第136回 迷走と妄想のジレンマ

日本中、暑い。
涼しいはずの北海道でもやっぱり暑い。

——–昨年の夏のこと
札幌の真夏日は27日で、猛暑日は3日もあった。
その時、これからはクーラーのない生活には耐えられないかもしれないと思った。
でも、北海道でクーラーがある家は、業者に騙されたか、良からぬコトをした人の家だと思っていた。(個人の感想です)
もちろん私の家にはクーラーはない。
でも、もうだめだと思った。——–

今年の5月の、とある日に家電量販店に行ってみた。
クーラー売り場を冷やかしに。
なんてウマいことを言っている場合ではなかった。
クーラー売り場は大賑わいだった。
お客と店員のやりとりを聞くともなく聴いていたら、
「もう7月中旬まで工事予定が埋まってるんですよ」という店員の恐ろしい言葉が聞こえてきた。
「なにー(怒)」とお客。
「申し訳ありません。クーラーの在庫の確保も大変なんです・・・」
「なんだとー、きさまオレを熱中症で殺す気か!」というカスハラなコメント。

どうする?
何の根拠もなく「7月の北海道は暑くない」と信じて、7月下旬の工事にすべてを賭けるか?それとも・・・。
いろいろ迷想した結果、なぜか6月の下旬に自宅の居間にクーラーが設置されていた・・・。
良からぬコトをしてしまったかもしれない・・・。

そして7月、8月と過ぎていった。
今年の北海道は昨年ほど暑くない(ある意味、ラッキー)。
しかも貧弱な住居に対して、クーラーの性能が高かった(ある意味、アンラッキー)。
ちょっと暑いな、と冷房スイッチを押そうものなら、あっという間に、居間は冷蔵庫状態になる。
ああ、クーラーはいらなかったかも(何かの罰かな)。
クーラーのせいで、居間とフトコロが寒くなってしまったのだ。。。

居間はクーラーを止めれば暖かくなるが、フトコロ具合はなんともしがたい。
問題解決のため、宝くじを買ってみることにした。
宝くじは、貧者の税金あるいは愚者の税金と呼ばれている(どっちも失礼な喩えだ)らしいが、わずかな税(?)の支払いでフトコロが暖まるのなら躊躇なぞしない。
手っ取り早く結果を出すのなら、スクラッチくじ(くじの表面を削って当たりを目指すくじ)だけど、賞金が少なめだ。
ということで、ナンバーズ4とロト6で高額賞金を狙うことにする。

ナンバーズ4は、好きな4桁の数字を決めるだけで、百万円程度の賞金がもらえる(もちろん、私の4つの数字が、胴元(?)の4つの数字と一致していればのお話だが)。
仕組み上、1万分の1の確率で大当たりがゲットできる。
ロト6は、1から43の数字のうち、好きな数字を6個選ぶだけで、理論上、1等6億円の賞金がもらえる。
確率的には6百万分の1くらいだ。
どちらも意外といけそうだ。

というわけで、7月からクーラー代金捻出のため、ナンバーズ4は毎日、ロト6は週2回購入している。
なかなか結果が出ないので、支出は嵩んできたが、当たれば一気に回収できるので、気にしない。
根気よく続ける予定だ。

さらに8月に入ってからは、毎週土日の中央競馬に参戦することにした。
こちらは100円が10万円以上になるような三連単(1着から3着までの着順を当てる)を中心に手堅く(!)購入している。
多少の支出はあるけれど、当たれば一気に回収できる(はずなのだ)。
気にしない、気にしない。

そんな8月29日、宝くじ窓口のあるスーパーに出かけた。
実は、宝くじと馬券の支出が嵩んできて、外食もままならないので、自炊の道を模索することにしたのだ。
(当たれば一気に回収できるので、自炊は一時的なものなのだが)

まず、米を買おうと売り場に行くと、なんと「次回入荷は9月15日頃」という貼り紙が・・・。
米がないということを噂には聞いていたが、実際に空いた棚を目にすると、ちょっと動揺する
「米騒動」というワードが頭を過る。メイソウとは米を求めて走ることかと納得もする(シンニョウが足りない)。

「もう俺は米を食べることはできないのか、ちょっとゴニョゴニョして6月下旬にクーラーを設置したばかりに。。。罰があたったのか・・・」
しかも、気づかぬうちに部屋とフトコロが寒くなっていく。
米はあきらめて肉売り場に行ってみると、「焼き肉の日」の貼り紙があった。
8月29日は「焼き肉の日」なんだ。初めて知った。
寿し、ラーメン、カレーライスと並んで、焼き肉は若い人たちに人気のメニューだ。(ホントか?)
でも、中年(初老?)になると焼き肉はなかなか手強い。
消化器の機能低下に加えて、小さな網を複数人で囲む所作も気詰まりになってくる。

個人的に、焼き肉についてこう考えている。
焼き肉のお誘いは、断ると角が立つ。
ひとの焼き肉に、箸を出すと怒られる。
一人前の量が意外に少なくて窮屈だ。
とかくに焼き肉は食べにくい。(って、夏目漱石か)

とはいえ、先日、同年代の男性と焼き肉を食べた。
いつもは酒がメインで、焼き肉はめったに選択されることがないのに、その日は特別だった。
彼は二日後の北海道マラソンに参加するのだ。

マラソンは「走る」練習だけでなく、いろいろな面で調整が必要らしいのだ。
シューズの選択と調整、着衣の選択、水分コントロール、栄養コントロール、ペインコントロール、
家庭内調整、SNS対策、資金調達、過払い金請求などなど、ホントかウソか判然としないが、いろいろ大変そうだ。

その日の焼き肉は栄養コントロールの一環らしい。
フルマラソンの前々日には、良質なタンパク質と程良い脂質を取り入れることが必要とのこと。

彼は、セセリ(鶏の首回りの肉)と豚トロ(豚の頬肉)をチョイスした。
「ほう」私は感心した。
鶏のタンパク質と豚の脂質が完璧に思えたからだ。

私も負けじと、上ホルモン(塩)と牛レバーを注文した。
彼は「まあまあの選択だね」と言いながら、ふふんと笑った。

「あれ?」選択を誤ったのか?
うーん。。。じゃあ、ここは「タンモトと上カルビにシシトウを添えて、追加注文して、ストップ!」と私。
彼は困惑した目で私を見て「じゃあ、私はサフォークのホゲットを追加して、ストップだ」
って、いつのまにかゴチバトルになっていた。

サフォークとは、サフォーク種(「ひつじのショーン」みたいに顔が黒い)羊のことで、ホゲットとは生後1~2年の羊肉のことだ。
生後1年未満がラムで、生後2年以上のものがマトンというのは、ジンギスカン好きなら周知の事実だ。
生後1~2年のホゲットは希少なのか、最近になって知られるようになったようだ。
ラムとマトンとホゲットのそれぞれの特徴はといえば、ラムは柔らかい肉質で、マトンは・・・

って、このコラムはどこに向かっているのか?

夏の終わりをゴールにする予定だったが、私のフトコロのように先が見えない。
北海道は落ち着いてきたとはいえ、相変わらず全国的に暑い。
変な気候は収まらない。
突然どこかでゲリラ雷雨が発生し、台風が迷走している。
異常気象に混乱し、コラムも世間も迷走している。
って、世間を巻き込むのは反則だけど、なんともヒドい迷走ぶりなのでした(他人事?)。

穏やかで豊作の秋が待ち遠しいですね(宝くじと馬券の豊作も待ち遠しい・・・なんのこっちゃ)。