あけましておめでとうございます。旧年中のご愛顧に深く感謝するとともに、新しい年の変わらぬお付き合いをお願いする次第です。

週刊誌記者をやっていたころ、師走は天国でもあり、地獄でもあった。

最初にやってくるのは地獄である。というのも、週刊誌は「週刊」だから、毎週店頭に並ぶわけだ。当たり前だろ、と突っ込まれそうだが、取次会社(書籍・雑誌流通における「卸問屋」)にも印刷会社にも年末年始の休みというものがある。

そこで、12月最終、及び1月最初の週に関しては、師走の20日ごろまでにつくりためておかなければならない。ひと言で言うと、3週間で5号つくる計算だ。

大仰ではなく、毎日が締切である。悪くすると、前の号、後の号の締切日程が重なったりするので、記事を書いているこっちの頭もこんがらがる。

週刊誌の世界では「年末進行」と呼ばれるものだが、この地獄をくぐり抜けると天国が待っている。年末の約10日間、年始の約1週間は締切がなくなるのだ。ほぼ半月のバケーションが毎年あるわけですね。

月月火水木金金で「取材」と称して酒を呑み続けていたわけだが、師走にはさすがにそんな暇はない。取材してるか、原稿書いてるか、机の上に突っ伏して寝てるか。みたいな日々が続くから、お金も使わない。正しく言えば、使えない。

なので、年末の10日間、たまったお金と有給休暇?これも日頃は使う暇もないので、丸々たまっている?を使って、あちらこちらと海外をほっつき歩く習慣がついてしまった。

アメリカはもちろん、ヨーロッパもほぼ全ての国を訪れている。さほどの自慢にもならないが、40ヶ国ほどは行ったなぁ。

今でも忘れられないのは、トルコのカッパドキアで乗った気球である。エリンギ(きのこの一種です、念のため)のような岩が立ち並ぶ奇景を見下ろしながら、ふわりゆらりと気球は動いていく。

あのフワッとした浮揚感、浮遊感は、「旅」そのものだとつくづく感じたものだ。

今でも忘れられないのは、って続けていくと止まらないので、これくらいにしておこう。

閑話休題。

会社を辞めてから、今年で9年になる。ここ5年ほどの年末は海外「旅行」には行っていない。お金がないということもあるが、あれは失業者の立場になってみると、案外につまらないものだ。やはり、年末進行の地獄があればこそ楽しかったのだと思う。

そうは言っても、やはり遺伝子のどこかに放浪癖が組み込まれているようで、たまに世界のあちらこちらのラジオを聴きながら、彼の地に思いを馳せることもしばしばある。

Radio Garden

がおすすめだ。サイトにアクセスすると、画面いっぱいに地球儀が広がる。地球儀の上には緑色の点がポツポツとあって、これがラジオ局なのである。カーソルを合わせてクリックすれば、そのラジオ局の放送をインターネットで聴ける。というのだから、まったくたまらない。

欧米や日本のような先進国では、緑色の点が「点」ではなく「帯」のように見える。それだけラジオ局が多いのだが、シベリアとか太平洋のど真ん中とか、こんな場所に人間が住んでいるのか? と驚くようなところに1つだけポツンと緑色の点が見つかったりすると、うれしくなってしまう。

深夜、原稿を書きながら、こういう辺境のラジオを聴いている(今も聴いてます)。何を話しているのかもわからない異国の言葉が流れてくると、その地に自分もいて、その地の空気を感じながら、その地の人たちの生活が見えてくるような錯覚に囚われることがある。

気球に乗った時の浮揚感、浮遊感に通じる不思議な感覚だ。iPhone、Android用アプリもあるので、電車の中で音楽を聴くのと同じように楽しむこともできる。

もっとも、やはり深夜に、独りで、酒を呑みながら、アルコールの酔いと相まって、「ここではない、どこか」へトリップするのがRadio Gardenの醍醐味だ。

新年早々、話があらぬ方向に脱線してしまった。が、考えてみるまでもなく、この連載は最初から脱線しっぱなしで、今や本来の主題などは見失なわれている。あ、「経済誌記者のここだけの話」でしたね(笑)。

次回は、(憶えていれば)話を元に戻します。2019年だ。ということは、1999年から数えて20年の区切りになる。

1999年は、日本興業銀行、第一勧業銀行、富士銀行の3行が経営統合に踏み切った年である。これが発火点となって、大ドミノ倒しのような銀行大再編が始まった。

長銀破綻を経て、大銀行がどのようにして再編に追い込まれていったのか。そのあたりの話を(憶えていれば)書こうと思う。

蛇足を連ねれば、今年は亥年ですね。個人的には「猪突猛進」という言葉が好きである。広辞苑によれば、「むこう見ずに猛然と突き進む」という意味だ。

イメージとすれば、あまり良いもんじゃありませんね。でも、今年は「むこう見ず」に突っ走ろうと思う。それで、来年の今頃はどうなることやら。

”元日や今年もあるぞ大晦日”

お粗末さまでした。

*蛇足の蛇足。(憶えていれば)というのは、そのころの秘話を「憶えていれば」という意味ではありません。次回の締切に際して、何を書くのか「憶えていれば」ってことなので、念のため(笑)。