第122回 日常と非日常のスキマ

大型連休が終わりました。
「制限」のない大型連休は二年ぶりです。
「日常が戻ってきた」という声も聞こえてきます。
ということは、大型連休前までは「非日常」だったということですね
しかし、本来、大型連休こそが「非日常」なのです!(って、私は何を主張しているのでしょうか?)

例えば、旅行に出かけたり、遊園地やテーマパークではしゃいだり、朝からお酒を呑んだり。。
これが「非日常」です。
(朝からお酒を呑むことを「日常」としている人もいないわけではないですが・・・)

でも、この二年間はコロナ禍で長距離の移動や人が密集するイベントなどが制限されることが「日常」化してしまったため、制限のない大型連休は「非日常が戻ってきた」と表現すべきなのです。(って、やっぱり私は何を主張しているのでしょうか?)

とは言え、「制限」は完全になくなったわけではなく、暗黙のルール(?)として、マスクの着用という「制限」が「日常の常識」となり、人混みでマスクを着用しないことは「非常識」となってしまいました。
(ちなみに人混みでマスクを着用していても、衣類を着用していない人は「問題外」です)

とにかく、コロナ禍のせいで「日常」と「非日常」の判別が難しくなってしまいました。
そんな状況を踏まえて、最近の私的な「非日常」体験をご報告しようと考えたのですが、
なにしろ久しぶりの「非日常」が盛り沢山のため、整理が付かない状況です。

とりあえずは、大型連休前の出来事から。

【田舎のドライブインの日常】
実家のある田舎町は緑豊かとはいえませんが、それなりに「自然」があります。
3月下旬のとある日曜日に実家近くのドライブイン(死語?)にお昼ご飯を食べに出かけました。
※ドライブインとは、ロードサイドにある駐車場の広い食堂のこと(だと思う)

店内の奥まった席で「牡蠣フライ&チキンカツ定食」を注文して、窓の外の雑木林と雑草を見るともなく見ていると、木の根元あたりに小さなオレンジの揺らぎを見つけました。
よく見ると、火のようです。

雪が融けて、春先の強い風で乾燥した昨年の枯れ草が一面に広がっているところに、小さな火が揺れているのです。
でも、数十メートル離れているので、はっきり火と断定もできず・・・。
もしかすると。死角に人がいて、野焼きをしているかもしれない。
不思議な感覚で、ぼーっと見ていると小さな火のようなものは見えなくなった。

そこにお店のおネエさんが定食を持ってきたので、
窓の外を指さして「向こうの草が燃えてたみたいだけど」と自信なさげに言ってみた。
おネエさんはチラりと外を見て、薄く笑いながら
「焚き火をしてるんだと思うけど、確認してみますね」と去って行った。

牡蠣フライとチキンカツにソースをかけながら、窓の外を見ると、今度はさっきより大きな火が見える。
本当に焚き火なんだろうか?
最近は焚き火ブームらしいので、日常的にやっているのかもしれない。
牡蠣フライを一つ、口に入れた。
揚げたてなので、熱い!
フー、フーしないで食べたから、火傷したかも。
グラスの水をぐいっと飲む。
窓の外の火はこちら側に向かって広がってきたような気がする。

チキンカツにかぶりつくと、これもアツアツだ。熱い!
グラスの水を飲み干す。
枯れ草の火は確実に広がっていて、焚き火をしている人の姿は見えない。

炊きたての白米もアツアツだ。味噌汁もアツい!
確実に外の火も広がっている、強い風にあおられて、こちら側だけでなく、林の奥の方にも広がっているように見える。
周りの木や草も熱そうだ。人は見えない。

火気フライをもう一つ食べる。熱い。
「おネエさん!水をください」と厨房のほうに声をかける。
外には火だけでなく、白い煙も広がってきた。

「水をくださーい!」
誰もいないのかな・・・?
そのとき、遠くからサイレンの音が聞こえてきた。
その音がはっきりと聞こえてきたとき、ドライブインの駐車場に消防車が入ってくるのが見えた。
1台、2台、3台。
消防車が駐車場に停まると同時に消防士たちが飛び出してきた。
そしてその消防士に駆け寄っていったのは、ドライブインのおネエさんだ。
「水!!」と、僕とおネエさんは同時に叫んだ。

【ライブと展覧会の前衛的日常】
このドライブイン事件の2週間ほど前にキョンキョンのライブがあった。
小泉今日子デビュー40周年記念ライブだ。
最近では、歌手としてよりも女優や会社経営に忙しいキョンキョンのライブは31年ぶりとのことで、このライブを逃すと今世紀中にはもう見られないかもしれない。

そんな不安を覚えながら、モツ焼き屋さんで牛タン串を食べていた。
「美味いな、タン串」と独りごちたとき、頭の中にバンクシーが現れた。
と言っても、バンクシーは謎の芸術家(?)なので、現れるわけはない。
4月下旬に、開催中の「バンクシー展」に行くことにした。

桜が降る夜に陽気に浮かれながら、電車で「バンクシー展」に向かうと、そこは「フェルメール展」の会場だった。
どこでどう間違ったのか、自分の裸の心に君はロックを聴かないのか確認してみた時、マリーゴールドの双葉を見つけた。
この流れはあいみょんだ。
5月上旬、あいみょんのライブに行った。

あいみょんの本名は公表されておらず、謎のシンガーソングライター(?)として活躍している。
キョンキョンが「小泉今日子」であることから、あいみょんは「AIみょう子」というAIチューバーであるという説があるが、定かではない。

この支離滅裂な展開は、当初お伝えしようとしていた「非日常」とは次元が違うことは間違いないけれど、牡蠣と牛タンとキョンキョンの唄う「潮騒のメモリー」に導かれて、東北仙台に向かったのは大型連休明けのことでした。

【お詫び】
紙面の都合で、今回メインとなる予定だった「仙台・盛岡の旅」のお話は次回掲載とさせていただきたく存じます。

※この文章は大型連休明けの平日に休暇をいただいて書いてます。締切も守れてないです。
「日常と非日常のスキマ」というより「非常識と問題外のポイント」と言えましょう(なんのこっちゃ)