三上博史 『Kanzen』 (Bowne/Blume/Mikami) 1991Victor

1991年、三上博史の3rdアルバム「Oral」。ほぼ同時期に発売された小泉今日子の「Afropia」と型番が連番だったのことを印象的に覚えています。当時の人気俳優の二人は、映画やテレビドラマでも共演していましたが、この2作は1990年代を代表するのみならず、日本のポップミュージックの歴史にに残る大傑作でした。

『Kanzen』は1曲目。Dougie Bowneのドラムが、気だるく切り込んでくる。緩く入り込むが、獰猛さを隠し持っているリズムは、まるでジョンレノンのリズムギターのよう。当時のニューヨークのスノッブを体現するような、このアルバムのサウンドメイクは、この瀟洒で強靭なドラミングを機軸として紡がれています。

若き三上氏の作詞や、ヴォーカルは、耽美派を気取った俳優らしく、かなり勿体ぶっていますが、Bowneとのコラボレーションは絶妙な絡み合いを見せ、ビジネス上だけのお仕着せ仕事ではないことは、用意に想像できます。

ブルーノート系のジャズ、70年代ソウル、ニューウェーブといった80年代のお洒落意匠の融合は、90年代という時代背景のもと、過剰に洗練され、やや内向化されます。

小泉の「Afropia」が80年代東京意匠にこだわったのと対照的なニューヨーク風味。
俳優のレコードはいつの時代も、自意識過剰でナルシスティックなところが魅力です。