『不安の世代 スマホ・SNSが子どもと若者の心を蝕む理由』

2010年代初頭を境に、欧米の10代の若者たちの間でうつ、不安障害、自傷行為などが急増している。特に女子に顕著で、自殺未遂率が2倍近くに跳ね上がった国もある。そしてそれは、スマートフォンが爆発的に普及し、SNSが10代の日常の中心になった時期と重なるのだ。

社会心理学者のジョナサン・ハイトは、本書『不安の世代』で膨大なデータの分析により、彼ら/彼女らの現状を明らかにしてく。

ハイトは、子どもたちの脳と社会生活が、スマートフォンとSNSによって「再配線」され、根本的に書き換えられてしまった、と指摘する。
人間の子どもは本来、外で体を動かし、仲間とぶつかり合いながら、「許容できる失敗」を繰り返すことで心を鍛えていく。ところが現代の子どもたちは、そのリアルな経験の場を奪われ、常時接続のデジタル空間に閉じ込められている。そこでは「いいね」の数で自分の価値が決まり、24時間他者と比較され、炎上や仲間外れのリスクに常にさらされている。

スマホを持たせた親に悪意があったわけではない。スマートフォンを子どもに渡すことは「安全のため」「時代についていくため」という親心からの判断だった。その判断を集合的に下した社会全体が、気づかぬうちに子どもたちの精神的な環境を激変させてしまったのだ。

もはや個人の努力でどうにかなるものではなさそうだ。地域・学校・国家レベルの対策、すなわち、スマートフォンの解禁を16歳以降に、SNSへのアクセスを18歳以降に遅らせ、学校ではスマホを禁止し、放課後はできる限り画面のない遊びや活動の時間を確保すること、などを著者は提言する。

大げさな、と思うかもしれない。しかし、著者が提示するデータと明晰な分析を知れば、その切実さを実感するだろう。

不幸な未来を作らないためにも読んでほしい一冊だ。

『不安の世代 スマホ・SNSが子どもと若者の心を蝕む理由』ジョナサン・ハイト著 西川由紀子訳 草思社