東京事変 『夢のあと』 (椎名林檎) 04EMI/Virgin

さいたまスーパーアリーナで、椎名林檎のライブを見ました。題して「不惑の余裕」。
40歳を迎える林檎嬢のステージは、ストリングス/ブラスセクションを擁し、女性ダンサーを従えたゴージャスともいえる布陣で、ソリッドなバンドサウンドよりも、多様な音楽性を志向した、エンターテイメント性の強い構成でした。

自身が前に出過ぎない絶妙な立ち位置で一座を統率する林檎嬢は、充分に若々しいままで成熟したエロティシズムを可憐に発散し、昭和歌謡の全盛期を思わせるような王道感で君臨します。

この様子を見て、私は思いました。「さすが才能に溢れる人の仕事ぶりは、素晴らしい。若い頃の異形の存在感を損なわないまま、より太く成長しているな。」

その後アンコール。グッと構成を絞り、HZMのリリカルなピアノに合わせて歌う。そしてなぜかMCは蚊の鳴くようなか細い声。このか細さはポーズなのかと一瞬思い、ハッと気づきました。

「これポーズじゃない。」

か細い声で『感無量です』って言ってるの、マジじゃん。そもそも余裕な人が「不惑の余裕」なんていうわけない。デビューアルバムの驚異的なクオリティを超えることができないもどかしさ。自身の才能と血みどろに格闘している芸術家の凄まじさをリアルに垣間見てしまった。多分仕事だなんて思ってない。

今後彼女が、どう変化して行くのか。CDやテレビでは多分わからない。ライブで見届けていくことを決めました。