k.d. lang 「If I Were You」(Mink/Lang) 95Warner Bros

装飾をそぎ落とし、骨格を研ぎ澄ましたサウンド。深い諦念を湛えながらも、静謐に、確実に、真実を希求するかのような、力強い声。
 
kdラングの最高傑作アルバム『All You Can Eat』はこの曲から、静かに始まります。
 
80年代の能天気な喧騒から一転、世紀末が近づき、奇妙な殺伐さと、甘い倦怠を漂わせていた90年代中期。
 
時代の視座を鋭敏にからめ取り、豊饒な音楽作品として、高い完成度に達しています。
 
それにしても、歌声から静かに発せられる、力強い美しさ。
 
彼女は、同性愛者であることをカミングアウトしており、短髪で一見男性的な風貌です。
 
しかし、この圧倒的に豊かな深みを湛えた声には、極めて官能的な、女性のセクシャリティを強く感じさせます。
 
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