第49回 木を森に隠す話

日光いろは坂の紅葉がきれいです。(たまたまテレビで見ただけですが)
今年も紅葉狩りの季節となりました。

広辞苑によりますと、

「もみじがり【紅葉狩】山野をたずねて鑑賞すること。もみじみ。観楓。(秋の季語)」

ということで、イチゴ狩りやイノシシ狩りと違って、実際に紅葉を狩るわけではないようです。

山野に分け入って自然の中の紅葉を鑑賞するというのは優雅な狩りですね。

唐の詩人・白楽天は「林間煖酒焼紅葉」(林間に酒を煖めて紅葉を焼く)と詩っています。

紅葉の樹木の中、集めた落ち葉のたき火で酒を暖めてしみじみと呑む、という意味ですが、ほんとうに優雅な晩秋の愉しみですね。(現代ならば、紅葉の林の中で火を焚いた時点で森林警備隊に逮捕されそうです。って日本には森林警備隊はいないか。いるのはウルトラ警備隊・・・)

しかし一口に紅葉といっても、樹によって赤や黄色と葉の色が違うし、濃淡も違います。そのうえ、紅葉の中にありながら、平然としつつも、ややふて腐れたように緑のままの樹もいたりします。

そんな緑の樹を発見すると「春から夏にかけて、うまく隠れていたのに残念だね」と声を掛けたくなります。

緑の樹は隠れていたわけではないのでしょうが、「木は森に隠せ」という言葉を連想してしまうのです。

「木を森に隠す」と言えば、推理小説でよく使われる古典的なトリックです(いつもながら強引な展開です)。

【以下、推理小説のネタバレ多数。ご注意ください】
アメリカの元祖推理小説家エドガー・アラン・ポーは、盗まれた手紙は金庫や天井裏には隠されていなくて、目の前のアソコにあると言っています。(ここまで書くと「アソコ」がどこかわかりますよね?・・・いや、ソコじゃ
なくて、アソコです。同様に下着泥棒も盗んだ下着を自分の下着に混ぜておいたりします(ウソです))

イギリスの推理作家チェスタトンの短篇には、一人の死体を隠すために、戦争を起こして大量の死体を用意するという壮大な(バカげた)話があります。

(「食欲の秋」の誘惑に負けてお腹の周りが気になりだしたので、たくさんの友だちを誘ってスイーツ食べ放題に行くのと一緒です。・・・ちょっとだけ違うか・・・)

また、そのチェスタトンやエラリー・クイーンには、心理的に見えない人(その場にいるのに、意識に残らない人)のことを書いた作品があります。

心理的に見えない人とは、バスの車掌さんだったり、新聞配達のおじさんだったり、宴会場にいるワタシだったりするわけです。

誰もが見ているはずなのに、風景と一体になり記憶には残りません。

(宴会場のワタシはタダ酒が飲み放題ですが、ちょっとだけ淋しいです。秋ですから)

クイーンには、死体の服装を変えることができないので、死体のある環境を変えてしまうというお話もあります。

(若いおネエちゃんの家でよろしくやっていたら、突然、怖いお兄さんが帰ってきたので、慌てて裸で窓から逃げ出したものの、その恰好があまりに不自然なので、道行く人々を募って急遽、裸祭りを開催するような状況です。・・・ちょっと違うか)

フランスのモーリス・ルブランといえば、怪盗紳士アルセーヌ・ルパンでお馴染みの作家です。

その昔、ルパンの活躍を描いた少年少女向けのシリーズ(ポプラ社ほか)は、シャーロック・ホームズものや少年探偵団ものと覇を競いあってました。もちろんワタシはルパン派でした。(今は中年探偵団派ですが)

ただ、コドモごころに解せなかったのは、ルパンが作中で何度も結婚をすることでした。

ホームズは独身で、明智小五郎の奥さんは一人なのに、なぜルパンは何度も結婚しちゃうのか?フランスは一夫多妻なのだろうか?(そういえば、以前にも考察したことがありましたね)

でも、オトナになった今ならわかります。ルパンも木は森に隠していたのですね。

つい最近、刊行されたルパンシリーズの最新作「ルパン、最後の恋」(ハヤカワミステリ)でも、やっぱり結婚しちゃいます。(過去の奥さんはたぶん森の中です)

先日見た映画では、革命直後のイランからアメリカ大使館員6名を救出するために「木を森に隠す」作戦が使われていました。以下あらすじ。

6名救出のためにSF映画製作が決定します。
ハリウッドで役者を揃えて大々的にそのSF映画の製作発表をします。
エンターテインメント誌に取り上げられます。
映画製作のロケ地としてイランが選ばれます。
ロケハンにCIAのエージェントが単身イランに乗り込みます。
ロケハンのスタッフは現地で隠れている6名の大使館員です。
二日後、彼ら7名の映画製作スタッフはイランから脱出できるのか・・・。という映画です。

歴史的事実を映画化したものなので、結末はわかっているのですが、静かに手に汗を握る興奮する作品になっています。

国家予算で製作発表された作中の偽SF映画「アルゴ」はもちろん製作されてません。

「アルゴ」の絵コンテを見る限り「Star Wars」のパクリです。でも、実際に見てみたいB級SF映画です。

「Star Wars」といえば、その権利を持っているジョージ・ルーカスが、ルーカスフィルムをウォルト・ディズニーに売ってしまいましたね。

これにより、ディズニーが「Star Wars エピソード7」の製作を開始するとか、しないとか。

「Star Wars」ファンとしては嬉しいような、怖いような(ディズニー化されて従来のイメージが損なわれるのでは)。

でも、実はこれも偽の製作発表で、どこかでCIAのエージェントが暗躍しているのかもしれない。。。
もっと掘り下げると、既存のメディアには限界があるのかもしれません(ちょっと真面目?)。

なぜなら「スーパーマン」であるクラーク・ケントも、デイリー・プラネット社に限界を感じて退社し、フリーのジャーナリストになっちゃったからです。

その「スーパーマン」はクリプトン星から・・・・・・。

あれ?
いつものことながら、迷走してきました。
「木は森に隠せ」を探しているうちに、「木を見て森を見ず」という罠にはまってしまいました。

ちょっとだけ話を戻しますと、映画「アルゴ」は「木は森に隠せ」を一歩進めて、「木を隠す森がないなら、森も作っちゃえ」という話でした。

つまり、会社でやっちゃった小さな使い込みがばれないように、会社ごとジャパンカップに賭けちゃうようなものです。そして、その馬券が当たって会社の資産が10倍!功労者として大出世!!(あれ、ちょっと違うか)。

もっと適切な例をあげると・・・、愛人が一人だけだと妻にばれそうなので、大量の愛人を募って(?)愛人バンクを立ち上げたところ大繁盛。

全国に支店を展開して、メガバンクの仲間入りをするも、リーマンショックの影響で愛人の価値が一気に下落。

不良愛人が大量に発生して、公的資金の支援を受けて国有化。
結果責任を問われて民事訴訟に発展。愛人は一人でよかったなぁ、と反省(あれ、これも違うか)。

歴史的な例をあげると・・・、下克上を這い上がり戦国武将として名を上げ、一国一城の主となるも頭頂部の薄毛が気になりだした。

側頭部や後頭部の髪はフサフサしてるのになぜか前頭部から頭頂部の毛が伸びない。いっそここを剃りあげて、残りの毛で髷を結おう。

でも、自分だけやるのはつまらない。
部下全員、特に前髪のフサフサしたやつは入念に剃らせよう。いや、毛抜きで一本ずつ抜いて、二度と生えないようにしてやる!!

月代(さかやき)をきれいに剃りあげるのは武士の務めと宣言し、自分のコンプレックスを隠すために部下を巻き添えにする(現代社会でもありがちですね・・・)。

こうやっていくつかの適切な例(?)をあげてみましたが「森を作って木を隠す」というのは大掛かりで、一般人には難しいものです。

結局、頭頂部の衰退を隠すために、側頭部と後頭部を大きく刈り上げて全体を短くする、というのが最近のワタシのヘアスタイルなのです(あれ?個人的な問題?)。

というわけで今回は「ハゲは短髪に隠せ」というのが結論なのでした(なんのこっちゃ)

201211_f

中年探偵団バックナンバー