんな「ビール」と呼ばれています。(エスプレッソは違います)

ベルギーでは果実が加えられた甘酸っぱいランビックという種類のビールがありますし、香辛料の入ったビールやコーヒービール(エスプレッソじゃなくて。・・・しつこい)など、麦芽比率と関係なく「ビール」として存在しているの
です。

麦芽比率の50%とか25%などという数字にばかり目を奪われていると、本質を見失ってしまいます。

例えば、果汁100%以外をジュースと呼べなくなったため、粉末ジュースは消えたのです。
(こどもの頃、粉末メロンジュースの粉を掌にのせて舐めて、手のひらと舌をミドリ色にするのが、なによりの楽しみでした。)

好きなカップアイスを「アイスクリーム」と呼んでいましたが、フタをよく見ると「氷菓」と書いてありました。
(アイスクリームと呼んじゃいけないの)

海老の名前は「車」や「芝」じゃなきゃいけないのでしょうか。(「バナメイ」とか「ブラックタイガー」ってカッコいい名前だと思うし)

「おふくろの味」を作っているのが親父だったらいけないのか!・・・って、もうビールと関係ないし。

運動のあとや仕事を終えたあとに飲むビールは美味しいですね。
時には、美味しいビールを飲みたい一心で、好きでもないランニングで汗をかいたり、サウナに長時間入ったり、無理して会社に行って仕事をしてみたりします。(会社員でもないのに)

あるいは、ビールの美味しいお店やビールの泡マイスターがいる店を探してみたり、世界のビールを置いているお店でビールで世界一周をしてみたり(世界を周る前に、酔いで目が回ります)、全国の地ビールをインターネットで取寄せてみたり・・・普段は発揮することのない力を惜しみなく全開するのです。

そして、行きつくところは、自分で美味しいビールをつくって飲んでみたい。

ということで、本題に辿り着きました。(長かったですね)

北海道の某所で年に一度ビール醸造体験ができるということは以前から知っていたのですが、なかなかそのタイミングが合いませんでした。

ようやく今年2月の第二日曜日にビール醸造体験に参加することができましたので、報告させていただきます。
(以下、この報告は、ビール醸造所の許可をもらっていないので、固有名詞は仮名で書かせていただきます)

大樽ビール銭函醸造所(仮名)のビール生産量はもはや地ビールの領域を超え、メジャービールメーカーに迫る勢いで、ピルスナー・ドンケル・ヴァイスの定番3種のビールに加えて3か月ごとに醸造される季節のビールを提供している。

大樽ビール(仮名)のビールは、すべてドイツのビール純粋令に従い、麦芽と水とホップのみを原料として醸造している。(米やコーンや他のアルコールなどの混ぜ物は一切ない)

従って、ビール醸造体験でも原料は麦芽と水とホップのみ。(もちろんビール酵母は加えます)

ビールの醸造工程は、砕いた大麦麦芽と水を鍋に入れ、ガスコンロで煮出す→煮汁と麦芽を濾して分ける→煮汁を温めてホップを加える→少し冷ましてビール酵母を加え、樽につめて寝かせる→約2か月後ビール完成。
となる。

こう書くと簡単そうですが、実際は麦芽を水で煮るとデンプンが出てくるので、こまめに温度管理をしながら鍋をよくかき混ぜないと、焦げたり、糖がどうにかなっちゃったりするのです(どうなるのか忘れましたが)。

煮汁と麦芽を分けるのも、簾を二枚クロスさせて、濾すスピードを調整し、20分くらいかけてじっくりやらなければいけないのです。「じっくり」が苦手な私は5分で濾して、ほかの醸造体験者から羨望の眼差しを受けました。(実際は、「ああ、失敗してる」という憐憫の眼差しだったらしい・・・)

濾した煮汁の中にはまだ細かい麦芽が混じってますので、その麦芽を沈澱させてから、静かに上澄みだけをすくわなければなりません。(静かにすくったつもりだったのですが、思い切り沈殿物を底から引き揚げたため、その作業はチーム内の冷静な人に譲らなければいけなくなりました・・・)

きれいな上澄みだけを鍋に入れて、再度加熱してデンプンを糖にします。でも温度が72度を超えてはいけません。
ビール酵母が好きな糖分が破壊されてしまうからです。(温度計で温度を測りながら、ガスの火加減を調整します。ちょっと油断している隙に72度を超えたような気がしましたが、気にせずガスの火を止めて、知らん顔をします・・・)

そして樽に詰めてビール酵母を加えて寝かせます。

この全作業時間が約6時間です。
樽で寝かせるのが約2か月ですから、2か月と6時間でビールが完成するのです。

どんなビールが出来上がるのでしょう?今から楽しみです。

その醸造結果は4月6日にわかります。
この日に大樽ビール(仮名)では、大試飲会が開催され、各チームの作ったビールをマイスターが審査してベスト3を決定するのです。

私のチームが作ったビールは「たこビール」(仮名)と命名しています。(なんのヒネリもありません)

「たこビール」は果たしてベスト3に入るのでしょうか?(参加チームは約30)

そうそう、報告し忘れましたが、このビール醸造体験には大きなトラップがあるのです。

それはビールの醸造作業中、ビールが飲み放題なのです。
ビール醸造所でプロが作った出来立ての美味しいビールが飲み放題なのです。
(大事なことなので2度書きました)

なので煮汁の温度管理が疎かになるのは仕方がありません。
飲み放題で酔うのは、自然の成り行きなのです。

私の場合は、麦芽と水の入った鍋を30分くらい掻き混ぜたあたりで既に酔ってました。と告白して今回の醸造体験報告を終了させていただきます。(って、開き直り?)

201403f

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