第125回 現代の読書

10月27日から「読書週間」が始まりました(11月9日まで)。
今年は同時に「読書推進月間」も始まりました(11月23日まで)。
ちなみに11月1日は「本の日」でした。
「読書の秋」ではありますが、ここまで読書を推すのはなぜでしょう?

ずいぶん以前から言われている日本人の活字離れと出版不況、その煽りを受けて消えていく街の本屋さん。
それと並行して普及していった(ような気がする)スマホ。
そして、気づくとスマホがあらゆるメディアを凌駕してしまった(ような気がする)。

今、電車内では本を開いている人は稀で、新聞を読んでいる人など皆無だ。
みんな無表情にスマホを睨んでいるか、耳に挿入された飴玉のような饂飩のようなイヤホンで何かを聞いている。

にやけた若者はスマホで漫画を見ている(に違いない)。
画面をもの凄いスピードでなぞっている人はゲームをしている(のだろう。形相が必死だ)。

人差し指を素早く上下左右している人は、SNSで言葉の切れ端をやり取りしている(のかな?喜怒哀楽がよぎる瞬間がある)。

電車内だけではない。
道行く人も視線の8割をスマホに落としているし、自転車に乗っている人もスマホを握っている。
街でも家庭でも職場でもスマホだ。
みんなスマホから「指令」を受けて動いているのだ。
「スマホ脳」になっているのだ(そんな題名の本があったような気がする。読んでないから、内容は知らんけど)。

「スマホ脳」が増えると、遙か4光年彼方にある三つの太陽を持つ星から侵略されてしまうであろう(たぶん「三体」という小説はそんな話じゃないかな。読んでないから、内容は知らんけど)。

宇宙人からの侵略を防ぐためには、スマホから距離を置いて本を読まなければいけない。
そんなワケで、地球防衛政府・日本支部の「影の総理」は、今年の「読書の秋」は、「読書週間」だけでなく「読書推進月間」も並行実施するという骨太の方針を示したのだった(信じるか信じないかはアナタ次第です)。

さあ、みんなで書店に行って本を買おう。本を読もう。
そして、宇宙怪人から地球を守るのだ。
(怪人二十面相から小銭を守るのだ。明智先生、バンザーイ。中年探偵団、バンザーイ。)

という風に簡単にコトは運ばない。
すでに日本は「智子(ソフォン?)」の監視下にあり、本を買って読んでいると昇火士に昇火器で焼かれてしまうのだ(って、SF小説「華氏451」か。。。読んでないから、内容は知らんけど)。

本を焼かれずに、本を読むためには、電子書籍やオーディオブックを活用するしかない。

なるほど・・・電車の中で「無表情にスマホを睨んでいるか、耳に挿入された飴玉のような饂飩のようなイヤホンで何かを聞いて」いた人たちは、スマホで電子書籍を読んだり、オーディオブックを聴いていた(耳で読んでる?)のだ。
すでに宇宙怪人の侵略に対抗していたのだ。
(明智先生、バンザーイ。中年探偵団、バンザーイ。)

という風に簡単にコトは運ばない(って、前にも書いたような気がする)。
紙媒体としての本を買わなければ、出版業界は先細りとなり、書店は消えていくのだ。

もはや解決策はただひとつ。

本は積極的に買う。でも、積極的に読まないのだ。
すなわち、積ん読(つんどく)だ。

広辞苑によると「積ん読」とは、
「つんでおく」と読書のドクをかけた洒落(シャレ)のことで、書物を読まずに積んでおくこと、なのだ。

しかし、広辞苑がダジャレというほど(ダジャレとは言ってないか)、「積ん読」を実現するのは軽い話ではない。
いかに積ん読された本の内容を読み取るのか。
それは、読まない本をいかにして読むのかという禅の公案のひとつでもある(ウソです)。

では、世間で「積ん読」マスターと呼ばれている(陰口をたたかれている?)私が、以下にその奥義を示そう。

●「積ん読」読書の三原則
1.大きな本を土台にする
文庫本を数冊積んだ上に大きな単行本や図鑑などを載せると不安定で、ちょっとした揺れで崩れます。
(「随筆・本が崩れる」みたいな悲喜劇に見舞われます)
積ん読はジェンガではありません。
なので、大きな本を下にして、じょじょに小さな本を上に積んでいきます。
一般的に「積ん読」には安定と世論の一定の支持が求められます。

2.本のカバーは外す
書店がサービスで掛けてくれるカバーは本の情報を隠してしまうので、積ん読の時は外します。
本の表紙の一部でも見えると、本の中身もなんとなくわかってきます。
永く積んでおくと、自然と本から内容が染み出てきます。
その微かに見える本のエクトプラズムを両手でやさしく自分の頭のほうへ引き寄せて被ります。(浅草寺の常香炉か?)
滲み出た本の本質が頭にしみ込みます(睡眠学習の原理です。ウソ)。

3.積ん読は上から読む
もし万が一、「積ん読」本を実存として読もうとした場合は注意が必要です。
「積ん読」本は下に行くほど年代は古くなっていきます。
古くなってますが、その地層によっては強固だったり、脆かったりします。
最深部のプレートは大陸プレートに潜り込んでいたりします。
大地震を誘発しないためには、発掘の際に専門家の知恵や技術が必要となります。
なので、「積ん読」本は上から読みましょう。

どうしても古い地層の本が読みたいときは、素人考えで発掘せずに書店で購入しましょう。
書店が潤いますし、積ん読をさらに高くできます(って、買った本もやっぱり読まんのかい!)。

というわけで、積ん読こそが持続可能な読書安全保障の基盤となるのだ(という唐突な結論。なんのこっちゃ)。

※今年最後のコラムなので、初心に戻って真面目なことを書こうとしたのですが、遙か4光年彼方の謎の電波をキャッチしてから収拾がつかなくなってしまいました。。。とほほ。

2023年につづく(のかな?)