昨今のクイズ、そして謎ときブームを陰で支えているクイズ作家の矢野了平さんが関わった本が出た。矢野さんは、NHKの「プロフェッショナル 仕事の流儀」などでも取り上げられ、テレビやラジオへの出演も多いのでご存じの方もいるかもしれない。その矢野さんが、謎制作者の常春、無策師さんと共に著した本が、『美しいナゾトキ』だ。

原型はインターネット上の謎制作コンテストである第一回の謎王。その上位にランクインした作品を中心に収録された本である。
実は、この本は、他の謎解き本とはまったく違うコンセプトで作成されている。題名通り、優れた謎解き作品の「美しさ」を、「鑑賞」するための本なのである。
それゆえ、それぞれの作品について、矢野さんたちによる「鑑賞文」がほどよいボリュームで掲載されている。これらはいわば書評やアート批評同様、見事な「謎解き作品」批評となっているので、実に読み応えがあるのだ。

実際にどんな謎解きが掲載されているかについては、一部がこのamazonのリンク(https://www.amazon.co.jp/dp/4796878572/)に掲載されているので、なんとなく雰囲気はわかると思う。もちろんこれらは序の口で、より高度で、発想豊かで、思わずため息が出るほど「美しい」作品が多数収録されている。美しさと難しさは違うので、解くのは難しくないが美しい謎解き作品もあれば、高い難易度を持ちつつ、美しい謎解き作品もある。いずれにせよ、難易度ではなく美しさにフォーカスされているのだ。

では謎解き作品における美しさとは何なのだろう。本書の謎解きに挑み、「鑑賞文」を読めば自ずと見えてくるのだが、一言で言えば、発見の驚きと引き算の美学だろうか。まずは謎製作者自身が、「言葉」や「もの」のなかから、驚くべき法則や偶然の奇跡を見出し、それを、最小限の情報を持って伝える。シンプルかつエレガントな構造を持っているのだ。

ここで私が息を呑むほど感服した美しい作品を紹介したいと思ったのだが、結局諦めた。どう紹介しようとしても、その紹介自体がヒントになってしまい、誰かが謎解きを解く楽しみを削いでしまうからである。しかし、それこそが、その謎解きが完璧にエレガントで美しいことの証左だろう。とにかく手に取って、その美しさを堪能し、自分のお気に入りの謎解き作品を見つけてみてほしい。

『美しいナゾトキ』(常春、無策師、矢野了平/小学館集英社プロダクション)