原田知世 『ずっとそばに』(松任谷由実) 83canyon

松任谷由実さんは、アーティストというよりは、有能なマーケッターだと思います。

女性顧客の消費トレンドを抜群の嗅覚でキャッチし、早すぎず、遅すぎず、ジャストなタイミングで、確実に販売力のあるプロダクトをリリースする。
 
商品に微量のリニューアルを施して拡大再生産し、右肩上がりで売上を必達し続ける。
 
心情のこもった音楽作品の製作は、結婚を契機にすっぱりやめちゃったんですね。
 
そんな凄腕のもう一つのキラープロダクトが、80年代初頭のアイドル歌謡曲でした。

松本隆のリーダーシップによる松田聖子プロジェクトは、圧倒的なクオリティで大勝利を収めたわけです。
 
そこで、原田知世さん。
15歳の少女から、永遠の輝きを引き出したのが、『ずっとそばに』です。
 
70年代ソフトロックをベースに、極少量のティンパンアレーテイストをまぶした、松任谷夫妻のコンサバティブなサウンド。

15歳の少女が、折れそうに儚い声で、普遍的かつ抽象的な母性愛を歌います。
 
正にこの瞬間しかあり得ないタイミングで、可憐で小さいけれど、無限のスケールを持つ傑作が生みだされたのです。
 
この奇跡的な音盤は、決して、「プロダクト」ではありません。
 
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