第107回 旅から旅へ

令和元年も残すところ、あと2ヶ月となりました。
吹く風も冷たく、季節は最早晩秋といってもいいでしょう。

前回は7月中旬の北海道離島の旅のお話をしていた途中でした。
今回はその続きとなるのですが。。。もう初夏のお話をしてもしょうがないような気がしてきました。

数々の不測の事態に直面しながらも活ウニやサフォーク羊肉を求め続けた中年男子(?)の面々は果たして目的を達することができたのでしょうか??
と書いても、冒険活劇じゃないので血湧き肉躍ることもないですね。。。
あの日のことは天売島のオロロン鳥に訊いてね、ってことで割愛します。(なんと適当な!ちなみにオロロン鳥の鳴き声は「オロロ~ン」)

ま、いずれにしても今回の離島の旅は不完全燃焼でした。
次なる離島にチャレンジだ、と内なる闘志を秘めて迎えた9月の中旬。
ふと気がつくと、台湾の桃園空港に降り立ってました。

9月とはいえ、沖縄本島より南に位置する台湾ですから暑いです。真夏です。
今や晩秋なので初夏の話をしないと言った舌の根も乾かぬうちに真夏の話です。
人間とはなんと矛盾に満ちた生き物なのでしょうか。

そもそも「矛盾」とはどんな盾も打ち破る矛とどんな矛も防御する盾を販売していた武器商店主が、その矛と盾で戦うとどうなるかという客の質問に、なすすべもなく恐れ入ってしまったのが語源と言われてます。
でも、ここで注意したいのは、なぜ矛と盾を同じ店で販売しようとしたのかという点です。
矛と盾のそれぞれの専門店が我こそは最強だと言い合っていれば、矛盾なく売上を伸ばすことができたのに・・・。
万が一、その矛と盾を戦わせてほしいと外部からリクエストがあった場合は、話題の見世物となりますからテレビ局を巻き込んで「ほこ×たて」(仮名)のような番組を立ち上げて、大いに盛り上げて稼げばいいのです。
どちらが勝つのか、あるいはどちらかに勝たせるのか引き分けにするかなどは演出でウマいことやればいいのです。
テレビに「演出」はつきものですから。。。

おっと、話が横道にそれている間に台北駅に到着です。
MRTという地下鉄のような乗り物を乗り継いで滞在ホテルのある「龍山寺」駅にたどり着きました。
台北の地下鉄は色分けされていて便利ですね。
MRT5路線が5色(茶、赤、緑、橙、青)で塗り分けられていて、路線名を覚えていなくても色を辿っていけば行きたい場所に着くことができます。
駅名も漢字なので、違和感なくMRTの路線図から目的地を見つけて、乗り換えがあっても楽々移動できます。

さて、ホテルのフロントでは、日本国旗のバッチをつけたお姉さんがチェックインをしてくれました。
あとで知ったのですが、国旗のバッチは、その国の言葉を話せますという目印だったようです。
フロントのお姉さんは怪しい英語(!)で手続きをしてくれました。
(日本のパスポートを提示しているんだから、そこは日本語でしょ。と今更ながらツッコんでみるのでした)

ホテルから一番近い観光地っぽいところが龍山寺なので、早速出かけてみました。
途中の公園で地元のおじさんたちが、何組も二人で向かい合って何かをしています。
それを立って見物している人もいます。
将棋か囲碁かな、と近くに寄ってみるとオセロでした。
真剣な様子をみると、何某かの金銭が動いているのかもしれません。
あまりジロジロ見ていると、賭けオセロ(勝手に思い込んじゃった)に誘われそうなので、龍山寺に向います。

龍山寺では入館料(?)的なものは必要なくて、そのまま中に入ると長い線香を持った人たちがたくさんいました。
長い線香が珍しかったので、軽い気持ちで一本手に取って、火をつけてみました。
寺院内は順路があって、線香を持った人やお供えらしきものを持った人でごった返しています。
木製の餃子のような形をしたものを2個、思い切り地面に叩きつけている人もいます。
(あとで知ったのですが、おみくじを引くために必要な手順のようでした。でも餃子がどうなればいいのかは不明)

線香を持つ手を合わせて真剣に何か呪文を唱えている人もいれば、線香を持ったまま椅子に座ったり、地面に正座したりして泣いている人もいます。
なんか変な雰囲気です。
観光地かと思っていたけれど、そうではないのかもしれません。
秘密結社に迷い込んだのかもしれません。
このままコッソリ退散した方がよさそうです。
でも、手に持った長い線香のやり場が。。。
「どうしよう」と内心焦りながら、その辺りを歩いている人についていくと、大きな火鉢のようなものが出現しました。
ほとんどの人たちは、背伸びをして大きな火鉢に線香を差しています。
私も中が見えない火鉢に必死の思いで背伸びをして、そっと線香を差して静かに慌ててその場を立ち去りました。

この一連の出来事で、なんだかお腹が空いてきました。
台湾と言えば、屋台です。屋台と言えば、夜市です。
夜市に行けば、何か美味しいモノを食べられるはずです。
台北で一番大きな士林夜市に向かうことにしました。
MRTの青線から赤線に乗り換えて、劍潭駅で降ります。
(士林駅のひとつ手前です。「地球の歩き方」を見てなければ間違うところでした)

駅を出ると、夕暮れ迫る大通りを人々が列を作って歩いています。どうやら士林夜市に向かう人々のようです。
流れに身をまかせていると、「士林夜市」という看板があって、みんなそこに吸い込まれていきます。
お祭りの縁日のようです。
屋台や商店が立ち並ぶ中、老若男女が入り乱れています。
スイカジュースやレモンジュースやタピオカ入りの飲み物を飲んだり、饅頭のようなものやおでんのようなもの、ソーセージのようなものや麺のようなものを食べてたりと、とにかくカオスです。
香ばしい匂いのするものを売っている隣で、思わず鼻をつまみたくなるような怪しい匂いのするものを売っていたりします。

お腹は空いていますが、美味しいモノが食べたい。
でも、何が美味しいモノなのかわからない。
そんな時は人気のある屋台、行列の出来ている屋台に限ります。

けっこういろいろなところで行列ができているのですが、ひときわ長い行列ができているのは「胡椒餅」と書かれた看板の前でした。
「胡椒餅」?スパイスの効いた餅なのでしょうか。
なんだかわかりませんが、行列の長さからこれは間違いなさそうです。
早速、並びました。

遠目に狭い屋台の中で白い生地をこねている男女が見えます。
その生地で肉まんの餡のようなものをつつんで、小ネギ(?)をつけて、怪しい粉(?)をつけて丸めています。
そして、それを次々と熱々の大きなタンドリー窯のような窯の内側に貼り付けているようです。これは期待できます。

待つこと25分ほど。
どうやら焼き上がったみたいです。行列が進み出しました。
窯から取り出された熱々の「胡椒餅」を、ほしい数だけ紙袋に入れてくれるようです。
あと3人ほどで私の番です。

「あっ!!」
【胡椒餅 1個50元】と書いた立て札をみた瞬間、恐ろしいことに気づきました。

まだ、台湾ドルに両替をしていなかった・・・。
思い返してみると、ここまではすべてクレジットカードのお世話になっていました。
さすがに屋台ではクレカはムリそうです。。

「金なしだ。でも・・・そうだ!!明日は九ふん(「ふん」はニンベンに分)へ行こう!!」
「カネなし」から「カオなし」を連想した私は転んでもタダで起きないのでした。(なんのこっちゃ)

そもそも台北に何をしに来たのやら。
謎と矛盾を秘めたまま、令和元年は暮れへと向かって行くのでした。

※九ふんには「千と千尋の神隠し」の湯屋のような建物があるのです。