第23回 電話交換機能やテレビ会議を実現するオープンソース

これまでこのメルマガでは、DropBoxのようなストレージサービスやfacebookのようなSNSサービスをオープンソースで構築する話、オープンソースの開発に加わってお金がもらえるサービスの話を、クラウド(cloud)や、ソーシャル、クラウド(crowd)ソーシングというトレンドワードに紐づけて紹介してきました。

今回は、今後ウェブ業界の開発者への認知度が高まり、新たなトレンドの兆しとなるであろう電話やテレビ会議のオープンソースの紹介をしたいと思います。

さて、なぜ今、電話やテレビ会議なのかというと。

私の会社では、事業の軸の一つとして、オープンソースを使ったITサービス立ち上げの支援や開発支援、受託開発などを行っており、オープンソースの中でも、電話系に強いというのを特徴としています。

とはいえ、このメルマガでは今回紹介するような電話やテレビ会議などの音声や映像を扱うオープンソースの話題にはあまり触れてきませんでした。

それは、電話系のシステムはごく一部の人しか興味ないだろうと思っていたから、という理由でした。

しかし、最近ではネットワーク回線等が太くなり、大容量データを低価格の定額で扱うインフラが整い、さらにスマートフォンの普及により、モバイル端末でアプリケーションを利用できる環境が当たり前になってきていることもありウェブ系のシステムと電話の融合が進めやすくなりました。

今月号のメルマガ発行直後の2014/04/12に、弊社の濱田が講師として「クラウドでIP電話サーバを動かそう!ハンズオン」というセミナーを行うのですが、2014/4/6の現時点で既に満員、さらにキャンセル待ちも発生している状況です。

これは、KDDIウェブコミュニケーションズが日本の総代理店として提供している、PHP等でウェブから電話を発信したり受信したりできるというサービス「Twilio」の出現等で、ウェブ系の開発会社の方にも電話系サービスが認知され、興味が高まってきているということ。

ということで、このメルマガでも紹介しなきゃなと思った次第です。

では、いくつかプロジェクトを紹介していきたいと思います。

■オープンソースのIP-PBX「Asterisk」
http://www.asterisk.org/

コールセンター向けシステムや電話系のウェブサービスに関連している業界では知名度が高いオープンソースですが、業界が変わると一気に認知度が下がります。

認知度をいつものgoogleトレンドで比較してみましょう。

2010年以降のasteriskとwordpressの相対的な人気度
(数値が高いほうが相対的に人気度が高い)

「wordpress」:87
「Asterisk」 : 7

圧倒的な差があります。
あまりに圧倒的で参考にならないので、他のCMSとも比較してみると、

「xoops」:64
「drupal」:34
「Asterisk」:25

という結果です。

Asteriskでどんなことができるかというのをごく一部紹介します。

AsteriskはオープンソースのIP-PBX。
Asteriskで電話を受けて、登録されている内線全てに着信させるなど、電話交換機としての機能を備えています。

さらに、AsteriskにはIVR(音声自動応答)の機能あるため、例えば18:00以降に電話がかかってきた場合には、「ただいま営業時間外ですので、メッセージを残してください」というアナウンスを流し、留守番電話のように録音をして録音したメッセージをメールに添付して送信するボイスメールとしての活用もできます。

ニワンゴが提供していたニコニコ電話(2014年1月にサービス終了)では、このAsteriskが採用されていました。

■「Asterisk」にウェブベースの管理画面がついたディストリビューション「FreePBX」
http://www.freepbx.org/

AsteriskにはIP-PBXとして様々な機能が実装されていますが、設定を行う画面がついておりません。

Asteriskにウェブの管理画面がついたディストリビューションが「FreePBX」です。

FreePBXは2種類の形態で配布されており、ひとつはAsteriskと管理画面がセットになったtar.gzファイルです。

こちらは、自分でCentOSなどのOSディストリビューションをインストールした後に、FreePBXをその上にインストールする形になります。

もう一つはFreePBXというOSのディストリビューシンとしてisoファイル形式で配布されており、DVDに焼いてインストールするとFreePBXがそのまま使えます。

インターフェイスは、FreePBXの米国開発元「Schmooze Com, Inc.」が日本市場でパートナー契約を締結している「株式会社クルーグ」が日本語化を行い、3月から日本語版が利用可能になっています。

FreePBXマニュアル:http://qloog.com/manual/140301_freepbx.html

■オープンソースのストリーミング配信サーバー「Red5」
http://www.red5.org/

音声や動画のストリーミング配信をするためのサーバーです。

音声、動画ファイルの配信だけでなく、Webカメラからのライブストリーミング配信も可能で、ストリーミング配信を行っている商用サービスの裏側でもこのサービスが使われていたります。

■Apache Openmeetings
http://openmeetings.apache.org/

ApacheSoftwareFoundationによって開発が進められているプロジェクトで、Red5をベースとしています。

テレビ会議の他に、会議の録画やデスクトップ共有など、商用のテレビ会議システムで提供されている機能がカバーされています。

遠隔地での対面コミュニケーションが必要なサービスを構築する場合、例えば英会話サービスや、コンサルティングサービス、PCのサポートサービスなどと非常に親和性があるプロダクトです。

また、Asteriskとの統合プラグインなどもあり、Openmeetingsで構築したテレビ会議システムに、Asterisk配下のIP電話から参加するなど、掘り下げると非常に高度な使い方ができちゃいます。

ということで、今回はマルチメディア系のオープンソースでどのようなものがあり、どんなことができるかを紹介させていただきました。

さらっとご紹介しましたが、実は今回紹介したものは非常にビジネスでの活用幅が大きなものだと思います。

今後も、これらのサービスを取り上げたセミナーの様子や、実際に構築するレポートなども続編としてお届けしていきたいと思っています。

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